ホウ素中性子捕捉療法(BNCT):難治性がんへの新たな挑戦
こんにちは。今回は、京都大学原子炉実験所の鈴木実教授による「ホウ素中性子捕捉療法による難治性がんに対する取り組み」についてご紹介します。この革新的な治療法は、従来の放射線治療では対応が難しかった難治性がんに対して、新たな希望をもたらす可能性を秘めています。
はじめに:BNCTとは
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)は、がん細胞に選択的にダメージを与える革新的な放射線治療法です。この治療法は、ホウ素化合物をがん細胞に集積させ、その後中性子を照射することで、がん細胞内で核反応を起こし、効果的にがん細胞を破壊します。
BNCTの最大の特徴は、正常組織へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を選択的に攻撃できることです。これは、従来の放射線治療では難しかった、再発がんや広範囲に広がったがんに対しても効果を発揮する可能性があります。
京都大学原子炉実験所の取り組み
鈴木教授らの研究グループは、京都大学原子炉実験所において、BNCTの臨床研究を精力的に進めています。彼らは、原子炉からの中性子源を用いたBNCTと、加速器を用いたBNCTの2つのアプローチで研究を行っています。
現在、再発悪性脳腫瘍に対する治験が進行中であり、BNCTの実用化に向けた大きな一歩を踏み出しています。
BNCTのメカニズム
BNCTの治療メカニズムは以下の通りです:
ホウ素化合物を患者に投与し、がん細胞に集積させる
中性子をがん部位に照射する
がん細胞内のホウ素原子が中性子を捕捉し、核反応を起こす
核反応によって生じたα粒子とリチウム原子核ががん細胞を破壊する
この過程で生じるα粒子とリチウム原子核の飛程(移動距離)は、それぞれ約9μmと約4μmと非常に短いため、周囲の正常細胞へのダメージを最小限に抑えることができます。
難治性がんへの挑戦
BNCTは、特に以下のような難治性がんに対して有望な治療法として期待されています:
再発悪性脳腫瘍
頭頸部がん(再発・残存)
肺や肝臓に多発転移したがん
胸膜中皮腫
これらのがんは、従来の放射線治療では対応が困難とされてきました。しかし、BNCTの特性を活かすことで、これらの難治性がんに対しても効果的な治療が可能になる可能性があります。
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