iPS細胞研究の最前線:原点から未来像へ


はじめに

iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見から10年以上が経過し、再生医療や創薬の分野で大きな期待を集めています。本記事では、iPS細胞の創始者である山中伸弥教授による講演内容を基に、iPS細胞研究の現状と未来像について詳しく解説します。

iPS細胞の原点:ES細胞

iPS細胞の原点とも言えるのが、ES細胞(胚性幹細胞)です。ES細胞は、受精卵が子宮に着床する直前の段階で取り出された細胞から作られます。

ES細胞の特徴

  1. 無限増殖能:理論上、無限に増殖することができる

  2. 分化全能性:体のあらゆる細胞に分化することができる

これらの特徴から、ES細胞は「万能細胞」とも呼ばれ、再生医療の分野で大きな期待を集めました。

ES細胞の課題

しかし、ES細胞には以下のような課題がありました:

  1. 倫理的問題:受精卵(胚)を使用するため、生命の萌芽を利用しているという倫理的な問題がある

  2. 拒絶反応:患者本人の細胞ではないため、移植時に拒絶反応が起こる可能性がある

これらの課題を克服するために、山中教授らは新たな方法を模索しました。

iPS細胞の誕生

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