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REVIVE エピローグ
エピローグ
前回までのお話
エピローグ
拓真の人生は、大きく変わっていた。始めた宅配弁当事業は、亀岡市の高齢者が多く住むエリアや高齢者施設に広がり、地元の食品工場からの支援も受けて、売り上げは安定的に伸び続けている。高齢者の暮らしを支えるこのサービスは、今や地域社会にしっかりと根付いていた。
一方、拓真が手がけた亀岡ブルワリーは、亀岡の魅力を発信する拠点として確かな地位を築いた。昼夜を問わずお客さんで賑わい、観光客だけでなく地元の人々も訪れる人気のスポットとなっていた。このカフェで語られる「おもしろい話」は訪れる人々を魅了し、亀岡市の新たな魅力を発信する重要な役割を果たしている。
さらに、拓真は亀岡市と協力して「子供の夢プロジェクト」を立ち上げた。地元の子供たちが自分の夢を語り、それを実現するためのサポートを行うこのプロジェクトは、未来を担う若い世代に希望を与えるもので、地域社会に新しい風を吹き込んでいる。
そして、結婚も決まった。拓真が選んだのは、美香だった。高校時代からの同級生であり、地域活性化のパートナーとして共に歩んできた彼女の支えがなければ、ここまでやってこられなかっただろうと、拓真は心から感謝していた。
結婚してしばらく経ったある日、拓真はふと、これまで鶴見さんから教わったことをメモしていたノートを開いた。1ページずつめくりながら、鶴見さんとの出会いや、さまざまな教えを思い出していた。
「1. 地元の宝物を見つける」
「2. 地元の人に「ありがとう」を言う」
「3. 一日一回は地元の食材を食べる」 …
次々とページを読み返すうちに、拓真は鶴見さんからの教えが、今の自分を築き上げたことを改めて実感した。すべての言葉が、彼の人生と亀岡市の未来にとって重要な指針だったのだ。
「本当に、鶴見さんにはお礼を言わなきゃな…」
拓真はそう思い立ち、美香との結婚を報告したいと感じたが、ここ最近、鶴見さんには全然会っていないことに気づいた。いつも突然現れては大事なことを教えてくれた鶴見さんの顔が、心の中に浮かんだ。
その日、拓真はサンガスタジアムの周りを歩いていた。ふと目に留まったのは、新しく置かれた鳳凰の置物だった。京都サンガFCのキャラクターが鳳凰であることを思い出しながら、立ち止まり、じっとその置物を見つめた。
その時、不思議な感覚に包まれた。まるで、その鳳凰がこちらを向いてウインクをしたように見えたのだ。
「鶴見さん…?」
拓真は驚きながらも、どこか懐かしい気持ちになった。まるで鶴見さんが、どこかで見守ってくれているような気がしてならなかった。
「ありがとう、鶴見さん。」
心の中でそう呟いた拓真は、深く息を吸い込んで、明日への決意を新たにした。恋愛の問題も、地域活性のプロジェクトも、すべての課題に立ち向かい、最善の道を選ぶことを心に誓った。
そして、また次の日も、拓真は亀岡市の未来のために走り続けていくのであった。
おわり
「鶴見さんの名言」
「お前さん、この街で何かを成し遂げたいなら、まずはこの街の『宝物』を探すんだ。ただし、その宝物ってのは、金銀財宝みたいな派手なもんじゃない。人が普段気にも留めないようなものの中に、実は本当に大切なものが隠されていることが多いんだ。」
「この街にある『宝物』も同じさ。目に見えるものだけにとらわれたら、本当に大切なものは見逃してしまう。物質的な価値を持つものは一時的に人を引きつけるかもしれないが、時間が経てば色褪せてしまうものだ。」
「お前さんがどんなに良かれと思って何かをしても、相手がそれを喜ばなければ意味がないんだ。だから、相手が何を大切にしているのか、何を喜ぶのかをしっかり理解することが大切なんだ。」
「小さな親切や心遣いが、信頼を築くうえでとても大きな意味を持つ。逆に、小さな無礼や不親切な行動が、信頼を失う原因にもなる。地元の人々との信頼関係を築くためには、日常の中でできる小さな親切や気配りを意識して積み重ねていくことが大切なんだ。」
「それがどんなに小さなことでも、相手を理解し、心からの親切を示すことで、自然と信頼が築かれていく。そして、それが本当の意味での『繋がり』を作るんだよ。」
