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「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_13191352.png13日のテレビ報道で、週末12日夜の東京と大阪での繁華街の人出が、一週間前と比べて多くなっている深刻な事実が指摘された。渋谷駅周辺で約24%、新橋で約11%、なんばで約21%、梅田で約19%も増加している。年末の最も人出が多い季節であり、ボーナスも支給され忘年会が盛り上がるハイテンションな時期だから、繁華街が賑わうのは例年なら自然な現象だが、大阪では知事が不要不急の外出自粛を要請した非常時であり、東京でも午後10時までの時短営業が要請されている最中である。「Agoop」が計測した時刻は午後10時なので、渋谷も新橋も、本来なら時短に応じていなければならない飲食店が要請を無視して深夜まで営業していることを意味する。大阪も同じだろう。感染が拡大して医療崩壊の危機が叫ばれている中で、逆に繁華街に密集する人数が増え、飲食店で会食し接触する人数が増えている。このリスクの増分は確実に新規感染者の増分となって跳ね返る。

「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_13213928.pngなぜこんなことが起きているのだろう。要因の一つとして推測されるのが、マスコミは報道しないが、GoToイートのキャンペーンの影響だ。コロナ禍の第3波が大都市で始まって、2、3週間前だったか、GoToイートのポイント利用凍結とか新規販売の停止の話がニュースで出ていてので、てっきりGoToイートは中断されているものとばかり思っていた。サイトを確認すると、今でも堂々と継続中で、10.000円の食事券の購入で12.500円分が使えると宣伝している。渋谷や新橋の路上に密集している者たちは、GoToイートの利用客のラッシュであり、「普段より店が空いていて、値段も超割安なので最高だね」という満足感なのだろう。ポイント消化に精を出しているツイートが散見される。呆れるしかないが、こういう大衆の動機が大都市の夜の繁華街の人出増に繋がり、感染拡大増に直結していることは間違いない。現在、感染経路については半数近くが経路不明という説明になっている。だが、不明などということはなく、物理的にウィルスが伝播した現場がある。


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_14215683.png12日夜のテレビ番組に出演した吉村洋文は、感染拡大の原因は飲食であると率直に認めていた。保健医療部から上がってくるデータが証明しているのだろう。12月9日付の京都新聞の記事でも、「感染経路7割は家庭内や飲食」と書いている。人数の多い宴会型の「会食」とは別に、2人とか3人の日常の「飲食」の機会でも、そこが感染経路になっているのである。ということは、GoToトラベルだけでなくGoToイートもまさに感染拡大を促進するエンジンの役割を果たしていて、これこそ感染3波の元凶だと指弾できるはずだ。13日夜、NHKスペシャルで久しぶりにコロナ特集があり、東京女子医大の病棟で働く看護師の姿を撮していた。彼女は、10か月間ずっと防護服とガスマスクで重症者の治療に当たっていて、自宅に帰れず、ホテルに泊まってコンビニ弁当を夜食にする生活を送っている。23歳と若いが、心と体が折れて現場に出られなくなる日が来るかもしれないと語っていた。彼女の目から、渋谷や新橋で師走の夜を満喫しているGoToイート利用者たちはどう見えるだろう。


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_14150277.png「マスク会食」を勧める尾身茂の非科学的妄言を見てどう思っているだろう。腐れ爛れた日本の欺瞞と虚弊の前に苛立ってどうしようもない。コロナ禍で仕事を解雇されて失業者はどんどん増えている。11月の自殺者は前年比11%増となり、女性は19%増で、30-40歳代女性の自殺者が倍増していると言う。コロナ禍での経済縮小によって弱者に絶望的なしわ寄せが来ている。住宅ローンの返済逼迫で家計相談の件数が3倍になっている。第1波の後、横浜だったか、購入して間もないマイホームを手放す自営業の若い家族をNHKの7時のニュースで放送していた。淡々と撮っていたが、小さな子どものいる夫婦はどれほど断腸の思いだっただろう。そういう人たちがたくさんいる。そんな中で、得だからとGoToトラベルを使い倒す人間がのべ5260万人もいて、ウィルスが充満し集積する核エリアだと分析され警告されている渋谷や新橋に繰り出して、気儘に飲食を享楽する若者や中年が大勢いる。自分だけは大丈夫と緩怠して市中感染の拡大に寄与している。


