IN THE MUSIC制作記
2020/4/15にデジタルシングルで「IN THE MUSIC」という曲をリリースしました。
この曲はビートも自分なので、主にビートを作ったときのことと、リリックの内容について書きます。
あ、その前に、ジャケットの話を。
アートワークについて
前回のFRESH feat.Sequickのときもそうなんですが、今回も自分の写真を使ってデザインも自分でしました。自分のアートワークを自分でやるっていうのが、一番ストレスがなくて自分には合っているように感じます。(もちろん過去作の他の方にやってもらったときのケミストリーも好きなんですが、割とこだわりが強いので、納得できるものができあがるまでに時間がかかってしまいますし。)
この写真、いつだったか定かじゃないですが、2、3年前の渋谷の朝の5時過ぎです。毎月Organ barでレギュラーでやらせてもらってるMIXX BEAUTYの帰り道、公園通りを渋谷駅に向かって歩いていると、こんな場所に遭遇しました。それですぐにパシャッと写真を撮ったのです。
結構気に入っています。もうこの場所はないですが、こんな風に良くも悪くも都会の街はすぐに変わるから、一期一会感がおもしろいです。
ちなみに、FRESHの写真は電車の中から窓越しにパノラマモードで撮影しました。Olympusの初代μというフィルムカメラです。今はもう壊れてしまったのですが、パノラマ撮影モードが付いていてすごく好きでしたね。
話をもどして、今回のIN THE MUSICのジャケット、シンプルで気に入っています。写真、タイトル、っていう少なめの要素が気に入っています。
曲について
作り始めたのは5年前くらいでしょうか。結構ライブでもやってるので、そのくらいたってるかもしれません。ですから、ちょっと自分でも記憶があやふやなところもありますが、とりあえず行きましょうか。
ビートについて
メインのシンセはKORG POLY-61で弾きました。渋谷のえちごやさんで買いました。まだ店長がMIC.B A.K.A 73PIKE SET. くんのころです。確か、そのときちょっと音楽仕事で臨時収入があったので、衝動買いしたはずです。
このシンセの柔らかい音が好きで、このころ結構使ってたのですが(SHINOくんに提供した曲とかでも使ってたり)、最近売ってしまいました。重量がかなり重く大きいので、あまり便利ではないのと、パラメーターがすべてボタンなので、使い勝手が悪く、好みの音色を作るのに時間がかかりすぎるのが理由です。見た目は好きなんですけどね。
ベースは最近の自分の楽曲では珍しくエレキベースではなく、シンセです。
Logic純正のシンセベースを加工しつつ使っています。自分はシンセベースだと弾き過ぎなくなるので、こういうハットが常になっているビートにはちょうど良いかなと。こまかいゴーストノートは入れつつもですけどね。
ピアノもLogic純正を加工して、水がはねるような音を意識しました。エコーやらリバーブやらオーバードライブやらをかけています。割となんにでもオーバードライブかけたくなります。(ギターとベース以外は)
ギターは愛用しているFender Mexicoのストラト。70年代を意識した作りのギターだそうです。ラージヘッドっていうタイプ。僕は手が大きくないので、ストラトは弾きにくいなと思っていますが、カッティングや、堅めの音が欲しいときはこのギターを使います。ライン直で録音してエフェクトはすべてLogicの中で後からかけています。(トム・ミッシュもその手法だとか)
ドラムはiPhoneアプリのBeatMaker2で大枠を作ってからWAVでLogicにインポート。
もしかしたら、そこからLogicのMIDIで弾き直したかもしれません。ちょっと記憶があいまい。808系の音ですね。
そんなところですかね。トラック数も少なめな気がします。
このビートができてすぐに、MIXもせずインスタにUPしたら、grooveman Spotことコウジさんがナイススロージャム!みたいなコメントをくれて嬉しかったです。
リリックについて
基本的には音楽を聴いているときだったり(前半)、作っているときだったり(後半)の話です。
