REVIVE 第七章
第七章 おじいちゃんおばあちゃんに話を聞く
SNSに投稿してから数日後、拓真は心の中で小さな変化を感じていた。自分から行動を起こしたことで、何かが動き出す予感がしていたのだ。しかし、最初の数日間は反応がほとんどなく、少し落胆し始めていた。誰も見ていないのか、あるいは興味がないのかと考えながら、自然と美香の顔が頭に浮かんだ。「一度、美術館に行ってみようか…」そんな考えが、彼を再び行動に駆り立てた。
美術館に到着すると、意外な光景が目に入った。展示室の片隅で、美香と鶴見さんが談笑しているではないか。二人がすでに面識があり、何度か交流していたことを知り、拓真は驚きを隠せなかった。気づくと足がそちらに向かっていた。
「鶴見さん!」と声をかけると、鶴見さんは穏やかな笑みを浮かべて応えた。 「おや、拓真。今日は美香さんに相談しに来たのかい?ちょっと悩んでいる顔をしているな。」その言葉に、拓真は少し照れながらも頷いた。
「SNSに投稿してみたんですけど、最初は反応がなくて…。どうすればもっと多くの人に伝わるのか悩んでて…」と正直な気持ちを打ち明けた。
その話を聞いた鶴見さんは、少し考えた後、優しく言葉をかけた。 「何事も一朝一夕にはいかないよ。最初から大きな反応を期待するのではなく、小さな行動を続けることが大切だ。焦らず、まずは地道に進んでいけばいいさ。」
美香もそれに同意して、微笑みながら言葉を続けた。 「地域の活性化なんて、すぐに結果が出るものじゃないよ。まずは身近な人たちに声をかけていけばどうかな?例えば次の投稿では、具体的な呼びかけをしてみるとか。私も手伝うから、一緒に頑張りましょう。」
鶴見さんと美香の言葉は、拓真の心に響いた。彼は「そうか、やっぱり行動を続けることが大事なんだな」と再認識し、再び意欲が湧いてきた。「そうですね…もう一度、投稿してみます。皆さんのおかげで気持ちが楽になりました。」
その夜、拓真は自宅で再びSNSに投稿した。「地域活性化を一緒にしませんか?具体的なアイデアを持って集まりたいです!」そのメッセージは、自信を持って送信された。以前よりも具体的な呼びかけに、少しだけ自分でも期待を抱いていた。
数日後、予想以上の反応があった。かつての同級生や地元の若者たちからメッセージが届き始め、地域を良くしたいという同じ思いを持つ仲間が少しずつ集まり始めたのだ。その中には、都会に出て働いているが地元を気にかけている人たちもいた。拓真は、その動きに希望を見出し始めた。
週末、美香と再び会う約束をしていた拓真は、彼女にそのことを嬉しそうに報告した。「SNSに投稿したら、いくつか反応があったんだ!想像以上で少し驚いたけど、これからが本番だよね。」と言うと、美香は彼の様子に微笑んだ。「それは良かったわね。やっぱり、行動すれば少しずつ変わるのよ。」
その後、二人は地域の活性化についてさらに具体的な話を進め、ワークショップを開くことを決定した。美香は美術館での展示や地元の文化に関わるアイデアを提供し、拓真は地元の商店や農家に声をかけ、協力を呼びかける計画を立てた。
ワークショップ当日、カフェの一角には十数名の地元の若者や興味を持つ人々が集まっていた。参加者たちはそれぞれのアイデアを語り合い、地域をどう盛り上げるかについて話し合っていたが、その中で一人が手を挙げてこう質問した。
「ところで、亀岡の歴史って具体的にどんなものですか?もっと詳しく知りたいです。」
突然の質問に、拓真は焦った。頭に浮かんだのは教科書に載っているような表面的な情報ばかりだった。
「えっと…、亀岡は古くから…歴史のある場所で、観光名所もいくつかあって…」
曖昧な返答をしてしまい、会場に微妙な空気が漂った。拓真は自分でも情けなく感じ、なんとか話を続けようとしたが、うまく言葉が出てこなかった。
ワークショップの後、美香と鶴見さんにそのことを話した。「地元の歴史について聞かれて、うまく答えられなかったんです。自分でも亀岡のことをもっと知りたいけど、教科書的な知識しか持っていなくて…。どうすればいいんでしょうか?」
鶴見さんは静かに頷き、「教科書に書いてあることだけじゃ、その土地の本当の姿は見えてこない。昔からその土地に住んでいる人たち、特におじいちゃんおばあちゃんのような年配の人たちの話を聞くのが一番だよ。彼らは、その土地の本当の歴史や知恵を知っているからね。」
そのアドバイスに、美香も笑顔で頷き、「私も地域の年配者の方々とよく話をするけど、すごく面白い話がたくさん聞けるよ。もしよければ一緒に行ってみない?きっと新しい発見があるはず。」
拓真はその提案に心が弾んだ。「確かに、それが本当の地元の姿なんだろうな。ぜひお願いします!」と、彼は二人に感謝の気持ちを込めて頷いた。
こうして、拓真は地域の高齢者たちの話を聞きに行くことを決心した。新たな道を開くための次の一歩が、今始まろうとしていた。