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鹿児島のサッカーが上手くいかない理由 第26節 秋田対鹿児島


鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは。仙太郎です。

中断明けに藤枝に敗戦した鹿児島ユナイテッドFCですが、今回はアウェイの秋田戦を振り返ります。

前節のリーグ戦からスタメンの変更は4人。渡邉、岡本、野嶽、藤本選手が外れ、河野、戸根、外山、有田稜選手が先発しました。中断期間中に移籍した選手が多くなってきており、これは想定範囲内かと思います。

試合は開始早々から秋田のペースで進みました。鹿児島の攻撃は、30分までかなりアバウトにロングボールを蹴っていましたが、こぼれ球を拾えず、押し込まれる時間が長くなりました。

前半32分 秋田の決定的な場面。ボールサイドに人を掛けているので、ゴール前が3対3の数的同数になり、しかもファーの外山選手はマークを見失っている状況。この時は泉森選手のスーパーセーブで失点を防ぐ

30分を過ぎてからはDFラインでボールをつなぎ、ポゼッションを確立させて、秋田の前プレスを誘ってからロングボールを蹴るようになりました。すると秋田の前線と最終ライン間の距離が離れ、スペースが生まれたことで、鹿児島がクリアされたボールを拾える機会が増え、秋田陣内でのプレーが増え始めました。

この前半途中からボールをつなぎ始めたのは、選手独自の判断だったのではないかと思います。それくらい前半30分までは、なんでもかんでも前にボールを蹴っていたため、これが監督の指示だった可能性は高いです。理由としては、これまで行わなかったことを突然連続して行うのであれば、監督の指示があったと考えるのが妥当です。

ただ、それ以降もロングボールを蹴るスタイルは変わりませんでしたが、多少の改善は見られました。

42分 秋田のPKを得るシーン。ボールに二人寄るが裏にいるフリーの選手にパスを通される
河野選手が倒してPKを与えているが、この時もゴール前は2対2の数的同数。
PKを蹴るシーンだが、泉森選手がギリギリまで動かず、蹴る瞬間に動いたのでキッカーの青木選手はどちらに蹴るか最後まで迷い、枠を外して失点を免れた

解説の方が言っていたのですが、沼田が1対1を仕掛けるのは問題ないと思います。それが彼の得意なプレーであり、そのために一人で外に張らせているのです。

右サイドの田中選手はドリブラーではないので、SB(サイドバック)のサポートがあった方が良いのですが、SBを高い位置に置かずにロングボールを蹴ると、SBが上がるのに時間がかかります。その結果、サポートするまでの時間が長くなり、その間にプレスをかけられてボールを失ったり、バックパスを強いられる場面が増えてしまいます。

この日、大活躍の泉森選手のスーパーセーブがなければ、5点くらい取られていてもおかしくありませんでした。PKを外した場面でも、泉森選手は最後まで動かずにいたので、キッカーはどちらの方向に蹴るか迷っていたと思います。こうした心理的な駆け引きもPKでは重要です。

後半開始早々 46分 秋田の得点の場面。典型的な秋田の攻撃で、ロングボールを落として、それを後から走り込んで来た選手が拾い、中にパス
それをポストプレーで落として、こちらも走り込んで来た佐藤選手が見事なシュートで得点。練習みたいなゴールでした

浅野監督が強調している「3秒でボールを奪い返す」ですが、これが鹿児島の守備に悪影響を及ぼしている可能性があると思います。なぜなら、鹿児島の選手がボールを奪いに行こうと過度にボールに密集し、その結果、裏にいる相手選手をフリーにしてしまう場面が頻繁に見られるからです。

「3秒でボールを奪い返す」という目標は良いのですが、そのためにはボールを失ったときに鹿児島の選手がボールの近くにいる必要があります。そのためには、鹿児島がショートパス主体でボールを前進させれば、選手間の距離が近くなり、ボールを失ったときにすぐにプレスに行きボールを奪い返せます。

しかし、ロングボールを蹴ると、前後の選手間の距離が広がり、すぐにプレスをかけに行くことはできません。

要するに、浅野監督がやろうとしていることは、実際の戦術と整合性が取れておらず、ピッチ上でもうまく機能していません。これは選手の責任ではなく、監督の指示に従わなければ試合で使ってもらえないからです。しかし、監督の指示通りにプレーしてもうまくいかないという状況では、選手がかわいそうです。

藤本選手がSNS上で発言しているのも、そういうことだと思います。

58分 秋田の追加点の場面。一度は鹿児島ボールになったが、クリアボールで相手にボールを与える。鹿児島の選手はボールが下げられたので、そこへ向かうが、そのままリターンパスを返され、フリーでセンタリングされてしまう。この時も2対1の数的不利な状況での守備を強いられている
ニアで井林選手が競るがボールはそのままゴール前に抜けてきて、青木選手に押し込まれて失点。この時はSBの河野選手がマークすべきだったが、中央に行ってしまいマークをできなかった

