【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1845 ET 14.08.2023 “ウクライナ軍攻勢の状況及び北部でのロシア軍の動静”
8月14日、ウクライナ軍は戦線上の少なくとも2箇所で反攻作戦を実施した。また、ドネツィク・ザポリージャ州境地域での前進が伝えられている。ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は、ウクライナ軍がメリトポリ方向(ザポリージャ州西部)とベルジャンシク方向(ドネツィク州西部からザポリージャ州東部)で反攻作戦を続けたことを伝えた。マリャルはまた、ウロジャイネ(ヴェリカ・ノヴォシルカ南方9km)方面のスタロマヨルシケ(ヴェリカ・ノヴォシルカ南東9km)において、ウクライナ軍が一定の成功をおさめたことも伝えたが、その成功の具体的な内容は不明だ。マリャルが述べているところによると、ウクライナ軍はウロジャイネ内部で前進し続けているとのことで、ロシア側情報筋のなかにも、ウクライナ軍がこの集落の北側地区を制圧しているという主張がある。ウロジャイネ付近の防衛にあたっている「ヴォストーク」大隊指揮官アレクサンドル・ホダコフスキーは、ロシア軍は追加の予備戦力と砲兵大隊をこの地域に投入していないという不満を述べた。ホダコフスキーの主張によると、「ヴォストーク」大隊は投入可能な全戦力でウロジャイネ防衛戦にあたっているが、この地区で任務遂行中の戦力は消耗し、損失が続いているとのことだ。ISWは以前の評価分析において、ロシア軍は投入できる作戦予備に欠いており、部隊交替や追加の増援投入ができていないという見解と、それゆえにロシア軍防衛線は脆い可能性があるという見解を示した。一部のロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がザポリージャ州西部のロボチネ(オリヒウ南方13km)付近で反攻作戦を継続し、クリシチーウカ(バフムート南西7km)の集落内南側に進入したと主張した。マリャルはまた、ウクライナ軍がバフムート方面においてこの1週間で3平方kmの範囲分進撃できたことと、ウクライナ軍がこの方面で攻勢作戦を始めてからだと40平方kmの領土を解放したことも言及した。
8月14日、ロシア軍はクプヤンシク周辺で攻勢作戦を実施し、前進することができた。8月13日に流れた動画で、撮影地点が特定できるものによって、ロシア軍がオルリアンカ(クプヤンシク東方22km)付近とミコライウカ(クプヤンシク東方24km)付近で前進したことが分かる。ロシア軍西部部隊集団のセルゲイ・ジビンスキー報道官の主張によると、ロシア第6諸兵科連合軍(西部軍管区所属)の部隊が、ヴィルシャナ(クプヤンシク北東15km)付近にあるウクライナ軍陣地と監視哨を複数、制圧したとのことだ。複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がシンキウカ(クプヤンシク北東8km)からペトロパヴリウカ(クプヤンシク東方7km)までの線を押さえ、そこの陣地を占領し、この場所では陣地をめぐる戦闘が続いていると主張した。軍事ブロガーの一人は、ロシア軍が現在、クプヤンシクから約7km地点にいると主張している。ルガンスク人民共和国(LNR)の元内務次官ヴィタリー・キセレフは、ロシア軍がクプヤンシク郊外に直に接する位置にいるという似たような主張をしたが、ISWはこれらの主張を裏付ける映像を確認できていない。キセレフは、ロシア軍が近いうちにクプヤンシクを占領する可能性は低いとも主張し、その理由として、この都市のウクライナ軍の戦力内容と防御準備を挙げている。ロシア側情報筋の主張によると、ロシア軍はペトロパヴリウカ付近、シンキウカ付近、キスリウカ(クプヤンシク南東20km)付近で攻勢作戦を実施したとのことだ。ロシア国防省は、ウクライナ軍がペルショトラヴネヴェ(クプヤンシク東方21km)付近とマンキウカ(クプヤンシク東方約15km)付近で攻撃を仕掛けたが、失敗に終わったと主張した。ロシア軍事ブロガーの一人は、ロシア軍は増援戦力を集めつつ、クプヤンシク方面の戦闘に新部隊を投入していると主張した。また、ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は報告のなかで、ハルキウ州とベルゴロド州の境にある国際的に認められた国境沿いで、ロシア軍は地雷等の爆発性障害物の密度を高めており、おそらく親ウクライナ派による国境越え襲撃を阻止する意図だろうと述べている。