謝るというコミュニケーション #15分note
お皿の上には半分に切ったメンチカツが、器用に重ねられている。
お店のお姉さんがお盆をテーブルに置こうとした瞬間、上に乗せられていたほうのメンチカツの片割れがポロッとお皿の上に落ちた。
ちょうど落ちたところには、つけて食べるためのソースの海が。
「ああっ!ごめんなさい!」
「いえ、全然かまわないですよ。どうせつけて食べるんだし」
テーブルの上でもなく、ましてや床でもない。
ソースがつくのが数秒早かっただけ。
お姉さんが謝ったのは、きれいに盛りつけたままテーブルに置けなかったからなのか、つけるソースの量はお客さんが自分で決めたかったろうに、それを自分が強制的に決めてしまったからなのか。それとも、身の回りで何かが起こると反射的に謝ってしまう性格なのか。
お姉さん、謝ってすっきりしただろうか。
まさか、いつまでもくよくよする性格じゃないだろうな。
メンチカツのたった2センチの動きが、いろんなことを考えさせる。
食事を終えてレジのところにやってくると、例のお姉さんは下げられた食器を洗っていた。
「ありがとうございましたー!」
うん、元気。
きっとさっきなことは気にしてないな。
安心して、私はお店を後にした。
謝る、というのは、自分のした失態で相手に迷惑をかけたことを許してもらうための行為。マイナスをゼロにすること。
謝るのは失敗した方の行為だけど、実はコミュニケーションだと思う。
謝ってもらった方も、相手の気持ちを考えて声をかける。そうすることで、マイナスがゼロじゃなくて、ちょっとプラスになる。
ハプニングも、どうせならいい記憶になるように心がけたいよね。
しかし、あのメンチカツは、うまく揚げられていて衣がサクサク、おいしかった。