物々交換のお話(2)
遺跡散歩をしていた。
今日は「下野谷遺跡」を、早朝に歩いていた。
西武新宿線の東伏見駅から徒歩約7分で到着する。
とても、綺麗に整備された公園であり、竪穴住居なども建てられ、見せ方に工夫されたところであった。
下野谷遺跡は、縄文中期の遺跡で、石神井川流域の遺跡群の拠点になっていたようである。
この公園には丁寧にパネルで、説明が書かれており、僕は読んでいて、驚いた。
え!神津島の黒曜石がここまでやってきたの!
神津島とは、伊豆諸島に浮かぶ島である。
調べてみると、神津島は、旧石器時代から黒曜石が産出して、大量に本州に送られていた。その流布範囲は広く、半径約180㎞まで広がっているという。
これだけ各地に点在しているのであれば、神津島の黒曜石は、物々交換の対象になっていたことが考えられる。
太古の昔に、海を越え、神津島へ渡った人間がいた。
そして、神津島で良質の黒曜石を発見した。
その良質な黒曜石は、交易の物品として大量に流出してゆく。
しかし、ここで忘れていけない盲点がひとつある。
もし、神津島が豊かな島であれば、渡った人は、本州と交易などする必要がなかったのではないだろうか。その島で幸せに暮らせばいい。
なぜ、危険な思いをして、黒曜石を本州に送らなければならないのか。
結論から言えば、神津島は安定して住める島ではなかった。
だから、安定させるために、黒曜石を運ぶ必要があった。
反対に考えてほしい。たとえば、自給自足ができるオールマイティーな人間は、交易などする必要がない。なぜなら、他者を頼らなくていいからだ。
となると、経済を動かしているのは、未熟な土地や人である必要がある。
たしかに、自分の生活を振り返った時に、僕は生きる基礎を何も知らない。
僕ができることと言えば、アクセサリーを作ったり・・・
生きる基礎とは、野菜の作り方、動物を殺し、肉を捌く方法、牛から乳をしぼり、放牧する方法など、食事を確保できること。
もし、無人島に、僕は解き放たれれば、飢えて死んでしまうだろう。
現代社会に生きる僕たちは、スマホなどの便利グッズに囲まれて、生活の質を向上させたように思っている。が、その代償に人間力(ここでは、自分一人でなんでもできる力)が失われている。
しかし、こうした未熟な人間を多く生産することが、経済力を活性化させるのに有用なのだろう。なぜなら、他のサービスや商品に頼らなければならないからである。
ふと、物々交換を考えているうちに、現在の経済について考えさせれる。
経済が発展すること。
つまり、人間力のない人たちが溢れかえることである。
AIなどができた時に、僕たちは思考は鈍ってゆく。しかし、一方で、経済は激しく展開する。そんな未来が見えてくるような気がする。