前代未聞、マスコットとデート!?キヅールと巡る三陸鉄道の旅
読者の皆さんこんにちは!
鹿島アントラーズサポーターの五十嵐メイです。
皆さま、大変お待たせしました!
OWL magazineのTwitterを見て知っている方もいると思いますが、先月私は「いわてグルージャ盛岡」のクラブマスコット「キヅール」と2日間にわたって岩手県でデートをしてきました!
今回は1日目の様子をお届けします。
「キヅール」とは、2017年に登場した鶴をモチーフにした「いわてグルージャ盛岡」のクラブマスコットです。
マスコットと聞いて多くの人がイメージするのは「フワフワしていて、可愛らしいぬいぐるみ」ではないでしょうか?
ですが、キヅールはマスコット界の常識を逸脱したフォルムで登場し、マスコット界に激震が走りました。
キヅールは老若男女に愛されるデザイン、日本のサッカークラブとしての特徴のあるデザイン、鳥キャラの多いJリーグマスコット界で目立てるデザインを念頭に進められたそうです。
余談ですがキヅールと私の弟は誕生日が共に9月26日です!
好物はツルツル食べられるもの(冷麺・じゃじゃ麺・わんこそば etc)で、岩手県の名物にちなんでいます。
キヅールの公式プロフィールはコチラ↓
私が今回このマスコット企画を思い立ったきっかけは「大好きなマスコットと仕事がしてみたいな」と思ったことです。OWL magazineは旅とサッカーを紡ぐことをコンセプトとしたウェブマガジンです。
OWL magazineとして、マスコットと一緒に何ができるかなと考えた時に、旅好きな読者の皆さんへ、その土地の魅力をマスコットと一緒にお届けできたら素敵だなと思いました。そこで思いついたのが、サッカークラブのホームタウンの魅力をクラブマスコットに案内して貰うという新しい企画です。
記念すべき第1回目は「いわてグルージャ盛岡」の公式マスコット「キヅール」に岩手県の魅力を教えてもらいました!この企画は「サッカー観戦の旅のお供のような存在」になって貰えればいいなという想いを込めました。
ねえねえキヅール!デートしてよ!!
私は岩手県出身の童話作家の宮沢賢治が大好きです。岩手県花巻市にある宮沢賢治記念館を訪れるために、3年ほど前に一人旅で岩手県を訪れました。岩手県の名物である「わんこそば」を食べたり、「盛岡冷麺」を食べたりと、とても満喫しました。
「また岩手県にいきたいなー。そういえば、相模原ギオンスタジアムで会ったあの子は、元気かしら?」
私は以前、SC相模原といわてグルージャ盛岡の試合を見にいきました。その時にキヅールにファンサービスをしてもらったことがあります。
「ぜひ、岩手県に遊びに来て」そう言ってくれたキヅールを思いだし、早速デートのお誘いのお手紙を書きました。
するとキヅールから「すぐに岩手県でにおいで!!見てもらいたい場所が沢山あります。デートをしよう!」というお返事を頂きました。私は期待に胸を膨らませながら、待ち合わせ場所に指定された岩手県宮古市にある三陸鉄道の宮古駅前へと向かいました。
でも、キヅールの性別って「紙」なんだよな……。
紙って一体、男の子なの?女の子なの?どっちなのかしら?
待ち合わせ場所に人だかり。その中心に居たのは……?
デート当日の2021年3月8日は、雲ひとつない快晴でした。
待ち合わせ場所に指定された宮古駅前に到着すると、何やら人だかりが出来ていました。
おやおや……?
近寄ってみると、人だかりの中心にいるのは今日のデートのお相手「キヅール」ではないですか!
