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【抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1950 ET 02.02.2024 “ロシア軍を利するウクライナ側の砲弾不足”

本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年2月2日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。

[*記事サムネイル画像:ロシア軍の攻撃で廃墟と化した2023年3月時点のマリインカ(ウクライナ外務省SNS投稿より)]

ロシア軍を利するウクライナ側の砲弾不足

報告書原文からの引用(英文)

Open-source investigations indicate that Russian forces are benefitting from Ukraine’s ammunition shortage and inability to conduct sufficient counterbattery warfare. Ukraine-based open-source organization Frontelligence Insight stated on February 1 that Russian forces previously established stationary artillery firing positions for long periods of time from late 2022 to early 2023 when ammunition shortages limited Ukrainian counterbattery warfare capabilities. Frontelligence stated that Russian forces began to concentrate their artillery in a similar way in January 2024, suggesting that Ukrainian forces are again running low on artillery ammunition. Frontelligence stated that Ukrainian forces can sometimes strike Russian artillery but overall lack adequate ammunition for effective counterbattery fire. Frontelligence stated that the lack of Ukrainian counterbattery fire allows Russian artillery to largely destroy settlements, making it nearly impossible for Ukrainian forces to defend the settlements. Frontelligence stated that many of Ukraine’s FPV drones lack the range to strike the numerous Russian artillery pieces deployed 15 to 24 kilometers from the frontline. Western and Ukrainian officials have recently highlighted Ukraine’s need for artillery ammunition. ISW continues to assess that artillery shortages and delays in Western security assistance will create uncertainty in Ukrainian operational plans and likely prompt Ukrainian forces to husband materiel, which may force Ukrainian forces to make tough decisions about prioritizing certain sectors of the front over sectors where limited territorial setbacks are least damaging.

Russian Offensive Campaign Assessment, February 2, 2024, ISW

日本語訳

ウクライナの砲弾不足と対砲兵戦遂行能力の不十分さがロシア軍を利していることが、公開情報調査によって示されている。

ウクライナを拠点とする公開情報調査組織「フロンテリジェンス・インサイト」(Frontelligence Insight)は2月1日付の投稿において、以前のことになるが2022年末から2023年初頭にかけて、ロシア軍が砲兵を長期にわたって固定的に配置していたと述べ、その当時、砲弾不足がウクライナ軍の対砲兵戦能力を制約していたと指摘した。フロンテリジェンス・インサイトによると、2024年1月にロシア軍は以前と同じように火砲の集結を行い始めており、この状況はウクライナ軍が再び砲弾欠乏状態にあることを示しているとのことだ。ウクライナ軍は時折、ロシア軍砲兵を打撃できているが、対砲兵射撃を効果的に行うための砲弾が、全体的にみて十分に無いことも、フロンテリジェンス・インサイトは指摘した。さらに、ウクライナ軍の対砲兵射撃の欠如が、ロシア軍砲兵による集落の大規模破壊を許容する結果になっており、ウクライナ軍の集落防衛をほぼ不可能にしていることも述べている。フロンテリジェンス・インサイトによると、大多数のロシア軍火砲は前線から15〜24km後方に配置されており、そのような火砲を攻撃するのに必要な航続距離が、ウクライナのFPVドローンには欠いているとのことだ。西側とウクライナの当局者は最近、ウクライナが砲弾を必要としていることを強調するようになっている。ISWの見解は以前と変わっていない。その一つは、砲兵力不足と西側の安全保障支援の遅延が、ウクライナの作戦計画内に、今後、不確実な要素を生じさせることになるという評価である。もう一つは、砲兵力不足と西側の安全保障支援の遅延が、ウクライナ軍の物資節約を促進させる可能性が高いというものだ。そして、後者の結果、ウクライナ軍は厳しい決断を迫られる可能性がある。この厳しい決断とは、戦線上のある特定の地区を優先するために、限定的な領土的後退による損失が最も少ない地区を犠牲にするという決断のことだ。

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