マガジンのカバー画像

正しいものを正しくつくる

165
書籍「正しいものを正しくつくる」に関するマガジン。 https://beyondagile.info/ https://www.amazon.co.jp/gp/product/4…
運営しているクリエイター

2023年9月の記事一覧

832回のイテレーションを、ありがとう

 2023年の3月から4月は、"地下20階" から "地上" へと戻るタイミングだった。"地下20階"とは、「組織」という概念の奥深さを表すもの。"地上への帰還" とは、組織変革の真っ只中からの離脱を意味する。それまでは、「組織」なるものに向き合うことに、ただただ夢中の日々だった。  その日々に区切りをつけた、ちょうどそのとき、XPJUGが主催する「XP祭り」というイベントの基調講演の依頼を受けた。XPJUGとは、実に懐かしく、思い入れの深い、アジャイルコミュニティだった。

「小さく経験する」とはどういうことか

 先日、親知らずを抜いた。いまだ頬の上から腫れているのが分かるし、抜いた穴もまだ生身感がある。しばらくはこの違和感とつきあうことになりそうだ。この「歯を抜く」という行為からも分かることは様々ある。  親知らずを抜くのは40数年生きてきて、はじめてのことであった。自分の中に直接的な経験がない。ゆえに、その行為がどれほどの影響をもたらすのか、想像するよりほかない。 (1) これまでの自分の類似経験から探して想像する (2) ネットから情報を得て想像する (3) 経験者から情報

「型」と「作戦」と「運用」

 チームや組織で、ある一定期間以上持続に、一つのミッションに向かって動いていく仕事。例えば、プロジェクトとかプロダクト作り、事業運営など。こうした高度なレベルの協働が求められる仕事は、あらゆる観点で難易度が高い。  まずもって、漫然と取り組んでも上手くいかない。ゆえに、「どのように進めるか?」という算段を立て、なおかつ共通理解にすることが前提になる。ところが、この算段・企て・目論見といった観点が弱い、場合によっては無いこともままある。この傾向は組織観点でも現場観点でも、この

そのプロダクト作りの「進め方の仮説」は立っているか?

 「スケジュール」というものを再考してみよう。スケジュールは必要だろうか、それとも不要だろうか。 スケジュール = 役に立たないもの  あまりスケジュールに良い印象を持っている人は少ないかもしれない。過去の体験から「厳しい締め切り」「終わりの見えないタスク」などを思い起こすからだろうか。あるいは、スケジュールによって仕事の進め方が固定化されてしまい、かえってやりにくさを感じるからだろうか。  ひとたびスケジュールを細かく記述したところで、やっていることが変わることがあるか

成功を果たした、残酷なデットエンドを回避するためのプロダクトマネジメント

 苦労してプロダクトの仮説検証を推し進め、ようやくMVPのリリースへとこぎつける。実のところ勝負はその先にあって、MVPに至ってなお、最初の仮説の原型がなくなるくらい検証とアップデートを繰り返す。プロダクト作りにおいてよくある風景。  運良く事業としての最初の嵐を乗り切る。いや、乗り切ったと感じるのは実際にはだいぶ後になってからだ。無我夢中になって日々を重ねる果てに、気がつけば検証をとっくに終えていて、磨き込みを行っている自分たちチーム自身の姿に気づく。意識的な仕組み化が、