「いわてグルージャ盛岡の応援に来てね!」
遠くから様子を伺っていると、キヅールはとっても丁寧にファンサービスをしていました。キヅールを初めて見る、地元のおばあちゃんたちは「サッカークラブがあるんだね!」と、目を輝かせてキヅールの話を聞いていました。
「お待たせ!」
しばらく待っていると、キヅールが私を見つけてのしのしと近寄ってきました。「改めて近くで見ると、大きいなあ。私、身長が高い人がタイプなの!素敵!!」と、心の中で思いながら「今日はよろしくね」と挨拶を交わしました。
私はいくら大好きとはいえ、さすがにマスコットとデートをするのは初めての経験です。大きなおめめに、クールな表情をピクリともさせないキヅールを前に、一緒に楽しめるのか少々不安を感じます。
「表情が読めないな……。私はとても楽しみだったけど、キヅールはどうなんだろう?」
顔を見上げても、クールな表情からは何も読み取れません。
すると、キヅールが「じゃあ、早速最初のデートスポットを案内します!」と、話しかけてきました。
足取り軽やかに目的地に向かう姿を見て、どうやらキヅールも楽しそうだなと、そっと胸をなでおろしました。
それではキヅールと岩手県デートへ出発!!
キヅールと船上デートへ!ロマンティックな洞窟ツアー
キヅールが最初に案内をしてくれたデートスポットは三陸復興国立公園・三陸ジオパークの中心に位置する「浄土ヶ浜」です。
由来は天和年間(1681〜1683)に宮古山常安寺七世の霊鏡竜湖(1727年没)が、「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことから名付けられたと言われています。
この日の目的は「さっぱ船」といわれる小型で、浄土ヶ浜の絶景を巡る遊覧ツアーです。「浄土ヶ浜マリンハウス」で乗船受付を済ませます。
「海は午前中の早ければ早い方が綺麗に見えるんです」
キヅールが教えてくれました。
さらに、私の訪れた3月は1年の中でも1番海が綺麗に見える時期だそうです。浜辺からでも、海の綺麗さは一目瞭然です。
「今日は景色を綺麗に見るための最高のコンディションが揃っているよ」
さっぱ船の船長さんがそう教えてくれたので「やったね!」と、キヅールとハイタッチを交わしました。
係の人から受け取ったライフジャケットとヘルメットを装着して、いよいよキヅールと一緒にさっぱ船で浄土ヶ浜の沖へ出発しました!
「キヅール、あなた紙よね?海に落ちたら大変だから、あまりはしゃいじゃダメだよ?」
そう話しかけると、少し強張った表情で水面を眺めるキヅールの姿があります。
「ラ、ライフジャケットがあるから大丈夫だよ……」
人間用のライフジャケットに窮屈そうに身を包むキヅールに少々不安を抱えながら、出航です!!
海に出ると上空には沢山のウミネコ達が飛び交っていて、餌付けも出来ます。頂いたかっぱえびせんを必死にばらまきますが、なぜかウミネコ達が寄ってこない……。
「さっぱ船遊覧」を楽しんだ方の写真などを見ると、ヘルメットにウミネコがとまっている姿を見かけたりしていたので少し拍子抜けでした。
少し離れた場所に乗っていたカメラマンの富澤さんは、楽しそうに手から直接ウミネコへの餌付けを楽しんでいました。なんでだろうと不思議に思っていると、船長さんから衝撃の一言が飛んできました。
「見たこともない大きさの鶴が乗ってるからね。みんな怖がっているんだよ。私も鶴を乗せたのは初めての経験だよ」
ウミネコが近寄ってこないのは、キヅール!君のせいだったのか!!!
