疎遠の父が死んだ
世間一般で言う毒親だったと思う。コミュニケーションも上手くなく、子供には同じようなことしか言ってない記憶しかない。中学、高校の時は、酒癖が悪く母に暴力を振るってた。母も気が強くやり返すから、喧嘩が絶えなかった。そして、自分が高校を卒業するか、しないかのタイミングで離婚した。
その後、私は実家から出たい一心で専門学校に行き故郷を出た。
専門学校を卒業するときに一度親父に会ったが、その後は10数年会うことはなかった。
久しぶりの再開は親父が精神病棟に入院した時だった。アル中が酷く被害妄想や幻覚症状などがあり、自殺未遂を2度行ったらしい。弟が実家に住んでいたこともあり、面倒はそちらが見ていた。言葉を変えれば弟に面倒を押し付けたとも言える。
その後、また10年は会うことがなかった。次に会ったのは余命宣告を受けた後だった。精神病棟から出ることなく、悪性リンパ腫になり、寝たきりになっていた。話すことなんてないが適当なことをしゃべった。何を話したか覚えていないほど、その場しのぎの会話をした。その15日後に死んだ。
通夜や葬儀を行った。なんの感情も抱かなかった。火葬後もなにも思わなかった。血のつながった他人なんだと思った。その翌日は遺留品の整理を行った。精神病棟に入った時の日記があったが、少し見て読むのを止めた。自分の親がどうだったかと理解することから逃げた。今更、亡くなった人間を理解して嫌な思いをする必要はない。
これを書いているのは葬儀が終わった3週間後だ。時間が経てば何かしらの感情が湧くかと思ったが何の変化もない。
自分が変なのかと少し気にしたが、思春期の嫌な日常と、その後20数年で3度しか会わなければ、嫌悪はしていたとしても情がわかないのは当たり前だと気持ちを消化した。
周りは親を大事にしろだの、面倒を見ることは当たり前だの言うが、私みたいな親不幸な人間もいるので、同じようなことで悩んでいる人がいたら安心して欲しい。