空洞
中身は空洞なのに そうではない顔をして生きていける人間は
果たして欠陥なのでしょうか
生物として供えられた優れた機能なのでしょうか
あの子がいない 日常が はじまりました
もういないから 日常ではないのに
時間が日常をおしつけてくるから
わたしは みなの日常に従ってみせる
電車に乗って いつもとおなじ顔をしてると
からっぽが からっぽだよと主張する
あの子が埋めてくれてたんだね
わたしの いちぶ
わたしは かなしい
でも かなしいのは わたしだけじゃない
なぐさめに いろんな人の いとおしい子との別れを ききました
身近でなくしてる人のことを思い出して わたしだけじゃないといいきかせました
それで わたしの かなしみも 喪失も
だれかのものになんてならないのに
まわりを見回して想像する
あの人も こどものころから家族のわんこをなくしてるかも 大型犬かな
あの人は 実家においてきて そのままお別れしたかもしれない
そうして わたしは みなのかなしみを望んでいることに気づいた
空洞をのぞいて 奥にみえたのは
醜悪なわたしでした
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