「キヅール、ウミネコさん達はあなたのことが少し怖いみたい」
そう伝えるとキヅールは申し訳なさそうに「横浜F・マリノスのマリノスケくんは、ウミネコと同じチドリ目カモメ科だから、仲良くなれる方法を聞いておきますね」と答えました。
「キヅールも食べる?」
私は隣に乗っている大きな鶴に、かっぱえびせんをあげながら綺麗な景色を楽しみました。
初めてのスナック菓子はお気に召したみたいで、ちょっと落ち込んだキヅールが元気になった様に見えました。相変わらず、表情はクールです。
沖に出ると「剣の山」「賽の河原」「血の海」など、それぞれ名前のついた岩の山達が姿を現します。そのひとつひとつを説明してくれる船長さんの話を聞きながら、「さっぱ船遊覧」のメインである「青の洞窟」に到着しました。
「八戸穴」という名前のこの洞窟は、青森県八戸市まで続いているという伝説から名付けられました。陸中海岸の「青の洞窟」と呼ばれる洞窟内の景色はどうなっているのか、ワクワクしながら洞窟の中へと船を進めて貰いました。
ひんやりとしていて、ひょっこりと人魚が顔を出しそうな雰囲気の洞窟の中を進んでいくと、薄暗い洞窟の中にも関わらずキラキラと透き通ったエメラルドグリーンの絨毯が広がっていました。私の頭の中はあまりの綺麗さに「どうなってるの?」という疑問でいっぱいでした。あまりの綺麗さに言葉を失ってしまいました。キヅールの方を見ると、黙って海を見つめていました。
楽しかった船上デートは、あっという間でした。
下船をすると「浄土ヶ浜マリンハウス」の代表を務める早野秀則さんがお話を聞かせてくれました。「浄土ヶ浜マリンハウス」は東日本大震災の津波の影響で、大きな被害を受けました。船が全て流されてしまいましたが、「先代の頃から続く縁や想いを途絶えさせることは出来ない」という気持ちで震災後はわずか1隻の船で営業を再開しました。
「ひとりひとりの積み重ねでここまで来て、10年が一区切りとして取り上げられることが多いけれど、区切りなんてものはないのかな。生きていくためには自分を殺して色々とやってきたけれどね……」
早野さんは被災してから今に至るまでを思い出すように、ゆっくりと話はじめました。時折言葉を詰まらせる早野さんの姿。
「それでもここまでこれたのは、本当に沢山の人のご支援を頂いたからです。それをこれから少しずつ返せていけたらなと思っていますね。浄土ヶ浜には綺麗な景色があるということを沢山の人に知ってもらって、沢山の人に足を運んでもらいたいですね」
最後は笑顔で語ってくれた早野さん。取材依頼の電話をかけた時も現地でお会いした時も「協力できることはなんでもするからね。沢山の人に浄土ヶ浜の魅力が伝わるように、納得が出来るものを撮ってね」と温かく迎えてくれました。
「岩手県は東日本大震災で大きな被害を受けたけど、震災に負けずに頑張っている人が沢山いるんだ。復興してきている街の姿を今日はぜひ、メイちゃんに見て欲しかったんだ」
キヅールがそう話しかけてきました。
「浄土ヶ浜マリンハウス」の壁には沢山の応援メッセージで溢れかえっています。
素晴らしい景色を沢山の人に見ていただきたいという「浄土ヶ浜マリンハウス」のみなさんの想いがあって、今回私は素敵な景色を見せていただくことが出来ました。
「景勝地」という言葉はあまり聞き慣れない言葉ですが、景色がすぐれている土地という意味です。由来にもあるような「まるで極楽浄土のような景色」を見るために、サッカー観戦に訪れた際に少しだけ足を伸ばして見るのはいかがでしょうか?
浄土ヶ浜マリンハウス http://www.j-marine.com/index.html (事前予約は不可)
宮古駅(JR山田線/三陸鉄道)より岩手県北バス(浄土ヶ浜行き、または宮古病院行き)で約15分。「浄土ヶ浜ビジターセンター」下車、徒歩5分。
キヅールと魅惑のランチタイムー大好物を食べ尽くせー
「メイちゃんは、牡蠣が大好物なんだよね?そんなメイちゃんにぴったりのスポットがあるんです!」
自信たっぷりなキヅールが続いて案内してくれたのは、岩手県下閉伊郡山田町にある「山田かき小屋」です。ここは三陸名物の牡蠣がお腹いっぱい食べれるキヅールオススメのスポットです。
デートの時に、相手が自分の好きなものを知ってくれていると嬉しくなっちゃいますよね!キヅールにモテマスコットの片鱗を感じます!
