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【要約】目からウロコのコーチング~なぜあの人には部下がついてくるのか?~

コーチングについて学ぶ

コーチングとは何か

コーチングらしきことをして、「部下を思い通りに操りたい」と思っているなら、この本は有効ではありません。コーチングはひとを操作したり、自分にとって都合のいい存在に変えるための理論では作られていないのです。コーチングとは、会話によって相手の優れた能力を引き出しながら、前進をサポートし、自発的に行動することを促すコミュニケーションスキルです。コーチは、「聴いて、受け入れて、質問する」のです。「答」はその人の中にあり、そしてその「答」こそがコーチングで引き出される「相手の優れた能力」なのです。たとえわずかな前進でも、ささやかな「答」でも、その積み重ねがひとを成功へと導きます。その答を引き出し、前進をサポートするのがコーチだといえます。

自発的な行動は100%の解に勝る

上司であるあなたの「命令」が成功への最短の「答」であるとします。つまり、100%パーフェクトであり、部下の「答」に従った場合は50%程度の成功率だとします。しかし、部下があなたの100%の正解に従っても、具体的な目標があやふやなまま進み、モチベーションも上がらず、熱意も低いとしたら、手に入れられる成果は、果たしてどのくらいでしょうか?
たとえ50%の「答」であっても、部下自身が自分で導いた「答」に向かっていくことで、最終的に得られる成果は、上司が与えた100%の「答」に従うより高い場合があるのです。
さらに、結果は50%であったとしてもかけがえのない成果を得られています。それは「50%達成した」という自信が手に入ること、そして残りの50%が新たな目標となり、熱意が生まれることです。この、内側から生まれてくる「熱意」こそが「仕事の喜び」であるのは言うまでもありません。

部下の「答」はどこにある?

ひとは「考えろ」と命令されても考えません。考えさせたかったら、「質問する」ことが一番有効です。そして、「質問」され、その答を「探す」ことによって潜在能力が引き出されます。答を引きだし、前進をサポートする人(=コーチ)が必要な理由は、「質問」によって相手の意識を潜在能力に向かわせるためです。
コーチングでは、大きくても小さくても今の「達成目標」をコーチに宣言します。私たちは、何か目的があって行動していますが、いつもそれらをアウトプットしているとは限りません。人生の大きな目標であればなおさら、人知れずひっそりと始めることは多いでしょう。そこに潜んでいる心理は「失敗する恐れ」です。誰にも宣言せずに「成功」への歩みを一人で進める人は、常にその恐れと向き合って、孤独に進んでいくことになります。その時点でスタートは「マイナス」と言わざるを得ません。
コーチに「成功した姿、達成目標」を宣言すると、何が起こるでしょうか?「成功」を宣言しても、成功が手に入るという確約は無いし、失敗しないという保証にもなりません。しかし、成功を言語化すると、意識は「成功する事」に向き、「成功への方法論、チャンス」をキャッチするアンテナが立ち、勘が研ぎ澄まされるのです。

Iメッセージ/YOUメッセージ

承認の気持ちを伝えるときにはメッセージを使います。メッセージにはIメッセージとYOUメッセージがあります。
承認をYOUメッセージで伝えると、相手は評価されたという印象を持ちます。Iメッセージとは、発信する側が「今ここで」の自分の気持ちにフォーカスし、それを伝えたものです。Iメッセージでは、どんなことを言っても、正直な「今ここで」のあなたの気持ちですから、相手は抵抗感なく受け入れられます。
管理職はクリエイティブな叱る言葉を見つけましょう。「悔しいな」「惜しいな」「期待してたんだ」「問題点を一緒に考えよう」「何が障害だったんだろう」「次に活かしたいな」。あなたのIメッセージなら、部下はきっと聴く耳を持つはずです。
コーチングでは、自分はどうしたいのか、「自分」を主体としてものを考えなければ、その人の前進にはなりません。潜在意識にある優れた能力も引き出されません。怒鳴られて「正直に話せ!」と言われても、人は正直にはなれないのです。あなたのコーチングの相手は聴いてもらうことによって安心を得られて、やっと次のステップへ進む事ができます。

促すことと信じる能力

コーチングにおいて「答を相手は持ている」という場合の「答」とは、あらゆることに対する「正解」である必要は全くありません。コーチングの答は、パーフェクトアンサーである必要はないということです。コーチが今の段階の「答」を受け入れることが、次の答の呼び水になります。決して否定をしないで受け入れてください。「評価しない」ということはコーチにはとても重要な姿勢です。「すぐに出てくる答は答ではない」という心構えでいましょう。私たちは会話によって、勇気づけられたり、やる気が出たり、興味がわいたり、愛に満たされたり、逆に意気消沈したり、憎しみを感じたりしています。コミュニケーションから生み出されるものは、情緒のエネルギーなのです。コミュニケーションは私たちの心を温かくもするし、熱くもするし、冷えびえとさせたりもします。コーチングでは「思ったことをしゃべる」のではなく、「しゃべりながら自分の考えに気付く」ということをしていると考えましょう。

