朝活俳句アワード2022を読む 第4回 塩谷人秀「自然な独創性」

 総じて高い伝達性を担保しつつ独創的な把握を無理なく織り交ぜてくる技こそが友定句の真骨頂ではないだろうか。

しりとりに喇叭再び石蕗の花 友定洸太
 なぜ「石蕗の花」なのだろうか。単に喇叭の色彩的・造形的なイメージに被さるだけでなく、もっと何か複層的な含みを感じる。また、「喇叭」というアイテム、しりとりでこのワードが出たぐらいでは気に留めないだろうが、よくよく考えてみると軍隊での信号も使用されていたこともある物だ。「石蕗の花」の持つややダークなニュアンス、また「喇叭」の漢字表記も補完的に働いて、個人的にこの句からは日本の昭和初期の出来事に一瞬思いを馳せてしまった。深読みしすぎかもしれないがいずれにせよ、「石蕗の花」が奇妙な存在感を放っているのは確かだ。

水筒に波音のして花あやめ 友定洸太
 五句の中で私が最も好きだった句。水筒の中に立つ音のことを「水音」ではなく「波音」と表現している。上五中七まで読み進めたところ目を引く措辞ではあるものの少々言い過ぎではなかろうかと思った。しかし下五の「花あやめ」で、すとんと腑に落ちる。眼前の花あやめやその周囲の空間、そして水筒内の閉鎖的、まるでそれらが互いに干渉しているようだ。

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川嶋ぱんだ
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