繊維の長さによる違い(短繊維と長繊維)
衣料品に用いられる繊維には、「短繊維」と「長繊維」があります。
「天然繊維」と「化学繊維」のコンビに近しい概念にはなるのですが、微妙に違ってきます。
天然繊維と化学繊維について記事はこちらから。
今回は繊維について知る上でも重要な短繊維と長繊維について執筆していきたいと思います。
繊維の長さが短い短繊維(ステープル・スパン)= 紡績
短繊維とは、長さが数ミリメートルから数十ミリメートル程度の繊維のことを指します。1本1本の繊維が短い為、撚りを加えながら(ねじりながら)糸に加工していきます。(これは「紡績」と呼ばれます。)英語では、「staple fiber (ステープル・ファイバー)」や「spun yarn(スパン・ヤーン)」などと表現されます。
基本的には、シルク以外の天然繊維は(厳密にはシルクにも短繊維はありますが)すべて短繊維に分類されます。
コットンやウールはイメージしやすいと思いますが、綿毛や羊毛は長ーい1本の繊維にはなっていませんよね。短い繊維がたくさんついているはずです。
そんな短い繊維を合わせながら紡いでいく為、長繊維のような安定性はありません。ただし、紡績の際に空気を含むこと、繊維が短く毛羽が出やすいことなどから、柔らかさや分厚さ、保温性などの効果を出すことが可能になります。天然繊維ならではの優しい風合いは、短繊維であるが故に存在すると言っても良いと思います。
長繊維のところでも触れますが、長繊維は繊維を細かくカットしてあげれば短繊維になることもできます。
繊維の長さが長い長繊維(フィラメント)= 紡糸
長繊維とは、繊維の長さが極めて長い繊維を指します。長繊維を仕分ける具体的な長さの定義はありませんが、数百、数千メートルと続くような繊維が長繊維として分類されます。英語では、「filament yarn(フィラメント・ヤーン)」などと呼ばれています。
主に人工的に作られる「化学繊維」が長繊維に該当します。
また、天然繊維では唯一「シルク」が長繊維に該当します。シルクの繭を作り出す蚕は、長く続く1本の糸を吐き出すからです。
フィラメントは、繊維の原材料を高温で溶かして、細い金属製の板からノズル状(口金)に押し出してから急速に冷やし、繊維を形成する方法で作られます。(これは「紡糸」と呼ばれます。)
そのため、フィラメントの繊維は太さや長さ、形状、光沢感、強度の調整など、非常に多彩なバリエーションで糸を作る事が可能です。
また、長繊維はその繊維を細かくぶつ切りにする事により、短繊維にする事も可能です。
これにより短繊維である綿との混紡や、ポリエステル単体の短繊維なども製作する事ができます。
おまけ
長繊維を短繊維と混紡(ワタの段階で一緒に混ぜてしまう事)すると、例えばコットン/ポリエステル、ウール/アクリルなどの組み合わせができるわけですが、実は長繊維と短繊維を長短そのままの状態で糸にする特殊な加工をもあります。これらは、長短複合糸と呼ばれます。
長繊維の安定性・機能性と短繊維のナチュラルな風合い・柔らかさなどが合体したハイブリッドな繊維になるのです。
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