2020年のゆく音くる音
新型コロナウィルスという問題が世界に大きな影響を及ぼすこととなり、いまだに先が見えないままの2020年。この1年、自分の生活の側にあった音楽体験の断片について、コロナの影響も交えた備忘録としてまとめてみました。
なお、昨年は大小あわせて30くらいの生演奏を見ましたが、今年は3つとなっています。
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■1月
【GEZAN】
2020年は令和の反抗の音楽の新作から始まった。
頭脳警察あたりから連綿と続く、日本のパンクロックの歴史を丸呑みしてさらに進化したようなミクスチャーロック。
この頃はまだ、2020年がこんなにも不自由な世界になるとは思ってもみなかった。
【オリジナルラブ×コーネリアス×中村佳穂BAND】
プログレ好きの友人と見に行ったライブ。
各グループのリーダーだけでなく、若い頃結構聞いてた音楽家たち4~5人くらいが脇を固めてて、自分にとってドリームチームみたいなライブ。
1月下旬だったので、コロナはまだ対岸の火事。
■2月
【ノナカエイ×Buffalo Daughter with フェルナンドカブサッキ】
2月に思い立って山梨まで行った先で、女装をした国立音大の先生がサントゥールという民族楽器を演奏する前衛的なライブに遭遇した。終演後はBuffalo Daughterのメンバーやアルゼンチンの至宝=カブサッキさんにサインを貰えて感無量。
コロナが気になりはじめ、外出することに迷いが出はじめた時期。このあたりから、ライブハウスは閉鎖や公演の中止を余儀なくされていく。
2月~3月の週末は、中国や横浜に停泊した客船のコロナの影響でガラガラになった横浜中華街に敢えて行き、カフェでパソコン仕事をしていた。
■3月
【cero】
有料の配信ライブにいち早く取り組んだグループ。
いまの20代後半から30代半ばの音楽家たちの中に、グループをいくつも掛け持ちしたりユニットを組んだりしている、かなり自由度の高い交流を行っているネットワークがあって、このネットワークが出来る起点となったのがceroらしい。このグループのバックミュージシャンから交流ををどんどん辿ってゆくと、芋づる式のように面白い音楽や音楽家を見つけることが出来る。
【小野リサ】
J-Waveのサウジ・サウダージという番組で、産休中の滝川クリステルの代打に抜擢されたのが小野リサさんだった。
ラジオパーソナリティとしての声、曲の解説、ブラジルのミュージシャンと交流したときのエピソードなどどれも素晴らしく、最終回ではスタジオライブを披露してくれた。
東京オリンピックの開催延期が決まり、新型コロナウィルスで著名人が亡くなるニュースが流れる。3月31日は出張先の館山で年度納の打ち上げをやろうと企んでいたが、そんな気にもなれずに中止にする。南房総地域は前年の台風被害とコロナのダブルパンチの影響がかなり心配でもある。
■4月
【Joao Donato】
事前に予約していたジョアン・ドナート、カルロス・リラ、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリといったボサノヴァ聡明期から活躍する巨匠が集結するライブが中止となる。
その他、事前にチケットを抑えていたた3公演が3月~4月で中止になる他、予約してないものだとバート・バカラックやボブ・ディランという超大御所や、少し気になっていたEverything But The Girlのベン・ワットのライブなどが中止となる。
緊急事態宣言の発令を受け、仕事は完全に自宅勤務となった。計画していた食事会やGWの広島遠征もすべてキャンセル。普段の食事は自炊中心となり、スーパーへの買い出しは週1〜2回に限定する。その代わり近所の農家の直売所に通うようになり、ハマッ子野菜の美味さに驚愕する。
■5月
【sasuke】
昨年見たライブのゲスト出演のパフォーマンスで知った、17歳の天才音楽家sasukeくん。彼の配信ライブの当日は、配信トラブルで後日仕切り直しになった。配信ライブの主催者側も手探りなところもあり、映像・音響などの面で苦労しているのが垣間見えた時期。
仕事の方は、ゴールデンウィーク明けから交代での週2回の出社が始まった。
■6月
【オニキユウジ】
仕事は時差出勤での出社が始まり、仙台出張などの仕事での外出も徐々にはじまる。私生活では自転車による長距離移動を解禁する。
下北沢のレコード屋Disc Shop Zeroが店主急遽とコロナの影響により閉店することになり、横浜から自転車で買いに行った。
山のようにあるレコードやCDの中から発掘した今回一番のお目当て、オニキユウジさんの"Woodstock"のクレジットには、広島で知り合ったライブオーガナイザーのお名前を発見した。
■7月・8月
【野村訓市】
コロナの影響により、ラジオを聴く機会が増えた気がする。特に野村訓市さんという人の番組は、選曲と落ち着いた語り口が良いのでよく聞いている。
日本最大級の音楽フェス・フジロックの開催が中止となり、初回からずっと参加していた訓市さんはそのことについて何度か嘆いていた。
人の少ない近場の海に行ってみようということになり、隣県の宇佐美に行くことになる。図らずしもGOTOトラベルの開始時期と重なり、宿泊費が割引となる。