目標の設定

目標を設定するうえで、大切なことが三つあります。
まず、目標をはっきりさせるということです。これは、コーチと相手が、「達成した」というコンセンサス(=意見の一致。合意。)を持てるような具体的な基準で設定される必要があります。二つ目は、目標が定まったら、それを成し遂げたときの状態をしっかりとビジュアライズ(=映像化)していくことです。そして三つめは決してコーチが目標を設定しないということです。
目標は、数値化・数量化できるものは明確な値で設定し、できない者も具体的な基準で設定します。上司がコーチとなってコーチングのセッションに入るときは、部下に、「かっこいい目標を掲げさせることをしない」ということに気を付けてください。自分を大きく見せたい気持ちが強かったり、世俗的な願望を持っているのを恥ずかしがったり、生活の実情をさらすことにためらいがあったりすると、嘘の目標を掲げてしまい、成果を出すことはできません。目標の設定を誤ると、効果が出ないばかりではなく、コーチングが楽しくなくなり、価値あるものになりません。目標の設定で犯しやすい間違いは、「仮面の目標」と「真の目標」を見誤るということです。
目標を設定するプロセスを進めるうちに、その人自身が見えていなかったことが段々クリアになり、自分自身が本当に欲しい「別の目標」が見えてくるということが頻繁に起こります。相手のワクワクした感じがコーチに伝わってこない目標は、真の目標でない場合があるので、真の目標が見えるまで仮面を剝ぎ続けましょう。

目標のビジュアライズ

ビジュアライズとは、コーチと相手が目標達成の姿を共通の具体的な映像にしていくということです。ビジュアライズによって、目標はより具体的な存在感を持ちます。その瞬間に、単なるぼやけた夢から「ビジョン」へと変化していくわけです。具体的な映像を相手の脳裏に描くことで、行動への確かな動機付けが生まれます。ビジュアライズは意識してトレーニングするとコツがつかめますから、質問のアイテムを日ごろから蓄えておきましょう。

コーチングの手順

1、「達成目標」を立てる
2、「現状」の把握
3、「原因」を探る
4、「行動」を起こす
5、「アドバイス」「フォロー」をする

「達成目標」は長いスパンの大目標を設定したら、三か月や一週間という期間での中目標、小目標を立てていくことが必要です。部下との面談では、予測可能ですぐに行動に移せるレベルの目標を扱っていくのが効果的です。ここでは、相手が目標を定める事サポートするのがコーチの役割です。コーチが目標を設定することが無いようにしましょう。

「現状」の把握は、「今どこにいるのか」を確認するステップです。目標と今をはっきりとした並列の図で描いてみることによって、そこに「いい緊張を生むギャップ」が見えてきます。私たちは、ギャップがあるからこそ、それを埋める行動をクリエイトしようとするのです。目標と現状とのギャップを明確にして、緊張を維持していくのがコーチの仕事といっても過言ではありません。

「原因」を探るとは、「本当の問題は何か」を探ることです。ひとは慌てていたり、不快感だけと戦っていたりする場合、原因や背景を自分でもはっきりと掴んでいない場合が多いので、コーチは問題の本質を見極めることが大切です。「現状」と「なりたい状態」とのギャップを引き起こしている理由や背景を聴いて、障害を排除すると進みやすくなります。

「行動」を起こすためには、たくさんのアイデアを考えてもらい、その選択肢の中からどれがベストかを考えるという二段回のステップで考えます。出てきたアイデアを決して否定してはいけません。まず、すべての行動プランを受け入れてください。あなたの古いやり方や固定観念よりも機能する答を部下本人が持っていると信じることが重要です。

「フォロー」は行動の意思の確認と力づけです。ダメ押しである場合もあります。上司が部下に仕事を任せる場合、最終締め切りだけを示すのではなく、チェックポイントを設けることが有効です。「いつ、○○さんに電話するのか」「明日の10時に掛けます」のように、具体的な日時を言語化することで、状況は一歩進んだといえます。やる意思を確認し、確実にそれが行われるように随時サポートすることが重要です。もし、行動を起こせなかった場合には、「その原因」「それを取り除く方法」について考えます。問題があった時こそ、こまめにフォローしていく必要があります。

部下は社内顧客です。「部下が知識とスキルを備え、成長し、面白がって仕事をする」支援をしていきましょう。管理職が成熟したコミュニケーション能力を持つことによって部下とウィン-ウィンの関係を作ることができます。「プライド」と「はったり」を捨て、管理職が変わることから始めなくてはなりません。コーチングは自己変革から、ということを感じてほしいと思います。

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