Russian Offensive Campaign Assessment, September 29, 2024, ISW ⬇️
増加するロシアの国防支出
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
報道によると、ロシア政府は2025年の国防支出をさらに増やす計画を進めているとのことだが、ロシア政府当局者は、社会支出の計画を強調して、国防支出増加に関する議論を避けている模様だ。ロシア連邦政府会議は9月29日に2025~2027年連邦予算案を承認した。また、この予算案は10月1日に連邦下院に提出される予定である。今回の予算案をみると、ロシアの連邦レベルでの歳入は2024年と比較した場合、2025年にはだいたい12%増になることが予期されており、連邦予算に占める石油・天然ガス収入の割合は、73%にまで拡大することが予期されている。9月23日にブルームバーグ通信は、この3カ年予算案の中身を確認したことを報じ、ロシア政府が2025年に13兆2,000億ルーブル(約1,400億米ドル)を国防支出に充てる計画であることが、この予算案から分かることを伝えた。この金額は、2024年国防支出として予定されている10兆4,000億ルーブル(約1,100億米ドル)よりも増加している。ブルームバーグ通信の報道によると、2025年にロシアは予算全体の約40%を、国防と国内治安に関する支出に充てる予定で、これは教育・健康医療・社会福祉政策・連邦レベルの経済政策に充てる支出の合計よりも多いとのことだ。また、クレムリンが機密費の支出を2024年の11兆1,000億ルーブル(約1,170億ドル)から増やすつもりでおり、2025年は12兆9,000億ルーブル(約1,360億ドル)に増額されることも報じられている。
ロシアのミハイル・ミシュスティン首相は9月24日に、政府が「国民に対する社会保障上のあらゆる義務」を満たす計画をもっていると主張し、医療・年金・国家的プロジェクトへの資金投入を計画していることを強調した。ロシア連邦財務相のアントン・シルアノフは、「かなり多くのリソース」がロシアの「特別軍事作戦」に振り向けられることを認めたうえで、6年間で40兆ルーブル(約4,240億米ドル)が19の国家的プロジェクトに充てられる予定であることを強調した。これは、2019年から2024年の期間に割り当てられて投入された金額の2倍になるということだ。シルアノフはまた、ロシアが公共インフラの近代化と住宅ローン優遇措置に1,800億ルーブル(約19億米ドル)を支出する計画であることも強調した。ロシア政府当局者が自国民の戦争疲れを懸念している可能性は高く、社会的なプロジェクトに政府が関心をもっていることを際立たせることで、戦争に対する世論の支持を維持しようと試みているものと思われる。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[14]~[17]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所