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【忘れられる前に何か出さなきゃ】小説神髄、要約。

緒言

日本は古来より物語の創作が盛んに行われてきた。小説も行われ、様々な文筆家たちによって多種多様なものができた。柳亭種彦の『田舎源氏』や滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』は面白いがそれ以外はそうでもない。以降、小説の存在は衰えを見せたが今日まで復興し創られるようになった。しかし、その主眼は勧懲ばかりで作品の人情を歪ませている。改善の果てに高尚な小説(ノベル)を以て文壇に幸せが訪れるように。

小説総論

美術は人を発達させる不思議な働きがあるが、それは実用ではない。心を楽しませ品を良くするのが目的だ。画や詩、演劇には制限があり成しがたいことが多いが、小説は意匠を凝らせ幅がきく。よって、文壇上最大の美術たりえるのだ。

小節の変遷

小説は奇異譚、ロマンスの変体である。荒唐無稽で奇怪な趣向、道理に反せども辞さないロマンス。小説は人情・世態・風俗を写す。小説や物語の起源は上古の口承、神話体系までに至る。正史も奇異譚も神話体系から紡がれるため、歴史も小説も起源を同じくする。ロマンスから始まる変遷は、人情の薄れを諷するため教訓や表裏二様の脚色をしたおとぎ話、寓話となる。これを目新しくしようとロマンスと寓意を混ぜ、勧懲を小説に落とし込む。これが主眼になり人情の歪んだ今の小説ができる。

小説の主眼

「小説の主脳は人情なり、世態風俗それに次ぐ」。今、日本の小説が陥っている勧懲は二元化できない人心を無理に分けて乱し、世態風俗の描写も伴って歪ませる。一番に来る人情を駄目にしてはいけない。人心の善悪二項、どちらも精神分析し学者のように淡々と忠実に写すがよい。

小説の種類

小説は二種類、勧懲か模写に分けられる。勧懲はまた、善人を描き導く褒誉と悪人を描き訓戒する誹刺に分かれる。馬琴の『八犬伝』は褒誉にあたるが、それ以外は概ね二項を兼ねている。さらに、誹刺にも厳正に刺すものと笑わせるものがある。模写は名の通り写し出す以外しないが、人生を写し出す以上、誹刺諷戒も備わる。小説に属し勧懲・模写と二分するが、その中にも現代と歴史、その社会の上・中・下それぞれ描いたものと分かれる。

小説の稗益

小説は美術であり、実用ではないがそこには得がある。心を楽しませるのが主眼ではあるが、優れたものは人を良くする働きがある。風格を良くする、善悪を教える、歴史を紐解く鍵となること。流麗で巧みな文章であるため、全文学の規範になる師匠たることもまた優れている。ロマンスに留まらない、真の小説となるように。

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