「取れたての野菜は、大地と気候からエネルギーをたっぷり受け取っているんだ。それがこの味の濃さだ。無理に育てたものじゃなく、この土地に根ざして育ったからこそ、こうして何重にも旨みがあるんだよ。」
「結局のところ、場所の良し悪しってのは、そこにいる人がどう感じ、どう受け取るかで決まる。お前さんの彼女が亀岡を受け入れられなかったのは、彼女が都会での生活を基準にしてこの街を見ていたからなんだ。亀岡は彼女にとって、暗くて、静かすぎた。だが、地元の人たちは、そんな亀岡を自分たちの居場所として、愛着を持って受け入れている。彼らの基準で見れば、静けさも、虫の多さも、大した問題じゃないんだよ。」
「質問をすることで、本当に大切なものが見えてくる。彼女が感じた違和感や不満は、ただの表面的なものだ。そこに隠された本当の理由を見つけるために、もっと深く『どうして?』と問い続けることが必要なんだよ。表面的な反応だけで判断するのではなく、その裏にある人々の価値観や背景、歴史を理解することで、初めてその場所や人々の本質が見えてくる。」
「日本のお祭りの本来の目的は、神様に感謝することだ。この『祭り』という言葉は、『祀る』から来ているんだ。そして、日常を『ケ』と呼び、祭りを『ハレ』と言う。祭りは非日常の場であり、日常をリセットして新たな活力を与えるためのものなんだ。ハレの場があるからこそ、日常を生きる活力が湧く。光秀もこの土地で決断を下し、その後の歴史に深く関わった。君も、この街で自分の道を見つけることができるさ。」
「清沢哲夫先生の「道」って知っている?『この道を行けば どうなるものかと 危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。ふみ出せば その一足が道となる その一足が道である。わからなくても 歩いていけ 行けば わかるよ』って。
何かを始めるのに悩んだり怖がったりするのは当たり前だよ。でも、結局は踏み出さないと何も始まらないの。たとえわからなくても、まず一歩を踏み出すことが大事なんだよ。」
「教科書に書いてあることだけじゃ、その土地の本当の姿は見えてこない。昔からその土地に住んでいる人たち、特におじいちゃんおばあちゃんのような年配の人たちの話を聞くのが一番だよ。彼らは、その土地の本当の歴史や知恵を知っているからね。」
「地元のことを知りたいなら、ただ机に向かって考えてるだけじゃダメだ。実際に街を歩いてみるんだ。たとえば、篠町や南つつじケ丘のような場所を、普段の生活の中では気にかけないだろう。でも、そこでこそ、この街の本当の日常が見えてくるんだ。特に路地裏や、観光客がほとんど来ないような場所を歩いてみろ。目的もなく歩く中で、何か新しい発見があるかもしれない。そして、その中にこそ、お前さんの本当のアイデアの源が眠っているかもしれないぞ。」
「彼らに信頼されるためには、お前さん自身がこの街の一員として受け入れられる必要がある。それは時間がかかるし、すぐに成果が出るものでもない。だが、一度信頼を得られれば、彼らも協力的になり、共に歩んでいけるだろう。」
「拓真、お前さんは良いところに気づいたが、一人で解決しようとするには限界がある。地元の人たちと一緒にやることは素晴らしいが、それだけでは足りない時もあるんだ。」
「時には『何もせず』に過ごすことも必要だぞ。」
「余裕がない時ほど、そういう時間が必要なんだよ。お前さんの心が疲れてしまったら、どんなに素晴らしいアイデアも生まれてこない。自然の中で何もしないことが、次の一歩を踏み出すための大事な準備になる。」
「恐れることなく動き出してみろ。困難が来たら、それを使って新しいレモネードを作ればいい。大事なのは、諦めずに続けることだ。」
「たとえば、陶芸家が一つの茶碗を作るとき、形を整えるだけじゃない。余白――意図的に作られた空間や、ゆるやかな歪みがあることで、その茶碗にしかない『美』が生まれるんだ。」
「そりゃあ、お前さんの顔を見ればわかるさ。何かを伝えたいとき、大事なのは、相手に『知りたい』と思わせることさ。」
「人間は、自分で発見したことに価値を感じるからな。押しつけるより、引き出すことを考えたほうがうまくいくんだよ。」
「大切なのは、自分の心に正直であることじゃよ。自分が本当に何を望んでいるのかを見つめ直すことが必要じゃ」