第2回架空選評句会

【はじめに】

突然の企画に前回たくさんの方が作品を寄せてくださいました!
本当にありがとうございます!今回もがんばって読ませていただきます!

【今回のお題】


本当の景色ではあり得ないけど想像はつく。登場人物は蛇と文字上には現れていないけど1人の人だけ。聴覚でなく耳に触れられるようなぞぞぞとした感覚がある。

今回のポイント
①実景ではないが、一枚の絵に蛇と人間がいる
②描き方としては蛇だけを文字上に登場させる
③聴覚ではないが、感覚は耳で受け止めている

蛇と人間を別々で描いたり場面展開をせず、感覚としては耳に固執するというマニアックな作り方を要求しています。さて、どんな俳句が川嶋ぱんだの元に届いたのか一緒に見ていきましょう。

【さっそく選評】

蛇の腹裂きて羊水啜る蛇 岐阜大学俳句会
蛇の腹を割いて羊水を啜る蛇(共食い!?)。おどろおどろしさは強く感じるので選評の雰囲気は掴めています。ただ、登場人物は蛇しかでていないのと、感覚が耳に絞れていないのが今回の選評からズレてしまっています。

封解きて覗けば甕に蛇が海 いぬぼし
封を解いて覗いて見れば甕に広がる蛇の海。襲ってきそうですぐに封を閉じたくなるほどすごくおどろおどろしいですが、感覚としては視覚が強いでしょうか。俳句としては完成度が高く感じますが、選評に合致しているかと言う点ではすこしズレる印象です、

蛇落ちて腹に注射をどすと打つ 正山小種
 蛇が落ちてきて、お腹に注射をドスっと打たれる(蛇に噛まれたことの比喩?)。痛々しさを感じますが、こちらも感覚はお腹にあります。またオノマトペは推敲の余地がある気がしました。

蛇の死や排水溝に寄する耳 ちーかま
蛇の死を聴覚で取ろうとしている点で架空選評に寄せていることが感じ取れます。ゴボゴボと聞こえる排水溝のなかに蛇の死骸があるのでしょうか。ただ、聴覚でないというのもポイントなのでニアミス。

無呼吸を蛇の臓腑の粘りたる ひうま
無呼吸を聴覚で捉えようとしたのでしょうか。蛇の内臓が粘っているのがおどろおどろしいですね。耳にぞぞぞという感覚かと言われると全身がぞぞぞに近いかもしれません。

蛇穴に入るで赤子を引き摺つて 三島ちとせ
蛇が赤子を引き摺って穴に入る。おどろおどろしいですが、ちょっと蟻んこっぽさも。文字上に人が現れないのがポイントなのでその点で選評からやや逸れてしまいました。

楽園のあの実を食べろつて蛇が katsura
句材が少なくあり得ない光景、文字上に現れない人があり、耳にぞぞぞという感覚があり、すべてを満たしている感じがしました。少しユーモアもあっり軽くてたいへん悩みましたが次点です。すみません。

耳の穴より蛇出づる夜長かな 登りびと
耳の穴から蛇が出てくるというのはたしかにあり得ない光景です。条件を満たしていますが、やはりこの選評では「蛇」を眼目に持ってきたいところ。今回は「夜長かな」と詠嘆することで夜長に主眼が移ったような感覚があります。

秋の蛇どどどと騒ぐ血のありて みーのすけ@猫愛すクリーム
秋の蛇を(見ていると)どどどと騒ぐ血の感覚があるという俳句。「どどど」と感じるのはどうしても自分の感覚または聴覚で耳の触覚からややズレる印象です。架空選評からすると人がどどどと血が騒ぐのを感じると読めますが、蛇の中でどどどといっているのか、人のなかでどどどといっているのか判断が難しいです。

いつまでも耳底をなぞる蛇の舌 夏銀
この句も条件を満たしています。耳の底は鼓膜でしょうか。嫌だなという感覚があり今回の架空賞にするか最後まで悩みました。蛇の舌という押さえ方がやや季感を薄めている感覚がありました。


【架空賞な一句】

生まれきし蛇の尾のなほ鼓膜撫づ いかちゃん
生まれてきた蛇の尾に鼓膜を撫でられている。すべての条件も満たし、尚且つ、鼓膜という体のなかでなかなか意識されない部分に蛇の尾が当たる感覚を想像するとすごく嫌な気持ちになり、強く耳の触覚を意識します。

【投句一覧2020.8.6】

蛇の腹裂きて羊水啜る蛇 岐阜大学俳句会
https://twitter.com/gu_haiku

封解きて覗けば甕に蛇が海 いぬぼし
https://twitter.com/inuboshi_seijin

蛇落ちて腹に注射をどすと打つ 正山小種
https://twitter.com/moshiko604

蛇の死や排水溝に寄する耳 ちーかま
https://twitter.com/chika158cm

無呼吸を蛇の臓腑の粘りたる ひうま
https://twitter.com/hiumahiuma

蛇穴に入るで赤子を引き摺つて 三島ちとせ
https://twitter.com/haikutanpen

楽園のあの実を食べろつて蛇が katsura
https://twitter.com/katsurajingzi

生まれきし蛇の尾のなほ鼓膜撫づ いかちゃん
https://twitter.com/okapie1018

耳の穴より蛇出づる夜長かな 登りびと
https://twitter.com/kotobafushigi

秋の蛇どどどと騒ぐ血のありて みーのすけ@猫愛すクリーム
https://twitter.com/haikuneko1119

いつまでも耳底をなぞる蛇の舌 夏銀
https://twitter.com/ctMkUQaJ7UUKGcN

【次回のお題】

一面の白。白といえば雪が降る冬をイメージしそうなのに、この句では夏。大景で捉えているなかにポツンと具体物が入っていているのが良い。

【告知】


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川嶋ぱんだ
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