「ここは美味しい牡蠣が、なんと食べ放題なんです。牡蠣の養殖場は、東日本大震災で大きな被害を受けたけれど、今は多くの人に食べ放題を楽しんで貰えるまでに回復したんだ!今日は、メイちゃんに大好物をお腹いっぱい堪能して欲しいんだ!!」
私は牡蠣が本当に大好きです。以前、牡蠣食べ放題のお店に行って40個ほどペロリとたいらげたことがあったので「今日は何個食べられるかな?」とウキウキしながら向かいました。
2009年に岩手で初めて開店したかき小屋は、当初は別の場所にありました。東日本大震災後は、現在の場所に移して再びオープンしました。11月〜翌年5月までの間、三陸でとれた新鮮な牡蠣の食べ放題が楽しめる場所として、毎年多くの人で賑わいます。
かき小屋に到着して席に案内されると、お店の方が大きなスコップで山盛りの牡蠣を蒸し台に積み上げてくれます。その光景に圧倒されていると「どのくらい食べる?」とお店の方に聞かれました。牡蠣ひとつの大きさが今までに見たこともないサイズだったので、自分がどのくらい食べられるのかまるで見当もつきませんでした。
蒸しあがるまで約15分ほどの時間、牡蠣を食べるのは初めての経験ということでキヅールはソワソワが止まりません。
かき小屋では1テーブルにひとり、地元のお母さんが付いてくれて食べやすいように蒸しあがった牡蠣を剥いてくれます。いざ蒸しあがった牡蠣を手に取ると、その大きさに驚きました。お母さんから「熱いから気をつけて!」という注意も聞かずに、その大きさにつられて思わず一口で放り込んでしまいました。熱さも忘れるくらいの濃厚な牡蠣の味に、思わず2個目に手が伸びました。
大きな貝殻をひらくと縮んだ身が姿を現して、思わずガッカリした経験がある方もいるのではないでしょうか?ところが三陸の牡蠣は、どの貝をあけても貝殻いっぱいの身が詰まっていました!牡蠣の大きさを写真ではうまく伝えられないのが、とても悔しいです……。
かき小屋の中をふと見渡すと見覚えのある埼玉県のマスコット「コバトン」が飾ってありました。
話を聞いてみるとかき小屋のある山田町で浦和レッズの選手たちが子供たちとのサッカー交流会を行っているようです。ふとしたところでサッカーファミリーの輪を感じることができました!
テーブルの上には調味料としてレモン、山田の醤油、山田のレモぽん、一味が並べられていました。
「山田の醤油」は工場が岩手県の内陸部にあったために無事だったそうで、牡蠣にかけて食べるのはもちろん、甘さとコクが特徴なので料理などに使用することもできるそうです。
中でもお母さんのオススメは「山田のレモぽん」でした。
ポン酢というと「すっぱい」イメージの調味料ですが、「山田のレモぽん」は「山田の醤油」が使用されているためほんのりと甘味がありますが、レモンの風味ですっきりもさせてくれます。「山田のレモぽん」は、牡蠣にぴったりということで、実際にかけてみると驚くほどに牡蠣との相性が抜群でした。酸味が強すぎず牡蠣の風味もしっかりと楽しめます。食事をしている最中も他のテーブルから「レモぽんが1番おいしいね」という声が聞こえてきました。
キヅール念願の初体験!ドキドキの三陸鉄道
牡蠣でお腹をいっぱいに満たしたあとは、陸中山田駅から吉里吉里駅までキヅールと一緒に三陸鉄道の旅を楽しみました!キヅールも鉄道に乗るのは初めての経験です。それでも一度乗ってみたかったということで、無理矢理デートコースに入れてきました。
本当に乗れるんだろうか……。
ホームで待っている間、楽しみなキヅールは終始ソワソワしています。
先に反対方面に到着した車両の運転手さんが、笑顔で手を振ってくれました!
私たちが乗る車両が到着したので、スタッフさんに手伝ってもらい、羽を折りたたんで乗り込みました。その姿に、驚いた表情をする乗客の方々。お客さんの迷惑にならないように、そっと車両先頭の広いスペースにちょこんと座らせて貰いました。
「キヅール、乗り心地はどうかな?」
私は、キヅールに尋ねました。
「乗り心地は最高です!初めての体験だからワクワクがとまらない!ところでメイちゃん、スタッフさんから座布団預かってこなかった?」
正座で乗っているキヅールの足元を見ると、なんと座布団がありません!
キヅールは、お座りをする時に座布団を使用します。キヅール専用の座布団は、キヅールのサイズに合わせてあるのでとっても大きくて、ぎっしりと綿が詰まっているので中々の重量です。
「あ!キヅールごめんね?乗り込むのに必死で、座布団を受け取るのを忘れてきちゃったよ!」
ごめんねキヅール。今度はちゃんと、スタッフさんから座布団を受け取るのを忘れないからね!
