ショートストーリー 転生したら女子高生の人面瘡だった件 第5話
「こっちです」
僕は声のした頭上を見上げようとする。やはり、体を思うように動かす事ができない。
「すみません、今、僕は体を動かせないようで見上げる事ができません。ですから、このままで失礼します。初めまして、僕は吉田健介と言います」
上の方に向かって落ち着いて会話を試みる。
「!?……。あの……私は川口美香です」
戸惑いながらの返事が返ってきた。少し、落ち着いてきている様子だ。しめた。今がチャンスである。
「川口さんですね。あの〜川口さん、先程も言いましたが、僕は交通事故に遭いついさっきやっと目が覚めたばかりなんです。だから、今の状況を僕に教えてほしいんです」
「わかりました……。私も何がなんだかわかりませんが、わかる範囲でならお答えします」
どうやら、お互いに状況の把握が上手くいってないらしい。今は一刻も早く情報を擦り合わせる必要がありそうだ。
「まず、ここはどこなんですか?」
「ここは私の家です」
「!?」
なぜ僕はこの女の家に⁇質問して早々、理解できない事が出てきたが、もしここがこの女の家であるならば、女が悲鳴をあげたのも納得の事である。自分の家でくつろいでいる時に、急に見知らぬ男の声がしたならば誰でもパニックになってしまう。
「そうでしたか……。だとしたら、すみません……急に驚かしてしまって。では、なんで事故にあったはずの僕がこの家にいるのかわかりますか?」
「わかりません」
あの驚きようを知ればこそ、予想はできた事である。仕方がない。
「では川口さん、今はいつ頃ですか?詳しく教えて欲しいです」
「今は、6月8日です。時刻は……えーと、夜の19時です」
「!?」
僕が事故に遭ったのは確か、6日の昼の事であった。どうやら1日半は眠っていたのか……。
最後に僕は1番に聞きたかった事を聞く。
「そうですか……。では川口さん、僕の体はどうなっていますか⁇僕は体が動かせなくて見る事が出来ないんです。僕の体は無事ですか?教えて欲しいんです」
「……」
女から返事が返ってこない。どういう事だ。もしかしたら、相当に悪い状態なのか?よくよく考えてみれば、体も全く動かせぬし、おまけに顔から下の感覚すら無いのである。冷や汗が頬を伝う。
「あの……。正直に答えて欲しいんです。覚悟は出来ています。僕の体はどうなっているんですか?教えてください!」
「……、顔しかありませんよ……」
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