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REVIVE  第十一章

第十一章 外部の専門家に「手伝ってください」と頼む

前回のお話


千歳町の挑戦 – 共創への一歩

拓真が「一緒にやろう」と地元の人々に声をかけたところ、千歳町の住民たちが興味を示してくれた。この地域では高齢化が進んでおり、住民たちは日常の買い物にも苦労していた。拓真はその問題を解決するために、朝に宅配弁当を届けるサービスを提案した。地元の食材を使い、安否確認も兼ねたこのサービスは、ハコバン一台あれば実現できるというアイデアだった。

「面白そうだね。それなら、私たちも手伝えるかもしれない。」
「地元の食材を使って、地域全体が活性化するなら、なおさらいいね。」

住民たちの反応は上々だった。しかし、すぐに現実的な問題が浮上してきた。

「でも、誰がその弁当を作るんだ?そして、どこで作るんだ?」

その問いに、拓真は一瞬言葉を失った。具体的な運営方法や、どの施設を使うかについては、まだ何も決まっていなかったのだ。詳細な計画が不足していることに気づかされ、拓真は頭を抱えた。

「そうだよな…考えが甘かったかもしれない。」

その晩、拓真は鶴見さんがほぼ毎日現れるという居酒屋を訪れ、プロジェクトが行き詰まったことを打ち明けた。鶴見さんは、拓真の話を黙って聞き終えると、ゆっくりと頷きながらこう言った。

「拓真、お前さんは良いところに気づいたが、一人で解決しようとするには限界がある。地元の人たちと一緒にやることは素晴らしいが、それだけでは足りない時もあるんだ。」

「どういうことですか?」

拓真は鶴見さんの言葉に戸惑いを感じながら尋ねた。すると、鶴見さんは深く頷き、続けた。

「外部の専門家に手伝ってもらうんだ。例えば、地域に根ざした起業家や、NPOの専門家、行政の担当者など、プロジェクトの規模が大きくなると、それなりの知識と経験が必要になることもある。お前さんが考えたアイデアは素晴らしいが、実行に移すためには、もっと多くの力が必要だ。」

拓真はその言葉を聞いて、自分が一人で全てを抱え込もうとしていたことに気づいた。

「でも、外部の人に頼むことで、地元の人たちが反発することはないでしょうか?」

拓真の不安を察した鶴見さんは、優しく笑って答えた。

「その可能性はある。だからこそ、外部の力を借りるときは、地元の人たちの意見や感情をしっかりと汲み取ることが大切だ。彼らにとっては、外部の専門家が自分たちの生活にどう影響するかが気になるんだ。それを理解し、共に歩む姿勢を見せることが重要だよ。」

「わかりました。外部の力を借りる時にも、地元の人たちとの信頼関係を大切にします。」

鶴見さんは満足そうに頷き、嵐山を一口飲んだ。「そうだ。それができれば、お前さんのプロジェクトはもっと強力なものになるだろう。焦らず、一歩一歩進んでいけばいいさ。」

共創のはじまり

その翌日、拓真は地域の自治会長や農家、商工会の代表者に声をかけ、アイデアの具体化に向けた合同会議を開いた。「このプロジェクトは、ただの弁当配達ではなく、地元の誇りを取り戻し、地域全体を活気づけるものにしたいんです」と、拓真は力強く語った。

参加者たちからも次々と具体的な提案が出た。

「地元の旬の食材を使った特製弁当を、観光客にも販売したらどうだ?」
「うちの農園から野菜を提供するよ。ただ、収穫のタイミングに合わせた柔軟なメニューが必要になるけどね。」
「商工会が補助金の申請を手伝うから、配送用の車両も増やせるかもしれない。」

外部の専門家とも連携を模索する中で、拓真は「地域未来創造ネットワーク」というNPOの協力を得ることになった。彼らの経験と知識は、プロジェクトを現実のものへと導く大きな助けとなるだろう。

会議を終えた後、拓真は小さな達成感を胸に感じながら、SNSで「千歳町の未来を一緒に作りませんか?」というメッセージを発信した。彼の投稿にはすぐに反応が集まり、地元の同級生や外部の人々からも「手伝いたい」との声が届いた。

挑戦の先にある未来

拓真は、鶴見さんが言っていた「霧の中を進む感覚」が今ならわかる気がした。一歩進むごとに、新しい景色が見え、次の一歩が見えてくる。そして、仲間たちと共に歩むその道のりが、彼に確かな自信を与えてくれていた。

「焦らなくていい、一歩一歩進んでいこう。」拓真はそう自分に言い聞かせ、仲間たちと共に未来に向かって歩み続けた。

このプロジェクトは、単なる宅配サービスではなく、地域の新しい価値を生み出す「共創の場」として成長していく予感がした。

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