朝活俳句アワード2022を読む 第7回 加藤右馬「等身大の王道」

友定さんは極めてスタンダードな詠み手だ。過不足ないフレーズと季語の選択で勝負する。等身大の句材で勝負しているからこそ「合わない」が起こりにくい。平明で平坦でないものという、俳句の王道を進んでいる。だが決して雪月花の情緒に依りかからない。

しりとりに喇叭ふたたび石蕗の花 友定洸太
しりとりで「喇叭」が何度も出てくるという。共感性は高いが、しりとりの「喇叭」に焦点化した俳句はあまり見たことがない気がする。「ふたたび」に上手さがあり、石蕗の花の鮮やかながら地味さを含む雰囲気がよく合っている。

山茶花や雨の染みこむスニーカー 友定洸太
この句も日常のものをしっかりと取り合わせ、よく落ち着けている。山茶花という主張の強くない花の見えるありがちな景の中で、雨が自分の靴の中に染み込んでくる心地悪さを詠んでいる。句材はありきたりなのに、詠まれる情感と切り取り方が新しい。

プロパンガスボンベごろりと彼岸入り 友定洸太
上六の句跨りだが、プロパンガスのもっさりとした質感と、「ごろり」の擬態語の質感によって、変調が支えられている。「彼岸入り」が本意を超えて不気味に響いてくる。

水筒に波音のして花あやめ 友定洸太
菖蒲園にでも出掛けたのだろうか。遠足に水筒はありきたりなはずなのに、その中の波音を大きくすることで不思議な情感が湧きたってくる。音が立つことによって一瞬の静謐に空間全体が包まれるような感覚も覚える。

ふくらんでそれぞれ夜行バスを待つ 友定洸太
みな風が吹いて一様に服が膨らんでいても「それぞれ」である、という把握が面白い。待っているのが夜行バスというあたりに少し場末感もある。

友定さんは恐らく多作のタイプではない。だが身の周りを丹念に詠みこんでいる。これこそ俳句の基礎そのものではないだろうか。友定句を引き合いに出して「カタカナ言葉が多い」という批判が出るとしたらあまりにナンセンスだ。我々の生活はこんなにもカタカナ言葉に囲まれているというのに・・・。

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川嶋ぱんだ
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