■9月
【中村佳穂】
映像作家と構成や意匠が練られCGも効果的に使われた、今年見た中でも郡を抜いて創造性に溢れた配信ライブ。
事前に録画したものを流していたのだけど、リアルタイムで起こる配信トラブルを考えるとそれでいいと思う。配信期間は2週間くらいあると、何度も映像を噛み締めて見れるのでありがたい。
【ラブリーサマーちゃん】
昨年たまたまライブで見たピチピチロックギャルの、UKロックにインスパイアされて出来た痛快な新作。
ステージ以外では素顔を晒さないことにしているとのことで、インタビューの写真もマスク着用。
「ラブリーサマーちゃん」という変わった芸名は、本人の名前を英語にしたもの。また、彼女のおじいさまは作曲家のいずみたくさんだそうです。
【Saigenji】
ライブハウスもコロナに気をつけながら少しずつ営業を開始するところが出始めてきた。
コロナによる行動制約が生じた中、唯一行ったライブが南米音楽をルーツに持つ音楽家・Saigenjiさんのモーションブルー横浜でのライブ。
ライブを渇望して行ったというよりは、長年音楽を聞きながら生きてきた人間としての義務感に駆られて行ったという部分が大きい。
■10月
【西尾賢】
かなりトリッキーでユニークなパフォーマンスを行うピアニスト、西尾賢さん(ソボブキ)の1stアルバムの販売と配信が終了することになり、仙台出張のついでに顔馴染みのレコード屋Volume1に立ち寄り購入。首都圏から来た人間が仙台の店にノコノコと顔出して良いものだろうかとずっと躊躇っていたので、店主のヤッシーさんに暖かく迎えて貰えてホッとした。
【stico】
配信ライブで見つけた、チャップマンスティックという太刀魚みたいな変な形した弦楽器で変な音を鳴らすフロントマンのお姉さんがカッコイイ、プログレファンクみたいなグループ。
このお姉さんは、普段はbaseball bearというわりとキャッチーなロックをやってるバンドでベースを弾いてる人だった。
【The Orb】
今年最も気になっていた、アンビエントテクノの巨匠The Orbとモロッコの民族音楽集団との共演が中止になった。
The Orbが参加予定だった掛川の音楽フェスは、日本人の音楽家を中心に可能な範囲での海外ゲストを迎えて開催した模様。
■11月
【リーガルリリー】
なんのこっちゃい西山さんという一部で有名なライブジャンキーの方が激推ししてた、22歳くらいの3人組女の子バンド。素朴な風貌のギター&ボーカルの子が物凄い歌と演奏を見せる、最終兵器彼女みたいなオルタナティブロック。米軍基地のある福生育ちということもあり、戦闘機や催涙弾と言った言葉など、いろいろと想像力を掻き立てる歌詞も良い。
プラネタリウムでの配信ライブは、彼女らの歌の世界観とマッチしていて素晴らしかった。
■12月
【ケセランパサラン】
数年前の9月21日(アース・ウィンド&ファイアーのセプテンバーの日)に北千住の居酒屋の投げ銭ライブで出会ったアコースティック・デュオ。制作費をサポートした新作のアルバムが家に届いた。1曲目のストリングスの音色から印象的な全体的にやや落ち着いたトーンを纏った内容。愛子さんと浩道さんがいまケセパサが届ける音楽は何だろうか?ということを自問自答しながら制作されたのかなと想像しながら聞いている。
【リーガルリリー】
東京での1日の感染者数が600人を超えたというニュースが飛び交う中、Zepp Tokyoで開催されたリーガルリリーのライブを観賞。感染症対策として、来場者の事前記帳、消毒、検温、換気、ソーシャルディスタンスな座席指定、分散での入退場など、手間のかかる配慮に取組んでいただきありがたかった。私も厳戒体制を自分に課し、ソニックユースのマスクを一度も外すことなく観賞する。
はじめてライブで見たリーガルリリーはベース&ドラムの存在感がより際立ち、特にオリジナルメンバーのゆきやまさんのドラムが印象的だった。本格的なオルタナティブロックの系譜を継ぐ演奏である一方、たかはしほのかさんの歌声と言葉があわさることで、それとは違った日常とファンタジーの狭間の世界に連れて行かれたような感覚に陥った。
【MISIA】
昨年の紅白ではトリを務め、他の出演者を圧倒するくらいぶっちぎりで最高のステージを見せたMISIAが骨折。
無理をしないで貰いたいけど、紅白に出れるかどうかは少し気になる。
■おわりに
今年1年を通じて、配信ライブの可能性やあり方というのか関心事となった。配信ライブの利点は、普段ライブは行きたくても行けないという人が自分も含めてかなりいると考えられ、それがビジネスチャンスとしての大きな潜在需要になると思われる。一方で、著名な音楽家とそうでない人との収益格差や、配信ライブとあまり相性のよくない音楽家(例えば音楽教室が主な収益だった人、ブライダルやイベントでの生演奏を生業としている人など)は多く存在するであろうことなど、懸念事項も浮かんで来る。この辺については、今後の動向も気にしてみたい。
配信方法や価格については、収録済みのものを配信し、配信期間は2週間程度、価格の上限は4,000円程度が良いのかなと主観的には思う。3,000円を超えると「相当自信があるんだな」と思ったりはする。こちらについても、いろんな人の意見にも触れてみたい。