一方、秋田の戦術はシンプルです。前線のFWのフィジカル的優位を活かすためにロングボールを蹴り、ヘディングでそらして裏のスペースを狙うか、ヘディングで跳ね返されても、それを回収してそのまま押し込んで攻撃を継続します。

この戦術が見事に機能し、鹿児島を終始苦しめました。

また、秋田の守備は固く、プレスバックも速いため、通ったと思われたパスを奪われる場面も多く見られました。

守備強化を掲げる浅野監督が中断期間中に選手を補強し、トレーニングを重ねたにもかかわらず、再開後2連敗という厳しい現実が待っていました。それでも内容が良ければ、秋田に脅威を与えられればまだ期待が持てますが、決定的なシュートはありませんでした。

ゴール期待値は秋田の2.79に対して鹿児島は0.42。しかも80分まではほぼゼロというひどい数値で、これが不思議でないほど、実際の試合内容と一致していました。

守備重視を打ち出す監督が2試合連続で3失点というのも厳しい現実です。浅野監督が目指す、守備強度を高めてサイドからセンタリングし、中で高くて強い選手が合わせるサッカーを実現するために選手を補強しましたが、全く機能していないのは厳しい状況です。使われなくなった選手、移籍してきた選手、フロント、サポーター、すべての関係者にとっても辛い状況です。

83分 鹿児島のチャンスの場面。武選手がロングボールを収めて中央の藤本選手へパス。そのまま振り向きざまシュートを打つが、枠を外す。この時サイドに鈴木選手がフリーでいたのだが

選手を責める気持ちは全くありません。選手は全力を出しており、誰一人諦めていないと思います。ただ、サッカーはチームスポーツなので、それをどう組み合わせるかが重要です。それを決めるのが監督です。監督に迷いがあると、選手にも迷いが生じ、戦術の実行にも問題が出てきます。

例えば、秋田の戦術はシンプルで、対鹿児島に対して非常に効果的だったため、選手たちは確信を持って戦術を実行できました。すると、さらにうまくプレーができるのです。

一方、鹿児島のように戦術がうまく機能していないと、選手たちには迷いが生じ、判断が遅れ、さらにうまくプレーができなくなります。

失礼な言い方かもしれませんが、監督の采配を見ていると、以前監督をされていた時から内容がアップデートされていないように見えます。守備強度を高め、サイドからセンタリングして得点を取るという戦術で通用すほど、J2は簡単ではありません。守備強度が高いのは当たり前で、その上で何ができるかが求められています。

89分 秋田のチャンスの場面。藤山選手が大きなスペースでボールを受けて強烈なミドルシュートを打つが、ここも泉森選手がスーパーセーブ。こぼしたボールも秋田にシュートされるが、それもキャッチ。藤山選手へパスを出した秋田の選手にも鹿児島の選手が二人行って、結果的に藤山選手をフリーにしている

現時点で19位、残留圏内の17位水戸とは勝ち点差3、15位の大分とは勝ち点差8となり、これ以上引き離されると厳しい状況に追い込まれてきました。

もちろんまだ諦める必要はありませんが、昨日の試合内容を見ると、ネガティブにならざるを得ません。

浅野監督が試合後のインタビューで「敗戦は自分の責任」と言っていたのは、ポジティブに捉えています。先週の試合では、球際が弱いなど、選手の責任にするようなコメントが目立っていたので。

プロの監督なら、当初のゲームプランが崩れた場合の第二案は持っておいてほしいですし、状況に応じて戦術を変更できる柔軟性は必須だと思います。というか、それができなければ、なかなか生き残るのは難しいでしょう。

90分 鹿児島の決定的な場面。武選手とのパス交換で抜け出した藤村選手が裏のスペースへ走る藤本選手へスルーパスを出すが、秋田のGK山田選手が体を呈してこれをブロック

残留争いの勝負は最後の5試合くらいなので、そこまでにいかにチーム力を高めるかが肝要で、目の前の勝ち負けがすべてだとは思いません。ただ、監督や選手(サポーターも)が認識しているように、内容的にかなり悪いので、それをどう変化させるかが重要です。

正直に言うと、前述したように浅野監督の行おうとしていることと、実際にピッチ上で起こっていることの整合性が取れていないので、選手は迷っていると思います。これを選手間の話し合いだけで解決するのは難しいでしょう。

次節、上位の仙台とアウェイで対戦するにあたり、浅野監督がチームにどう変化を与えるか注目されます。

We are challengers!
「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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