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descente-降臨- 第八話

S8.和解

真矢は賢吾と美月に向き直る。感情のままひた走り、欲求が命じるままに悪魔を斬り伏せた。その中で真矢は気付いたのだ。己の中にあった昏い感情に支配され、それを二人に対して剥き出しのままぶつけていた事を。だが、この城の邪悪な魔法に操られていたわけではない。あれは全て本心なのだ。美月に対する恋と欲望も、賢吾に対する疎ましい気持ちと嫉妬も。だからこそ、真矢は二人に向けて深く謝る。
「二人ともすまない!!」
「真矢先輩……」
「美月、あれは、あれは嘘じゃないんだ。俺は……お前の事が! このまま今の関係を壊したくなくて、そのままの居心地を維持したくて、だからずっと自分の心を偽って誤魔化してやり過ごそうと考えてた。だけど賢吾と将来の話をして、後戻りできない時間に焦って限界を超えてしまった……。ごめん。本当にごめん!! でも、やっぱり自分の気持ちに嘘はつけない!! 好きだ!! 出来れば俺と……!!」
「真矢先輩、私、ごめんなさい。私を好きになってくれたのは嬉しいの。でも、先輩の事、今はそんな風には見れない……」
「ああ。分かってるんだ。おかげでようやく俺は前に進める。今を押しとどめる事なんて、出来ないってよくわかったからさ。謝っても許してはくれないと思うけど、今まで通りとはいかないだろうけど、それでもお前は俺の親友の賢吾の妹だ。都合のいい申し出かもしれない、でもそういう関係でいる事を許してほしい」
「真矢先輩、私、あの事はもう気にしてないから。だからいいの。私こそ、本当は先輩の気持ちに気付いていたのに何も知らない振りをしてずるかった……。ううん。知ったうえで先輩と接してた。ごめんなさい……。私こそ先輩に許してほしい」

賢吾に向き直った真矢は彼に向かって頬を差し出した。
「賢吾、一発殴れよ」
「え?」
「いいからっ」
「青春ドラマじゃないんだからいらないよ、そんなの」
「俺の気が済まないんだよ!」
「じゃあ、こう!」
賢吾は拳を握る。衝撃に耐えようとした真矢の頬に拳を開いて軽くたたく。パシンという小気味いい音が響いた。
「これで気が済んだことにしろ! あとな」
間髪をいれずに再び握りしめられた拳が緊張を解いた頬にめり込む。次は打擲音とともに紅く頬が腫れ、真矢はよろめいた。
「二度とやるな馬鹿!!!」
久々に賢吾が本気で怒ったところを見たかもしれない。頬は酷く痛むが真矢は救われた気がした。
「ああ」
「これで本当にチャラだ」
「ありがとう……」

Written by @mososokko

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