「中国における創薬の歴史と未来 - 伝統中国医学からナノメディシンへ」
こんにちは、皆さん。今日は、中国・蘇州大学医学部のLi Zhao准教授による京都大学での特別講演「Drug discovery in China」についてお話しします。この講演は、中国における創薬の歴史と最新の研究動向を紹介する非常に興味深いものでした。
はじめに
Zhao准教授は講演の冒頭で、人類の歴史は病気との戦いの歴史でもあると述べました。がん、糖尿病、アルツハイマー病など、深刻な病気が人々の生命を脅かしています。そのため、効果的な薬の発見は、この病気との戦いに勝つために非常に重要です。
中国は、日本の西に位置する広大な国で、以下のような特徴があります:
総面積:約960万平方キロメートル
人口:約14億人
文明の歴史:5000年以上
中国は、最も早く医療文化を持った国の一つです。西洋医学とは異なるアプローチを取り、5000年の歴史の中で独自の医学理論を形成してきました。
中国医学の特徴
中国医学には、西洋医学とは異なるいくつかの独特な概念があります:
気(チー):生命エネルギーの概念
陰陽理論:相反する力のバランス
五行説:木、火、土、金、水の5元素による世界観
中国医学の処方は「漢方薬」と呼ばれ、主に自然由来の素材を使用します:
植物の葉、花、根、樹皮
動物の一部(熊の胆のうや亀の甲羅など)
鉱物(琥珀など)
興味深いことに、中国の医師たちは非常に毒性の高い物質さえも薬として使用することがありました。例えば、三酸化ヒ素は非常に毒性の高い化合物ですが、古代中国では白血病の治療に使用されていたそうです。
中国医学の歴史的文献
中国の医学者たちは、何世紀にもわたって薬草の特性と効能を記録し、多くの文献を残しました。その中でも最も古い文献の一つは、2000年以上前に編纂された「神農本草経」です。また、「傷寒論」と「本草綱目」は最も重要な古典とされ、現代の多くの中国の医師たちにも参照されています。
これらの書物には、5000種類以上の異なる薬草が記載されているそうです。
漢方薬の現代的な製造と流通
以前は、漢方薬を煎じて飲んだり、丸薬にして食べたりしていましたが、これは子供や西洋人にとっては難しい方法でした。この問題に対処するため、現在の漢方薬は通常、飲みやすい錠剤やカプセルの形で製造されています。
世界中で漢方薬を扱う薬局を見つけることができます:
北京:同仁堂(300年以上の歴史を持つ有名な漢方薬局)
香港:多くの伝統的な漢方薬局が存在
シンガポール:漢方薬を扱う薬局が多数存在
日本:マツモトキヨシなどの大手ドラッグストアでも100種類以上の漢方薬を販売
近代医学の発展と中国
19世紀初頭から、西洋諸国で近代医学が発展しました。伝統医学と近代医学の大きな違いは以下の点にあります:
伝統医学:植物や動物、鉱物からの粗抽出物を使用
近代医学:明確な構造と特性を持つ活性成分を使用
最初の近代薬は、1803年にドイツの化学者によってアヘンから分離されたモルヒネでした。これは非常に効果的な鎮痛剤で、現在でも病院で使用されています。
近代医学の発見は、科学的研究、スクリーニング、臨床試験、そして製薬会社による大量生産という過程を経ています。しかし、当時の中国人は「科学」や「研究」という概念をよく理解していませんでした。
その結果、中国の製薬産業は現在でも非常に弱い状態にあります。世界の製薬会社トップ50を見ると、アメリカが16社、スイスが8社、インドでさえ1社ありますが、中国は0社です。
中国における近代医学の breakthrough
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