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ショートストーリー転生したら女子高生の人面瘡だった件 第8話

     「僕は人面瘡です。」

 その日、一番の弱々しい声で呟く僕。目に映る事実のみが僕に吐かせた言葉。しかし、覆せない重い現実である。

「人面瘡⁇何ですかそれ⁇」

戸惑う声。女の頭がぐちゃぐちゃになっている事がはっきりとわかる。伝わる。
人面瘡が何か等、僕にもはっきりとはわからない。昔、漫画かなんかで見た記憶があるくらいである。ただ僕が知っている事はそれが妖怪であり、人の身体に顔として出ると言う事。そして、最後には寄生主を乗っ取ってしまう妖怪だった様な気がする。

「妖怪だと思います。人の体か何かに出来てしまう妖怪です」

僕は答える。

「妖怪⁇何でそんなものが私に……」

それは質問と言うよりは戸惑う女の独白に近かった。

「ですが、勘違いしないで欲しいんです。僕は人面瘡の様ですが、心まで人面瘡ではありません。先程も伝えた様に、僕は本当に事故に遭っただけであり、目が覚めるまでは吉田健介だったのです」

僕は自分にも言い聞かせる様にそう伝えた。 

「……。悪い妖怪では無いという事ですか⁇」

疑いの感情を持ちながらも女は答える。

「はい、そうです。僕はあなたに害を与える気など更々ありません。僕の目的はただ一つです。元の吉田健介に戻りたいだけです」 

「……」

女は押し黙る。僕の事を信じて良いのか計りかねている様である。僕は言葉を続ける。

「信じてください。僕には父、母、友達、犬、会社等まだまだ捨てきれないものがたくさんあるんです。僕はまだ僕である事を諦めていないのです」

赤裸々に本心を綴る。
 すると、少し女の感情が変化したのを僕は感じた。

「まだあなたは自分の人生を諦めていないんですね……」

何故だか寂しげな思いが僕を伝う。少しの静寂の後、女は腹を括った様に話し出した。

「わかりました、私はあなたを信じます。吉田さん」

僕は嬉しかった。何より名前を呼ばれた事がである。こんなになってしまった僕をまだこの人は、人として扱ってくれるのだと。この女の人生をめちゃくちゃにしてしまった僕をである。

「ありがとうございます…。ありがとうございます…。ありがとうございます……」

何度も何度も言葉が溢れてくる。こんなに心から感謝した事は生まれて初めてである。
そんな僕を見ていて初めて女はくすりと笑った。

「私の膝、ぐちゃぐちゃになっちゃってますよ。まぁすでに汚れてしまってますけどね。」

この女の笑顔が何よりも嬉しく感じた。

「じゃー、川口さん、今後の話をしませんか⁇」

「シャワーを浴びてからね。吉田さん。」

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