書いていたときは、日本でストリーミングが普及するかしないかのころで、まだ配信インフラが整ってはなくて、でも、早い人(海外至上主義の人たち)はもうCDはいらないし、レコードも終わるみたいなことを言い出していて、それと同時に、「いや、そんなことはない」みたいな人たちもいて、SNSでよく目にしました。
「愛憎深まって黒い溝に溶けてダイブ
旨いコーヒーみたいにブレンドOKなタイプ」
この部分は、そういう人たちが論争してるをSNSで見て、結局みんな音楽が好きな人たちに変わりはないんだから、うまく交わったら良いなという気持ちで書きました。
コーヒーは違う豆同士をブレンドしておいしくなるし、音楽も、人も、排他的でなくなってほしいなと思います。
「まるでMAD MAX 何歳でもいけるはず」
このころ「MAD MAX 怒りのデスロード」が上映。ご多分に漏れずめちゃくちゃ感動しました。監督のジョージ・ミラー氏は60歳を越えて、この作品を作ったんだというところに、えらく感銘をうけました。特に日本ではアーティストは若く売れないと評価されにくいですが、この映画を観て「オレだってやってやる!」と思ったのを覚えています。
「マニュアルでもオートでも
何をつかむかが肝心なピント」
このときはもう写真家を名乗っており、毎日のように写真を撮ったり、観たりしていたんですが(昨今のフィルムブームの前です)、あんまり情報がなくて検索しまくってたら、どうにもひっかかることに気づいたんです。それが「一眼レフでやたら背景をぼかす撮影方法」です。あらゆるサイトでこれこそがイケてるみたいになってて、それが、自分にはまさにピントこず。。。「いや、ださいでしょ。むしろ下品でしょ」って思っていました。今も若干そう思います。
これってネット上に無数にあるTipsっていうか、How toっていうか、音楽制作でも、楽器演奏でも同じことが言えるんですけど、「ミキシングで大事なことは○○で〜」とか、偉そうに書いてあって、興味を持って読み進めて、最後にその人が作った曲を聴いてみると「うわ!かっこわるい!クソじゃん」みたいな(笑)。
大事なのはそこじゃないんだよな。って良く思います。そういう歌詞。
「きっと蛇口捻った水 みたいなMUSIC
よりレモン絞ったり 感じたい音の粒子」
これも、先述したストリーミング論争の話なんですけど、誰かがmp3を「蛇口捻った水」って例えてて、レコードで聴く音楽を「レモン絞って入れてある水」って例えていたのを聴いて、確かに!と。
一長一短で、水道水もレモン絞ってある美味しい水も、適材適所で、必要なんですが、この曲で歌ってるのは「クラブのフロアで聴く音楽」のことです。自分はレコードの音の方がこの場所では好きだなって。
「渡る世間なんて斜めにマニュアルで横断
感覚と経験 磨いたセンスがノウハウ」
マニュアルってスケボー用語で「前輪や後輪だけで滑る」ってことです。スケボー乗らない人にわかりやすく言うなら「ウイリー」ってやつです。
道でプッシュしてる(スケートをこぐこと)と、横断歩道とか、道路標識とかの白線の上にくると、この「マニュアル」したくなるんですよ。スケーターはみんなそうだと思います。
道路標識の「決められた常識的な使い方」ではないんですが、楽しいんです。
つまり、常識にとらわれることなく、感覚と経験で世間の荒波を渡っていこうかなっていう意味です。(世代的にマニュアルといえばブランドン・ビーブル。)
「「どうかしてる」なんて言う奴がどうかしてる
聞く耳ばっか貸してたならまた背景と同化してる」
これも似たような話で、識者が偉そうに言ってくることばかり気にしてたら、「自分の考えやアート」なんて簡単になくなっちゃうよなって。
「この写真はピントが合っていない」とか、「音が割れてる」とか、「絵が下手」とか、そういうのってアートの良さとは別問題だし、音楽に関しては本当にそう信じています。
音が悪くても、ジャケがいまいちでも、シンガーがルックスがいまいちでも、良い物は良いって思います。
「この瞬間が蟻ならこの音は角砂糖」
多幸感を、アリと例えるなら、音楽は角砂糖。
つまり、あったら絶対くっついていたいみたいなメタファー。
意味通じるかな? ま、通じなくてもいいか。
歌詞も深く味わってもらえたら嬉しいです。