この三陸鉄道は、東日本大震災の発生からわずか5日後には一部区間での運行を再開しました。その姿は沢山の人々に勇気を与え、復興のシンボルとして今でも沢山の方に愛される鉄道です。
平日の昼下がりということもあり、穏やかな時間が流れる車内では、駅の乗り降りの際に笑顔で言葉を交わす地元の学生さんの姿が印象的でした。
「久慈駅から盛駅までの163kmを一本で繋ぐ三陸鉄道は、通勤、通学、買い物だけではなく、三陸沿いの方を繋ぐ役割を果たしていると思います。人と人を繋ぐことで、笑顔が生まれるような鉄道運行をしていきたいと思っています」
朝、キヅールと待ち合わせをした宮古駅の方に伺った話を思い出しました。
車窓から見える海の景色はとても穏やかで、テレビでみた悲劇が起こったとはにわかに信じがたい光景でした。乗車している間に復興に携わった方々の並々ならぬ苦労を思い「自分にできることはなんだろうか」というのを考えさせられました。
「ひょっこりひょうたん島」は実在した!?
吉里吉里駅で下車をして、向かった先は岩手県上閉伊郡大槌町です。
大槌町には「蓬莱島」といって、「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった島があります。私は小さい頃に「ひょっこりひょうたん島」の人形劇を見るのが大好きでした!
なかでもライオンというキャラクターが大好きです。「人畜無害のライオン。サーカス入団希望。気が弱く、ネズミや怖いものが苦手。」という、ライオンらしからぬ設定に心を掴まれて以来の推しキャラクターなのです。
大好きな「ひょっこりひょうたん島」のモデルとなった「蓬莱島」を見てみたかった私は、キヅールにリクエストをして大槌町に立ち寄りました!
「メイちゃん、あれがメイちゃんの好きな『ひょっこりひょうたん島』のモデルになった蓬莱島です!」
キヅールに説明されて目にした蓬莱島は、どこからどうみても「ひょっこりひょうたん島」そのものでした!あまりに見た目がそっくりなので、どこかにドン・ガバチョや仲間たちがいるのではないかとキョロキョロしてしまいました!
訪れた日は1日中雲ひとつない晴天で、海沿いの街の景色は穏やかで本当に綺麗でした。
ただ、街を車で走っていると突然大きな壁のようなものが現れることがあります。
「防潮堤」といって、高潮や津波の被害を軽減するための堤防です。
初めて見たときは、あまりの高さに驚きを隠せませんでした。表現が正しいのか分かりませんが、まるで何かと戦い続けているような印象を受けました。
「防潮堤」について調べていくうちに、様々な問題があることが分かりました。街を守るために設置された「防潮堤」が、過去の津波の被害の際は街を守ってくれたために安全を過信させてしまい、東日本大震災の犠牲者の中には逃げ遅れた方がいたとも言われているようです。また、高い防潮堤が景観を損ねるために漁業従事者を中心とする住民の感情や、観光に悪影響を与えるといった意見もあるようです。
人と自然の共存の難しさを可視化させたような存在の「防潮堤」。現地に足を運びその存在を知った私は、テレビでみているだけではわからないことが沢山あるのだなと思いました。
あの日を語り継ぐ「うのすまい・トモス」
続いてキヅールが案内してくれたのは、「うのすまい・トモス」です。
うのすまい・トモスは、「東日本大震災の記憶や教訓を将来に伝えるとともに、生きることの大切さや素晴らしさを感じられ、憩い親しめる場」として、複数の公共施設がある場所です。
釜石祈りのパークは東日本大震災犠牲者慰霊追悼施設です。
震災で犠牲になられた方の芳名を刻んだ芳名板が設置された慰霊碑、実際の津波浸水高を示すモニュメントなどが設置されています。
いのちをつなぐ未来館は2019年3月23日にオープンした震災伝承と防災学習のための施設です。施設の中には東日本大震災で釜石が受けた被害状況などを伝える資料、被災した品々の展示がされています。
素早く避難をして命を守った釜石の子供たちの避難の様子も伺えます。震災前から行っていた防災教育の取り組みなども紹介されていて、どうして釜石の子供たちが沢山助かったのかというのも知ることができます。
いのちをつなぐ未来館では防災学習のためのワークショップを開催しています。
来館できない方のためにオンラインでのガイドが無料で行われています。震災を経験したスタッフが当時の体験談や要望に合わせた内容をオンラインで聞くことができます。
夢と希望と勇気を!釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム
