課題も残った勝利 J3第14節 今治対鹿児島U
3試合ぶりの勝利なので、本来であればもっと喜びたいのですが、いろいろ課題もありました。まずは試合開始前の先発メンバーから振り返ってみましょう。
先発メンバーを見ると、先週からFWの萱沼選手が抜けて、今年新加入のグスタヴォ選手が入りました。ただこのグスタヴォ選手は、今の鹿児島のプレースタイルとはあっていません。
今の鹿児島はポジショナルプレーなるものを目指しているわけで、グスタヴォ選手は基準型ポストプレーヤーです。裏抜けするときもあるのですが、この裏抜けするタイミングも抜けていくポジションも今ひとつ周りとあっていません。
今の鹿児島のプレースタイルなら萱沼選手の方があっていると思います。下がってきて組み立てに関与できますし、ゴール前でフィニッシュにも絡めます。彼は最終ラインまで戻ってきて守備もできます。
それにグスタヴォ選手はポストプレーが上手いようには見えなくて、あまりボールを収められていません。かといって鹿児島はアーリークロスを上げて、中で合わせるというプレースタイルではなく、ボールを奥深くまで持ち込みフィニッシュするプレーを目指しています。
そうなるとグスタヴォ選手を先発させる意味があまりないんですよね。
もちろん萱沼選手も連続して出場していて疲労も溜まっているということもあるでしょうが、ちょっと不思議なメンバー交代でした。試合ではグスタヴォ選手が32分に負傷交代して萱沼選手が入ったので、最終的には先週と同じメンバーに戻ったんですけどね。
▽課題は失点シーンの前にあった
まずは試合開始早々4分の鹿児島の失点シーンを振り返ってみましょう。失点シーンは相手のDF チョン・ハンチョル選手の見事なヘディングシュートでした。田辺選手がマークしていたのですが、体格差も利用されて、戻りながらの難しいヘディングシュートを、ゴールギリギリに決められました。これはGKの大西選手も防ぐのは難しかったですね。ただ問題はこのCKを与えてしまった、この前のプレーです。
鹿児島が相手ゴール前でボールを失い、今治が一度GKにバックパスして右のSBにボールを預けます。この時鹿児島の左SBの衛藤選手が相手右SBの原田選手にダッシュしてプレッシャーをかけようとします。ところがボールをコントロールしている選手に、全力でプレスをかけようとすると簡単にかわされてしまいます。この時の衛藤選手のポジショニングはプレスを掛けるには、少し遠かったと思います。
そうすることで原田選手はフリーでドリブルができ、衛藤選手が空けた左SBがいたスペースにパスを出されて、フィニッシュまで持っていかれました。これはウェズレイ選手がブロックしてCKに逃れましたが、この直後のCKから失点してしまいました。
この日の鹿児島はSBがハーフスペースの高い位置を取り、大外のウィングは一人になることが多かったです。そのためウィングには相手のマークもつきにくくフリーでボールを受ける場面も多かったのですが、逆にSBが高い位置を取るのでボールロストした際に、元々サイドバックがいるはずのスペースを何回も使われて、ピンチを迎えていました。この現象は何度見られましたので、監督が意図したものだったのだと思われます。
実はこのSBの裏のスペースはこの試合を通じて何回も今治に使われています。右SBの裏のスペースも使われましたね。SBが高い位置を取るので、ボールロストした場合に空けたスペースを使われるのは仕方がない面もあるのですが、ボールロストしたときの守備戦術をもう少しチームとして統一させておかないと、この現象が現れるのは、今回が初めてではないでしょうし、最後でもないでしょう。
また鹿児島の中盤の選手が猛然と相手DFにプレスを掛けにいき、かわされて空けたスペースを使われて攻撃される場面も多く見られました。前からプレスを掛けるのが悪いわけではないのですが、前からプレスを掛けるなら、チーム全体で前に移動しなければなりませんし、いつ前からプレスを掛けるかも明確にしておかなければなりません。そしてそれは監督の仕事になります。
この日の鹿児島は守備時には、酒本選手が前に残り4−4−2の形で守備をすることが多かったように見られます。この時に中盤の選手が前にプレスを掛けると、その空いたスペースを使われることになります。
今の鹿児島は前の選手は前からプレスを掛けますが、最終ラインは下げたままなので、中盤に広大なスペースがあり、そこを相手チームに使われています。これでは厳しいですよね。
ただ今のところ相手選手のクオリティにも助けられていて、失点自体が多いわけではないのですが、これから改善していかないと連勝するのは難しいのは、先週も書かせていただきました。
ちなみに今治の10番 有馬選手はいい選手でした。ボールのキープ力もあるし、ワンタッチでプレスをかわす技術や優れた判断能力もありました。有馬選手には何回もピンチを作られていました。この有馬選手をマークしたいのですが、左サイドに張っているのでなかなかマークするのが難しかったですね。
▽鹿児島のポジティブな面
今日の試合で良かった点も見ていきましょう。今治が前からプレスを掛けてきた場合でも、少ないタッチ数でボールを回してプレスを回避しながらボールを前進できていたのは良かったと思います。ただボールを前進してからの最後のフィニッシュの形はなかなかできていませんでした。
鹿児島の37分の同点シーンもCKの混戦からだったのですが、このCKを得たプレーは素晴らしかったです。酒本選手がボールをキープしながら米澤選手がインナーラップを仕掛けて、裏へ抜けます。そこへ酒本選手が浮き球のパスを合わせて米澤選手がシュート。これは防がれますが、これで得たCKからの同点でした。しかも酒本選手のパスは逆回転がかかっていて、ボールが止まるようになっていて、米澤選手がシュートが打ちやすい質の高いパスでした。この浮き球のパスは酒本選手のクリエィティブな面が出ていてすばらいいですね。これは酒本選手しかできないプレーでした。
▽田辺選手のハードな守備
田辺選手の厳しい守備も良かったです。ファール覚悟の守備で鹿児島のピンチを未然に防いでいました。特に相手カウンターの場面では、DFラインからブレークして、起点となる選手にプレッシャーを掛けて、自由にプレーさせなかったですし、先週もお話したようにファールになる場面もありましたが、相手のカウンターを潰していました。これは鹿児島のようなポゼッション率の高いチームには必要なプレーです。
田辺選手はウェズレイ選手と並んで、ビルドアップの起点にもなれていますし、本当に欠かせない選手となりました。田辺選手は本来ボランチの選手なのですが、まるで本職のCBのような厳しい守備には何回も助けられました。この田辺選手の特性を見抜いた前監督パパス氏の洞察力はたいしたものですね。
鹿児島はJ3では唯一ポゼッション率 60%を超えているチームです。そして最近はビルドアップもうまくできている。にも関わらずなぜ得点が少ないのか、ここを考えていかなければなりません。それは来週以降に徐々に解明していきたいと思います。
今日のところはこの勝利を喜び、来週の富山戦を楽しみに待ちたいと思います。この富山戦が終われば、オリパラ開催に伴う中断期間に入ります。この中断期間は1ヶ月以上にも及びます。この間にチームをどう変えていくのは、大島暫定監督の手腕を期待したいところです。
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