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話し手は1人で話しているのではない

 先日、無観客イベントを開催した。書籍「チーム・ジャーニー」の発刊イベントだ。

 長らくコミュニティを運営しているが「誰1人集まらない会合」というスタイルは初めてのことだった。いわずもがな、新型コロナウィルスの状況を踏まえてのことだ。参加者の皆さんは、オンラインミーティングツールのZoomを使って参加する。80名近く参加されていたようだ。

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 会場には関係者3名しかいない。こういう状況でも会議室を貸してくださったナビタイムジャパンさんに感謝しかない。

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 参加者はいないが、イベントのていで前に立って話す。その模様を、Zoomで配信した。あとで触れるが、やはりやりにくさがある。

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 イベントは書籍レビューアとの対談も用意していたので、これもZoom配信で。参加者の皆さんからは、Slidoと呼ばれる掲示板サービスを使って、講演を聞きながら質問を打ち込んでおく。講演後に、このように対談者と内容を眺めながら、答えていく。

 Zoomの配信やSlidoをつかったやりとりは、これまでの通常イベント(リアル参加あり)でも行ってきたので、実は段取りに大きな違いはない。

 それでも、実際に無観客イベントをやってみての気付きがいくつかあったのでまとめる。

メイン、サブの捉え方を逆転させること

 これまではメインがリアル参加で、Zoom参加はサブ的な位置づけでやってきていた。Zoom側で音が取れない場合など状況によってよくあることなのだが、リアル進行の方を優先してきたところがある。今回は、もちろんZoom参加しかないので、オンライン進行を優先する必要がある。

 だから、誰かがミュートしていないとか(「全員ミュートかつ自分でミュート解除できない」漏れ)、マイクの音がオンライン越しで拾いにくく、地声のほうが通る問題とか、きっちり対応していかなければ場そのものが成り立たない。

講演は1人では成り立たない、聞き手と成り立たせている

 これは改めて気付かされたこと。人前で話すことを幾百とやってきているので、たとえば無観客でもいつもと変わらず話せるだろうとタカをくくっていた。ところが、実際に話してみるとなぜだかやりにくい。調子が取りづらい感じだ。時間がいつもよりかかっている。

 これは、聞き手からのフィードバックが一切遮断されているためだ。話し手は、「どう話すか」「どのくらいの速度で話すか」などを本人が自覚している以上に聞き手の反応で無意識に調整しているのだ。

 もちろん、通常聞き手は黙って聞いている。だが、うなずき方、首のかしげ方、笑い声、漏れる声、カメラで取る行為(「あ、ここは重要と捉えられたのだな」)、体の動き方、揺らし方などから多くのフィードバックを得ているのだ。そういった「感じ」から、聞き手の「盛り上がり」「前のめり」「興奮」「疲労感」「飽き」などを概ね読み取っている。そして、話し手はその後の刹那の判断を下している。

 1人でうまいこと話しているつもりで、実は聞き手とともに、成り立たせているのが講演という空間なのだ。

リアルイベントと、配信イベントは別のもの

 これは最初から配信を目的したスタイルとは別なのだと思う。私もスクーで話したり、これまでもZoomのみでの本読みイベントを配信を行ってきたことがある。特に、今回のようなやりずらさを強く感じることはなかった。

 対談相手という「聞き手」が居たというのもあるが、最初から「これは一方通行である」「フィードバックがない」ということを無意識に捉えられているからだろうと思う。

 だから、講演スタイル(認知としては「これは講演だ」と捉えている)でやると、逆に少ない観客(関係者)のちょっとした動きが気になってしまう。大勢の中でのちょっとした動きなど気にならないが、そうではない場合では注意が削がれてしまう。

 これからもしばらくはオンライン配信のみイベントは増えると思うが、いつもの延長よりは配信イベントとして捉え直して準備、開催した方が良いだろう。

 異例の発刊イベントとなったが、開催できたことに改めて感謝。対談者の2人、関係者の方々に、お礼申し上げます。

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