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REVIVE  第十四章

第十四章 古いものを「新しく」使い直す。

前回までの続き


前職の旅行会社、緑のうきわの元同僚から飲みの誘いを受け、久しぶりに東京へ行くことにした。仕事に追われる日々の中でも、東京の喧騒や活気を懐かしく思う瞬間があった。特に心に引っかかっていたのは、彼女――由香のことだった。二人の関係がぎくしゃくしたまま途切れたままになっていることに、拓真はずっと心のどこかで後悔を感じていた。

東京の夜、揺れる心

新幹線を降り立った拓真は、懐かしい景色に胸が高鳴った。変わらないビル群、行き交う人々、そして街全体に満ちるエネルギー。仕事に充実感を覚えつつも、ふとした瞬間に自分の立ち位置が揺らぐことがあった。そんなとき、由香のことを思い出しては、自分が今も彼女に何を伝えるべきなのか、迷い続けていた。

久しぶりの同僚との再会は心から楽しかった。酒の席では、昔話に花が咲き、笑い声が絶えなかった。東京の熱気に包まれながらも、拓真の心は別の場所にあった――そう、由香との再会に向けて、心の奥底で小さな不安と期待が交錯していたのだ。

由香との再会

同僚たちと別れた後、意を決して拓真は由香に連絡を入れた。すぐに彼女から返信があり、二人は古民家風の居酒屋で再会することにした。待ち合わせ場所に向かう途中、街の灯りが揺れる中で、彼の胸は次第に高鳴りを増していた。別れ際の彼女の言葉を思い出すたび、心のどこかで緊張が生まれ、同時に新しいスタートへの希望も湧いてきた。

「ここ、いい雰囲気だね」と由香が微笑んだ。レトロな装飾が施された居酒屋の静かな空間には、どこか懐かしさが漂っていた。

「亀岡にも、こんな感じの古い建物がまだたくさん残ってるよ。」拓真は、少し自慢げに応じた。

二人の間にぎこちない沈黙が流れたが、先に口を開いたのは拓真だった。
「この前は、悪かった……」

「ううん、私こそごめんね。」由香の声には、わずかな後悔と優しさが混ざっていた。「亀岡に行ったとき、正直、驚いちゃって……環境の変化にうまくついていけなかったの。」

二人は少しずつお互いの心の壁を解きほぐし、笑顔が戻り始めた。

心の変化と新たなインスピレーション

話が弾む中で、拓真は地域活性化のプロジェクトについて語り始めた。地元の人々と協力して新しいアイデアを形にしていく過程、その楽しさと苦労を、彼は熱を込めて説明した。彼の瞳は、話せば話すほど輝きを増していった。

由香は、そんな彼を静かに見つめながら言った。「なんか、変わったね。でも……今のあなた、前よりずっと素敵だよ。」

その言葉に、拓真は頬が赤くなるのを感じた。「そ、そうかな……?」照れ隠しのように笑いながら、心の中で由香の言葉が染み渡っていくのを感じた。

新たな可能性への目覚め

そのとき、拓真はふと居酒屋の内装に目を留めた。古いものをそのまま残しながら、現代的な感覚で仕上げたインテリアが、まるで時間の流れを超えて若者たちを惹きつけている。
「こういう古民家風のインテリア、亀岡じゃ普通だけど……ここだと、フォトジェニックで人気なんだな。」

その瞬間、彼の中で何かが閃いた。古いものに新しい価値を見いだし、それを現代の文脈でアップサイクルすることで、亀岡にも新たな魅力を生み出せるのではないか――そう考えたのだ。

居酒屋のテーブルにノートを広げた拓真は、止まらない勢いでアイデアを書き出していった。地域の古い建物や資源を活かしながら、新しい形で価値を創出する方法を次々と考えた。

「本気なんだね……亀岡のこと、こんなに真剣に考えてるなんて。」由香は、優しく彼を見つめながらそう言った。

その言葉に、拓真の心に確かな自信が芽生えた。そして同時に、彼女に対する気持ちが再び胸の中で強くなっていくのを感じた。

二人の未来に向けて

再会の夜が更けていく中、拓真は決意を固めた。亀岡に戻り、今度こそ自分のプロジェクトを形にしよう。そして、由香との関係も、もう一度ゆっくりと築き直していきたい。東京の刺激は確かに心を揺さぶったが、それでも彼が本当に大切にしたいものは、亀岡の地にあったのだ。

「次は、亀岡で一緒にお酒を飲もうよ。」拓真は、少し照れながらも自信を持ってそう提案した。

「いいね、そのときは私が美味しい野菜を持って行くよ。」由香は、柔らかな笑顔で答えた。

別れ際、二人はほんの少しだけ、恋人同士のような距離感を取り戻していた。東京の夜空の下、二人の心に芽生えた新しい希望が、これからの未来に向かって静かに歩み出していた。

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