1日目の最後にキヅールが案内してくれた場所は、岩手県釜石市にある「釜石鵜住居復興スタジアム」です。
2019年にアジアで初めて開催されたラグビーのW杯が日本で行われましたね。釜石市は元々ラグビーが盛んな街でもありました。将来を担う子供たちに夢と希望と勇気を与えるために開催地に立候補して2015年3月に開催都市に選ばれました。
その開催地となったのが「釜石鵜住居復興スタジアム」です。
元々この場所には釜石東中学校と鵜住居小学校が建っていたそうです。東日本大震災の際には、地震と津波で全壊してしまうという大きな被害を受けました。海からわずか500mという近い位置にあったにも関わらず、実践的な防災教育がおこなわれていた事が功を奏して児童・生徒のほとんどが無事でした。
スタンドから景色を眺めていると、キヅールが話しかけてきました。
「岩手県の沿岸部は、震災の被害が特に酷かった地域なんです。たくさんの人の支援や頑張りがあって10年をかけてここまで復興したんだ。今日はその様子を是非見て貰いたくて案内したんだよ!実際に街の様子を見ていかがでしたか?」
これまでの人生を振り返っても、震災で大きな被害を受けた場所に訪れたのは今回が初めてでした。大きな防潮堤や水門は、普段過ごしている街にはない景色です。自然と人が共存する難しさを改めて知るきっかけになりました。東日本大震災発生から10年ということで、3月11日には震災の被害の大きさを伝える報道がなされていましたね。
私が実際に現地を訪れて1番印象に残っているのは地元の人の温かさでした。行く先々で出会う皆さんが本当にアットホームな雰囲気で、自分の住んでいる町の魅力を沢山伝えてくれました。私たちには計り知れない悲しみや苦労を乗り越え、明るく元気に観光客をおもてなししてくれる姿に元気を貰いました。
今回私は旅の途中に何度も岩手県沿岸部を訪れる意味を考えました。
「何かをしたい」と思う気持ちがおこがましいような気がして、この記事をどんなテイストで仕上げるか、とても頭を悩ませました。
私は今、旅とサッカーを紡ぐ「OWL magazine」に携わっています。「サッカー×旅」という視点から私が旅記事を紡ぐことで、いままでは岩手県に目を向けることのなかった方が、サッカー観戦の際に岩手県を満喫するきっかけになれば良いなと思います!
キヅールと旅をしている途中に地元の人から沢山話しかけられました。
「この子はなんのマスコットなの?」
キヅールのことを聞いてくる方の中には、岩手県にJリーグのクラブがあることを知らない方も沢山いました。中には「Jリーグのクラブがあるんだね」と、話を聞いて目を輝かすおばあちゃんの姿もありました。浄土ヶ浜マリンハウスの早野さんは「グルージャが勝って、岩手がもっともっと盛り上がってくれるのが良いね」といわてグルージャ盛岡への期待を口にしていました。今回の旅をレポートすることで、少しでも「いわてグルージャ盛岡」を中心に、もっともっと岩手県が盛り上がるためのお手伝いが出来たら良いなと思いました。
いわてグルージャ盛岡がJリーグに参入してから7年、キヅールが誕生して約4年。そしてなんと、いわてグルージャ盛岡は現在J3の首位を走っています!
岩手県の人々の希望をのせて、このまま昇格まで突っ走って欲しいですね!
<続く>
皆さん、前代未聞のキヅールとのデート企画は楽しんで頂けたでしょうか?
今回は岩手県の沿岸部を巡るデートの前編でした!
OWL magazineでは毎月700円で、個性あふれる執筆陣による記事を毎日読むことができます。
執筆陣は、OWL magzine代表の中村慎太郎、ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんの他、川崎フロンターレや浦和レッズ、鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌、東京武蔵野ユナイテッドFCなどなど、各々愛するチームを心に抱えた多彩なラインナップになっています。
また、文章を書いたことはないけれど、サッカーが好きで何か書いてみたいなという方のための、育成も行っています。
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五十嵐メイ
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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