樹色マガジン第15号(2024.3)
菊池洋勝の作品
押し競饅頭
車椅子は凶器押し競饅頭の
人間が満足したる竈猫
膝を付く在宅医かな底冷えす
此処持つと良い伊勢海老と映りたる
日持する缶詰も尽く小正月
猿廻し学生服の肩車
県民の成人の日のミッキーマウス
具沢山の味噌汁で済む餅間
寒の入店頭にない薬かな
厠から出て煮凝の溶けてをり
大寒の首に掛く聴診器かな
美味さうに見る葉牡丹やマヨネーズ
汁の鰰の真空パックかな
臘梅や齲窩へ薬を詰めて置く
鮃と言はれ歯応へは鮃かな
冬の夜鞘へ収むる体温計
律新集2024.2
とこうわらび
自撮りする女子高生や風光る
春嵐がドアを押さえたので仮病
しらす干し引っ掛かっている割り箸
幼子の手にぶらんこの錆の朱
よもぎ餅餡に引きちぎられそうな
春園や土にアンパンマンの顔
マンションの壁にシャボン玉ひとつ
常波静
熊穴を出づ地球を揺り起こして
外回り外套脱いだら本気だす
草餅や春の秘密は包まれて
蒲公英や前へならえで咲き誇れ
わらび餅匿名希望の無個性さ
永き日は広告スキップ待ってやる
朧夜は一旦落ちる言えぬ言わぬ
中川多聞
三寒四温さらぴんの靴は重い
作詞作曲 朧月 歌 朧月
干からびた朝の挨拶シクラメン
キャンディの雑い味わい春の闇
風光る大都市にガスマスク達
唇をひん曲げ春の眠りへと
戦線を遮る分厚いかまぼこ
川嶋ぱんだ
廊下から牛を曳き出す二月の夜
鶯や往路も暗くなりそうに
春の月余白を埋める独り言
この裏にパンがあります春の風
まっしろなさくらのなかのすべりだい
信号の青に斜交う蝶の群れ
釈迦いつも座っておりぬ日向ぼこ
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