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言葉を尽くして伝える〜中高生のための「演出」ワークショップ

今回は2023年3月18日(土)19日(日)に東山青少年活動センターにて開催した、中学・高校生のための演劇ワークショップ「演出」ワークショップについて書き留めます。

この講座の趣旨は、前回記事「トライ&エラーでいいじゃない〜中高生のための「脚本の書き方」講座」の冒頭をご参照ください。

「演出ってコツがあるの?
てゆーか、『演出』って何?」

このチラシのキャッチコピーをつけようとなったとき、この言葉がぽんと浮かびました。
高校生だった頃のわたしが心の中で思っていたことです。
今となっても、「演出」の役割や仕事の内容について頭では理解できますが、じゃあやってみよ、と言われたときいったい何から始めていいのか、俳優のわたしは答えを持っていません。
作品を良く見せる技術とかポイントとかそんなことより先に、まっすぐに「演出ってなに?」を高校生とともに知り直したい。そんな気持ちがありました。

「演出とは?」じっくりと語り合うところからはじまりました

講師は、京都を中心に劇作家・演出家として活躍の場を広げている、ルドルフ筒井加寿子さんにお願いしました。
今回の参加者は高校生3名でした。
自己紹介でそれぞれの演出経験や、演出という役割について思っていることなどをざっくばらんに語ることから始まりました。
気づけばそれぞれが演劇のどこに魅力を感じ、そこで自分がどう在りたいと思っているのかが自然と見えてきました。

広辞苑に書かれている「演出」という言葉の確認や、映像で一つの作品のいろんな演出での上演を見てみたりと、客観的に「演出」を捉えてみる時間も新鮮でした。当然世界にはいろんな演劇があって、あらゆる角度から作品を捉えることが可能です。自分の枠の外にもいろんな世界の切り取り方があるということに触れられるのは、とても貴重な機会だと感じました。

「演出家だからこそ生まれいづる悩み」(演出あるある)について筒井さんと参加者が共感し合う時間もとても印象的でした。「わかる!わたしも同じことで悩んでた!」と経験を超えてフラットに語り合えること。
知識の伝達だけでなく、同じ演出経験者だからこその視点に立って課題を共有していく、この姿勢がのちのワークにつながっていくわけです。

今日はひとりひとりが演出家になります

2日目はテキストを使って、実際参加者それぞれが演出家になって、順番にシーン稽古を仕切ることになりました。自分以外の人が演出をしているときは、役者もします。
筒井さんはそれを見守りながらアドバイスを投げかけてくださいます。
わたしは演出家の指示を受ける役者として、お手伝いさせてもらいました。

それぞれが学校でやっているやり方や、こうしてみたらいいんじゃないか、というやり方を大切にしながら進めていきます。

交代で演出をしたり役者をしたり、両方の立場を経験することで、どういう伝え方が相手にとって効果的なのか、自分の意図が伝わりやすいのか、ということを自然と模索するようになり、悩む時間もとても豊かに感じました。

筒井さんはそれぞれの演出の運びを見ながら、自身の経験から培った、脚本から演出家が読み解いたことを役者に伝えるために必要な言葉のチョイスやタイミング、見せ方の工夫などたくさんアドバイスをくださいました。

演出家が自分ではない他者に対して「こう作りたい」を伝えることの豊かさと難しさ。そこに絶対的な正解はなく、常にオープンに人と関わりながら一瞬一瞬を創っていくことこそが演出の醍醐味なのではないかと、わたしは感じました。

この「演出」ワークショップをやってみてはじめて、役者や劇作ともまた違った、他者に対して言葉を尽くして伝えるチャレンジの大切さを知ることができました。

この「演出」ワークショップも2023年夏にふたたび開催できるよう準備を進めています。演劇に興味がある中学・高校生が、さまざまな角度から演劇と出会える場になればいいなと思っています。


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