愛山の日本酒を1ヶ月かけて飲み比べしてみた(その2:1回戦)
愛山という酒米を使ってつくられた日本酒の、トーナメント形式による飲み比べ。今回は第1回戦の報告(2020年9月実施)
第1試合:たかちよvs日高見
1回戦第1試合は、新潟のお酒にしては甘味のある印象があるたかちよ(高千代)と、世界三大漁場・三陸は石巻の日高見。作り方で特筆する点は、たかちよが扁平精米で77%の精米歩合の純米酒、日高見は純米吟醸です。
たかちよは口に含んだ瞬間の酸っぱい酸味が印象的。酸っぱい+甘旨ジューシー。
日高見は甘み旨味を品良く生かしている中、もう少しすっきり感が出たら面白かったかなあという印象です。
結果的に個性の強いたかちよに軍配を挙げましたが、日高見も十分美味しく、同銘柄でお米や造り方の違いで飲み比べるのも面白そうだなと思いました。
第2試合:二兎vs鶴齢
ウサギが可愛い愛知県三河地方の二兎と、新潟のお酒の中ではしっかり重厚な酒造りの印象がある鶴齢。二兎は精米48%の純米大吟醸、鶴齢は精米57%の純米吟醸で、多分どちらも火入れかと。
二兎は口に含んだ瞬間に苦味を感じるものの、許容範囲内で悪い苦味ではない(舌の調子によるかも)やや軽やかな印象で愛山っぽい甘みはさほど感じない…この辺はつい生原酒の印象と比較してしまいます。
鶴齢は想像より軽く感じたけれど、甘みの引き出し方が絶妙に美しく、上手に出来てるなあ〜と感心しました。
ということで鶴齢が準決勝進出。二兎は開栓直後の固さがあるかもしれないので、経過観察が楽しみです。
第3試合:武勇vs雨後の月
水戸出張の帰りの電車待ちでよく燗酒を飲んでいた茨城県の武勇と、とびしま海道へ自転車で渡る前によく蔵を眺めに行った広島県の雨後の月。武勇は精米70%で1年熟成の純米酒、雨後の月は精米50%の純米大吟醸です。
武勇は口に含んだ瞬間、無骨な熟成感のある旨味を感じ、武勇らしいなあ〜とニヤニヤしてしまいます。少し温度が上がると酸っぱめな酸味を感じましたが、これは生酛づくりに由来するようです。
雨後の月は比較的スッキリとした印象で、温度が少し上がったところで上品な甘みが際立ちました。
それぞれ酒造りの方向性が大きく異なるので、どちらが美味いかという判定は困難ですが、「愛山ポイント」を考慮して雨後の月が準決勝進出。
第4試合:羽根屋vs十六代九郎右衛門
愛山初チャレンジの富山の羽根屋と、複数のアイヤマニアの方からご推薦いただいた長野の十六代九郎右衛門。どちらも純米吟醸の生原酒で、十六代九郎右衛門は生酛造りです。
羽根屋は愛山っぽさという意味ではわかりやすい、甘旨ジューシーな方向性でありながら、品良く重過ぎないバランスの良さでどんどん杯が進んでいきます。愛山らしさとトータルバランスの良さの両立という点では、今回飲んだ中で一番良いかも?
十六代九郎右衛門は、生酛らしい酸味やミルキー感が印象的で、やや抑えめな甘旨感とのバランスが取れていて、これも美味い。
なんだか事実上の決勝戦を見ているようで、どちらを選ぶか悩ましいのですが、トータルバランスで愛山らしさと上手さを感じる羽根屋を準決勝進出としました。
総評
第1回戦が終了して感じたことは、開栓直後で固さを感じるお酒など、ポテンシャルを発揮しきれてないタイプにはやや不利だったかなという印象です。
これを踏まえて、このトーナメントと並行して敗者復活戦を行い、ポテンシャルが発揮しきれていない日本酒のフォローアップを行うこととしました。