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_14263250.png奇妙であり、不愉快で気分が悪くなる社会の光景だ。日本はこんな国ではなかった。もっと良識とモラルの生きた国であり、中産階級(=国民)が自分と同じ中産階級の他者の暮らしを案じ、過酷な立場に置かれた者に無視や放置や等閑の態度はできず、そうした国民の心情や意思がNHKのニュースの原稿となって代弁される社会だった。美智子皇后とか黒柳徹子とか、この国の最高の生まれ育ちの位置にあったお嬢様でも、厳しい境遇に置かれた庶民の気持ちや暮らしが分かり、感覚や意識がよく全体に共有され、矛盾や不条理を改善する方向へと政府や政治の姿勢が傾く国だった。25条が倫理として内面化された社会だった。こんな滅茶苦茶な無知とエゴイズムの国ではなかった。西村康稔が言う「勝負の3週間」にはどうやら裏の意味がある。その本音が薄々察知できるようになった。この「勝負の3週間」の意味は、行動を自粛し我慢して感染を減らそうという意味ではないのだ。年末年始には都市封鎖になるかもしれないから、その前に大いに営業と飲食の活動をせよという意味だ。


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_14363010.png実際、外に出て街を歩くと、そういう商売と消費に前掛かりになった気配が濃厚に漂っている。消費者の側は、ロックダウンになって店が閉鎖されたら買い物ができなくなるから、今のうちにと焦って買い物行動に出ている(妊婦まで出歩いているのを目撃した)。店舗の側は、同様に緊急事態宣言が出されたら商売が止まってしまうので、今のうちにとバーゲンセールで客を呼び込んで冬物商品を捌き尽くそうと努めている。売る側買う側の両方に静かな焦燥感があり、GoToを利用する利己主義市民も今のうちにという駆け込みの動機がはたらいている。「勝負の3週間」というのは、売る側と買う側にアクセラレーションとモメンタムを仕込んだ政府の狡猾な政策だった。「勝負の3週間」はGoToとセットになった扇動のキャンペーン策であり、経済活動を活性化させる狙いに基づいていたのが真相だと看破できる。感染拡大を阻止することが目的ではないのだ。それは口実であり、偽りの題目である。感染拡大を防止するのが目的なら、「勝負の3週間」はGoToを中止にしないといけない。


「勝負の3週間」の真実 - 都市封鎖を示唆して駆け込み消費を煽った経済刺激策_c0315619_14324734.png「勝負の3週間」は11月下旬の3連休直後に設定されたが、当時、政府筋がマスコミに流していたのは、企業の仕事納めを前倒しし、仕事始めを遅らせ、長い年末年始休暇にして、その間をロックダウン状態にして感染収束を図るというプランだった。最近は続報が絶えて聞こえないが、そういう観測気球のリーク情報があった。上からその類の話が漏れ伝わると、当然、事業者の側は早めの販促と売上回収に奔るし、消費者も早めの購買行動に駆り立てられる。結果的に、「勝負の3週間」は巧く人を釣り、人の移動往来を活発にし、経済活動を活性化させ、そして第3波の感染を急増させ激化させる進行となった。医療崩壊が起きるのは当然の帰結だが、政府はそれを全く顧慮しておらず憂惧していない。野党も何も動かない。不思議で異常な眼前の状況だが、それに待ったをかける正義の壮士が登場しない。マスコミ(松原耕二など)と専門家(松本哲哉など)は、第1波のときと同じく、コロナ禍を視聴率のネタにして日々の稼ぎに興じている。弱者の不幸を踏み台にして浮薄にゼニ儲けしているとしか見えない。


13日夜のNHKスペシャルに出た西浦博の数理予測では、これから相当に強い制御措置を講じたとしても、重症患者の減少は緩いカーブを描くだけという試算結果になっていた。西浦博が演算に想定した「制御装置」が、GoTo全面中止なのか、緊急事態宣言なのか、中身は不明だが、誰が考えてもこのままでは感染者も重症者も減らないことは確実だ。日本中が恐怖で凍りつく年末年始を覚悟しないといけないだろう。「勝負の3週間」のキャッチコピーは、「経済を回す」ためのアジテーション工作だった。


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