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おごる人とおごられる人なら、どちらを選ぶ?
「あっ、もうお代はいただいてますんで」
ああやっぱりね。
そんな気がしたよ。
今日のお昼のできごと。
いきつけのお魚のおいしいお店に入ってカウンター席に座ったら、たまたま隣で先に食べていたのはグループ会社の役員さん。
ひとしきり会話をして、食事を終えた彼女は先に席を立った。
会計の際になにやら店員さんと話をしているのが聞こえてきた。
ははん、これはひょっとして。
塩サバ定食をすっかりたいらげて、お会計へ。
なんとなくわかってはいたけど、財布を出す仕草はしないとね。
そこで店員さんが言ったのが冒頭のセリフだった。
私とほぼ同い年の彼女は、オーナー一族の長女。身なりは特に派手だったりするわけではないが、男まさりのきっぷのいい女性。
以前にも同じようなことをしてもらったことがあるのでピンときたんだけれど、今時こっそり会計を済ませてくれるっていうおごり方にはなかなか出会わない。
役員とはいえ、同い年の、それも女性におごってもらう、っていうのは、プライドが許さない、なんてことはみじんも考えたことがなく、お慈悲には遠慮なくすがりつくのが信条なのでありがたくごちそうになった。
人におごるってことをほとんとしてこない人生だったので、こういう人たちはどういう経緯でそういう生き方になったんだろうって、たまに不思議に思う。
親がそういうことをしているのを見て育ったのか。あるいは、貧しい人には施しをというのが親の教育なのか。
というのも、私は親が他人に大盤振る舞いしているところをみたこともないし、人には優しくしなさいなんて教育を受けたこともない。で、立派に、年齢も性別も関係なく清く正しくみんなでワリカンという性格に育ったもんだから。
おごってもらっておいてなんだけど、むりやり誘われて付き合わされた、ってわけじゃないのでそんなに気を遣ってくれなくてもいいんだけどね、なんて思ったりもする。
なんだろうね、素直に喜べる性格だといいんだけどね。
最近自分で作ったパンを他の人にくばって食べてもらう時に、平静を装いながらも反応が気になっている自分がいる。半分はお口に合うかどうかが気になっていて、半分は承認欲求だったりして。件の役員さんとはそういうところが違うんだろうなと思う。
「これ、ねこのてさんの作ったパン?すごいね!おいしい!」
みんなそう言ってくれるのでとてもうれしいんだけれど、そこには「ねこのてが作った」というスパイスが少なからず加わってるんだろう。
だから、いつの日かだまってパンを置いて颯爽と去っていき、それを食べてくれた人が「なにこれおいしい」って言っているのをドアのすき間からのぞいて「しめしめ」とほくそえむ、って状態を目指したいなと思う、今日この頃です。(結局のぞくんかい!)