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糸に表情をプラス!糸にとって必要不可欠な撚糸について解説

記事ヘッダー画像に使用させて頂いた花の写真、これは Z撚り・S撚り のどちらだと思いますか?
この記事を読み終えた頃には正解がわかるようになっているはずです。



撚糸=糸をねじる行為

糸は単糸(1本の糸)の状態でも使用する事ができますが、用途や目的・表情の変化など様々な理由により、2本以上の糸を撚り合わせる事が多いです。
「撚り合わせる」というのは「単に糸をねじっている」という事。

そもそも単糸の状態でも糸はねじられた状態になっています。
長繊維にはねじりの無い糸もありますが、短繊維は短い繊維長のワタをねじっていく事で1本の一続きの糸ができあがるので、強度を持たせる為に必ず必要な行為となります。

この「ねじる」行為には、Z方向(左寄り)とS方向(右寄り)が存在します。
近くにある糸くずや細長いものをねじってみてください。
下記のようになるはずです。

rouranca.com より引用

このねじられた時にできる模様がアルファベットの「S」「Z」に似ていることから S撚り 、Z撚り と呼ばれるようになりました。


双糸=糸と糸とを撚り合わせる

2本の糸を撚り合わせる事を「双糸にする」といいます。
2本の糸を撚糸する事で1本の糸を構成する、という事です。
(3本であれば「3子撚り(みこより)」となります。)

この双糸にする工程では、2本の単糸を束ねた上で、単糸の状態とは逆方向に撚りをかけて仕上げます。

単糸(下撚り):Z撚り → 双糸(上撚り):S撚り
単糸(下撚り):S撚り → 双糸(上撚り):Z撚り

これは、エネルギーのバランスを均一にする為に単糸状態(下撚りという)とは逆方向に撚る(上撚りという)必要があるからです。

「撚る」という行為により運動エネルギーを持った状態の糸を単糸で編むと、特に天竺生地の場合は斜行(生地が斜めになる事)が発生します。
そこで上撚りを下撚りとは逆方向にする事で天竺生地の斜行を抑える事(運動エネルギーの相殺)が可能になります。

もちろん、すべての糸が単糸であれば斜行するわけでもありませんし、双糸にしたから斜行しなくなるという事でもありません。

基本的に世の中に流通している糸は、下記のような組み合わせになっている事が多いです。

◯工業用途
  編物・織物用糸:下撚り = Z撚り / 上撚り = S撚り
  縫製用ミシン糸:下撚り = S撚り / 上撚り = Z撚り
◯家庭用途
  編物・織物用糸:下撚り = S撚り / 上撚り = Z撚り
  縫製用ミシン糸:下撚り = Z撚り / 上撚り = S撚り

面白い事に工業用途と家庭用途では撚り方向が逆になっているんです。これは編み針やミシンなどの違いによるものと考えられます。
具体的になぜ Z撚り なのか S撚り なのか、というのは諸説あり確証がない為ここでは割愛させて頂きます。


無撚・甘撚り・強撚

撚糸では、撚り合わせる力をどれくらい強めるか?により、糸の風合いを変化させることが可能です。

無 撚:ほとんど撚りのかかっていない状態
甘撚り:撚りが弱い状態
強 撚:撚りが強い状態

基本的に撚りを強くすればするほど、糸の強力が増す代わりに糸が硬く・シャリッとした触感に近づいていきます。
反面、撚りが弱ければ強度は低い代わりにふわりとやわらかな肌当たりの糸になります。これらはなんとなくイメージしやすいのではないでしょうか?

私たちが普段購入する衣類でも、「強撚ツイルの~」「甘撚りで仕上げた~」といった文言を見かけますよね。


撚り杢=多色ミックス

「撚り杢」という言葉を聞いたことがありますか?

shop.storyweb.jp より引用

こんな感じの色がまばらに見える糸の事です。これも撚糸の技術によって作られた糸を使用する事で製作できます。
白い色の糸と黒い糸の糸を撚糸した糸を編み上げると、自然とこのようなまばらな見え方をするんです。遠目で見るとモザイクのようなグレーに見えます。


糸に強度を持たせる為、斜行を防ぐため、意匠性を持たせる為、デザイン性、風合い… 様々なシチュエーションで「撚糸」という技術は活用されます。
「糸をねじる」という単純な行為ですが、これにより「糸」そのものがとてつもなく幅広い可能性をもった存在となっていくのです。


ちなみに、記事のヘッダー画像に使用させて頂いたお花。
(ねじり花というそうです。)
正解は 左寄り(Z撚り)です。



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