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正しいものを正しくつくる

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書籍「正しいものを正しくつくる」に関するマガジン。 https://beyondagile.info/ https://www.amazon.co.jp/gp/product/4…
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2024年6月の記事一覧

「アジャイルなプロダクトづくり」

 プロダクトづくりには2つの状況がある。何もない、ゼロから臨む場合と、すでにあるプロダクトをより良くしようとする場合とで。いずれの場合にも、「何が正しいのか?」に答えるための仮説検証と、作りながら確かめていくアジャイルの二刀流で臨む必要がある。  ただ、指す言葉は同じでも、「ゼロから」と「すでに」で適用する方法は変わる。置くべき焦点が異なる。そうした文脈の違いを捉えながら、どのようにしてアジャイルにプロダクトをつくるのか。ここを語るための本を書いた。文字通り「アジャイルなプ

チームや組織の意図を表す「一枚デッキ」

 チームや組織に必要なものは沢山ある。  目的や目標、つまり目指しているものが明確になっていなければ、先の見えない試行錯誤の時間が長く続くだろう。仕事を果たすために、専門性や経験が問われる。集団で何かを実現しようというのだから、うまく機能するための動き方も要る。  だから、こうした観点を補強しようとチームや組織としての改善の営みは果てしなく続いていく。改善のためのアイデアやナレッジは渇望され、重宝され続ける。  近頃、特に必要性を感じることが一つある。それは、「意図を表

なぜ、アジャイルには「手順書」がないのか

 やり方とかプロセスとか、作法とか、私達の仕事を助けるものは沢山ある。そういったものを総称して「型」と呼んでおく。  「型」を使えば、うまく仕事ができるようになるかもしれない。「型」が分かるようになるために、ガイドを作ったり、レクチャーを受けたり、練習してみる。  ここで2つの問題がある。「型」を使いこなせない、そして「型」を使っても成果があがらない。この2つは混在しやすい。「型」に意味がないかどうかは、使いこなしてからの判断だ。  さて、苦労して「型」に合わせることが

スプリントの回転の中で実現しているのは、「価値」か、それとも「進捗」か

 アジャイルで各種定義されていること、例えばスクラムイベントやバックログといった概念で、何を実現しているのか、そこにどんな意味があるのかを考えてみよう。  さっそくイメージにしてみる。 リファインメントで行っていること  プロダクトバックログとは一体何か。そこでリスティングされるものは、「これが実現できたら価値につながる」という価値の候補である。あるいは、「これは価値がありうるかもしれない」という価値の仮説である。存在してしかるべきという機能は前者にあたり、本当に効果が

「アジャイルは楽しい」だけで押し切らずにアジャイルとは何かを言葉にする

 結局のところアジャイルで何が嬉しいのか。ということを「楽しい」という感情だけで押し切らないとしたらどう言えるのか。ウォーターフォールの何がダメで、アジャイルのどこが対比的に機能するのか。  ここを丁寧に語ろうと思った動機については前回既に書いている。  最初の問いに答えようとするのは、意外と難しい。それはまさにアジャイルが経験主義に基づくものだからと言えるだろう。「アジャイルの何が良いのか?」を語るためには自分の身の上におきたことを説明することになる。経験はどうしたって