線引き。
今日、人から薦められて購入した本を開いた。
『サンフォード・マイズナー・オン・アクティング』という本だ。
今年の1、2月はいくつか演劇のワークショップに参加し、様々な海外の演技メソッドがあることを知った。
そのうちの1つにマイズナーテクニックというものがあり、今回の本はそれに関するものである。
ページを開いた瞬間、びびっときた。
舞台が綱渡りのロープのように細かったらどんなにいいだろう?
そうすれば、才能のない者が舞台に立とうとしなくなるから。
——ヨハン・ウォルフガング・ゲーテ(1749−1832)
『ウィルヘルム・マイステルの遍歴時代』第四巻 第二章
マイズナーは、この引用文を額におさめ、オフィスの壁にかけている。
まだ本を途中までしか読んでいないため、マイズナーがどういう意図でこの言葉を壁にかけていたのかは分からないが、私が常日頃思っていることを分かりやすく言い表していて、一種の感動を覚えた。
この本の最初にこの言葉が書かれている意味としては、それくらい演技は難しいものだということだろう。
それは本当に、様々なメソッドを知れば知るほど思うことだ。
今日本で俳優として活動している、あるいは俳優を目指している人達の中で、プロとして本当の演技を出来ている人がどのくらいいるだろうか。
以前、「好きなことを仕事にすること。」という投稿で少し触れたのだが、私は俳優という職業にプロとアマチュアの線引きが欲しいと思っている。
その線引きがあれば、俳優という選択肢を諦めるべき人は諦めることができる。
世の中には、私のように、諦めきれずもがいている人がたくさんいるのだ。
基準があれば、自分に可能性があるかどうかが分かる。
残酷かもしれないが、それくらいはっきりしていた方がありがたいと思ってしまう。
俳優はアーティスト。基準といってもなかなか難しいところではあるが…。
厳しい基準の中「本当の演技」が出来る俳優だけが生き残り、舞台でもテレビでも活躍できる世の中になれば、日本のアートがもっとレベルアップしていくような気がする。
私も出来ればそこに入り込みたい。
アートって難しい。
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