【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1545 ET 12.08.2023 “ウクライナ軍攻勢:南部戦線情勢”
ウクライナ軍がヘルソン州ドニプロ川東岸(左岸)での部隊展開を維持していることをロシア軍事ブロガーが認めており、これは過去のウクライナ軍襲撃の際と対照的である。しかし、ISW(戦争研究所)は、現在のウクライナ軍の展開が橋頭堡を成しているとは評価していない。クレムリン寄り軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍が小規模なドニプロ渡河襲撃を数日間行ったのち、コザチ・ラヘリの西に拠点を築いたと、8月11日夜に主張した。ロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍破壊工作・偵察グループがコザチ・ラヘリの西で活動し続けているが、この集落自体は今でもロシア支配下にあるということだ。これらの軍事ブロガーはまた、ウクライナ軍偵察グループがアントニウシキー大橋周辺とホラ・プリスタン地区での活動と、ドニプロ渡河襲撃の遂行を継続しているとも主張した。ウクライナ軍がドニプロ川東岸での部隊展開を維持していることをロシア側が繰り返し主張していることから、ウクライナ軍が半ば持続的な東岸拠点を築いたことをロシア軍が危惧していることが示唆される。ロシア側情報筋は、東岸で行動中のウクライナ軍グループは小規模で、主に軽歩兵部隊間で交戦しているという説明を続けている。東岸のウクライナ軍部隊が重装備や車両を保持していることを示すロシア側情報はまだない。なお、重装備や車両は、ヘルソン州東岸へと進むさらに広範な攻勢作戦を実施できるようにするのに必要な橋頭堡の確立にとって、間違いなく必要となるものだ。ロシア軍機械化部隊による反撃が効果的に行われた場合、このウクライナ軍前進拠点は脅威にさらされる可能性がある。しかし、反撃に必要な機械化予備をロシア軍がもっているのかどうかは不明だ。ISWはヘルソン州東岸におけるウクライナ軍の存在が持続的なものであることを裏付ける映像資料を確認するまで、またはそれができない限り、ヘルソン州東岸情勢に関して控えめな評価を示し続ける考えだ。ウクライナ軍がコザチ・ラヘリ周辺に持続的な拠点を確立した、もしくはかなりの人数の将兵を展開させたことを裏付ける映像資料を、ISWは今のところ確認していない。
8月12日、ウクライナ軍は戦線上の少なくとも2箇所で攻勢作戦を続け、情報によるとザポリージャ・ドネツィク州境沿いで戦術的に重要な前進を成し遂げたとのことだ。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はメリトポリ方向(ザポリージャ州西部)とベルジャンシク方向(ザポリージャ・ドネツィク州境地域)で攻勢作戦を続けたとのことだ。8月11日に公にされた動画で撮影場所が特定できるものに、ザポリージャ・ドネツィク州境地域のウロジャイネ(ヴェリカ・ノヴォシルカ南方9km)付近でウクライナ軍がわずかな戦果をあげた様子が示されている。8月12日遅くのロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍は激しい戦闘を数日間続けたのち、ウロジャイネの陣地を放棄したとのことだ。しかし、ISWはこの主張を裏付ける映像をまだ確認していない。ウロジャイネ地区の防衛にあたっているとされる「ヴォストーク」志願兵大隊は、対砲兵攻撃能力に関する以前から存在する問題をロシア軍が解決できなければ、ウロジャイネは失われることになるかもしれないという懸念を、すでに表明していた。ロシア軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍がザポリージャ州西部のロシア側通信を妨害するために電子戦システムを効果的に使っており、またウクライナ軍は、この地域のロシア軍への阻止攻撃遂行を支えるための大量の砲弾と精密誘導弾頭のストックを確保していると主張した。この軍事ブロガーはまた、HIMARSロケット砲を用いる際の目標特定と攻撃までの時間間隔をウクライナ軍がかなり短縮させていると主張し、ウクライナ軍の攻撃から身を守るには、ロシア軍はザポリージャ州西部において、前線から10km以上離れた位置に移動する必要があると警告した。
参考:
戦争研究所 ウクライナ戦況インタラクティブ・マップ