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コマラジ番組「タンゴ・エン・トキオ」 日本にちなんだタンゴ集の選曲①

コマラジ番組「タンゴ・エン・トキオ」 日本にちなんだタンゴ集の選曲について①

今年の1月1日と昨日3月5日の2回、コマラジの番組マーシー&マギの「タンゴ・エン・トキオ」に出演、それぞれ「日本に捧げられたタンゴ集」「日本にちなんだタンゴ集」としてアルゼンチンやウルグアイのアーティストたちが日本に寄せたタンゴをまとめて紹介した。ここにあらためてその内容をまとめておく。まずは1月1日分。

1.ブエノスアイレス=東京
Buenos Aires=Tokio (Julián Plaza) /フリアン・プラサ楽団(1993年)
...日本にちなんだ曲としてはおそらく一番有名な作品。オスバルド・プグリエーセ楽団は1965年、労音の招きで3か月以上にわたって日本全国で公演を行ったが、その時の印象を帰国後に、当時プグリエーセ楽団のバンドネオン奏者・編曲者だったフリアン・プラサが発表した作品。プグリエーセ楽団はもちろん、やはりプラサが編曲を提供していたアニバル・トロイロ楽団も録音、当時新進気鋭だったオスバルド・ピーロの楽団のレコードも出た。番組でかけるのを1972年のホセ・コランジェロ四重奏団の演奏とどちらにするか迷ったが、結局作曲者フリアン・プラサの1993年の自作自演にした。プラサは1968年にプグリエーセ楽団の他のメンバーと一緒にセステート・タンゴを結成し、ピアノに転向、その後セステート・タンゴを退団したのち自分の楽団で活躍、再びバンドネオン奏者に戻った。1996年に来日した際の記念盤にも「ブエノスアイレス=東京」が収録されているが、放送で使ったのはその前に制作したファースト・アルバムの方から。

Julián Plaza "Buenos Aires=Tokio" (EPSA Argentina)

2.ありがとう、日本、ありがとう
Arigató, Japón, Arigató (Edmundo Rivero)
/エドムンド・リベーロ歌、マリオ・デマルコ楽団(1967年)
...1967年、歌手エドムンド・リベーロはホセ・リベルテーラ率いるキンテート・グローリアと帯同して日本全国で公演したが、その時の印象を帰国後曲にしたもの。伴奏はアルフレド・ゴビ楽団やオスバルド・プグリエーセ楽団に参加し編曲を提供し、「エントラドール」「パタ・アンチャ」などの作曲者としても知られるバンドネオン奏者マリオ・デマルコ。曲はやや中国調な部分もあるが、リベーロの温かみが感じられる。この録音は残念ながら日本では発売されず、アルゼンチンでも4曲入り17センチ盤に収録されただけのレア音源となった。ジャケットは銀座三愛ビルの前に立つリベーロの姿だ。

Edmundo Rivero "Arigató, Japón, Arigató" (Philips Argentina)

 3.私の日本(ミ・ハポン)
Mi Japón (Carlos Lazzari-Juan Polito-Armando Cereminati)
 /フアン・ダリエンソ楽団、アルベルト・エチャグエ歌(1968年)
...ダリエンソがウルグアイのテレビ番組に出てこの曲を演奏している映像があまりに有名。https://www.youtube.com/watch?v=qOpj9DJ79Iw

しかしちゃんとスタジオでも録音されているのだ。1968年、飛行機嫌いで行かなかったリーダー、ダリエンソ抜きのフアン・ダリエンソ楽団は初来日を果たす。その際に用意されたのがこの曲で、1972年のダリエンソ楽団のツアーでも演奏されている。作曲は第1バンドネオンのカルロス・ラサリ、ピアノのフアン・ポリートの共作で、作詞はアルベルト・セレミナティ。日本語の部分はセレミナティの詞を、歌手アルベルト・エチャグエの娘婿だという日本人(たぶん日系人)が訳した。正直日本語訳が妙で、歌うための訳というよりは直訳っぽい。放送時には今年の「ラ・フアン・ダリエンソ楽団」のツアーでレパートリーに入っていると言った。実際フェルナンド・ロダスもだいぶ練習してきたらしいのだが、日本語が変ということで演奏されなかったようだ。残念。この録音は当時アルゼンチンでもアルバムに収録され発売されたが、日本ではそのアルバムは発売されず、一度だけベスト盤の最後におまけっぽく収録されたのだった。

Juan D'Arienzo "D''Arienzo en Japón" (RCA Víctor Argentina)

4.愛しい東京(ケリード・トーキョー)
Querido Tokyo (Alfredo De Angelis-Juan Pomati)
/アルフレド・デ・アンジェリス楽団(1966年10月31日録音)
...アルフレド・デ・アンジェリスは来日したことがないが、1965年のコロンビア国でのツアーが大成功した後、この曲を録音しているので来日の話ぐらいはあったのかもしれない。中国調はなく、いつも明るく華やかなデ・アンジェリスらしい曲調で、バンドネオン奏者のフアン・ポマティとの共作。

Alfredo De Angelis「デ・アンジェリス黄金のアルバム」(東芝)

 5.乾杯... 日本 Kampai... Japón (José Libertella)
/ホセ・リベルテーラ楽団(1978年)
...バンドネオン奏者ホセ・リベルテーラは1967年にキンテート・グローリアで初来日、その後も1974年のカルロス・ガルシア・タンゴ・オールスターズ、1978年のホセ・リベルテーラ楽団、1988年以降「タンゴ・アルゼンチーノ」「タンゴ・パッション」などでたびたび来日している。このトラックは1978年の来日公演の際に「津軽海峡冬景色」を日本のファンへのサービスとしてアレンジして演奏したのが好評だったため、(おそらくは帰国後)「北の宿から」「おゆき」「昔の名前で出ています」など当時の日本のヒット曲のアレンジを特集したアルバム「タンゴ・ミーツ・ジャパン」を制作、そこに収められたホセ・リベルテーラが日本に捧げて作った作品。すごく良い曲だと思うが、ただ日本の曲の中に1曲だけ含まれていたオリジナルなのであまり知られていない。(放送時にCD化されていないと言いましたが、この曲と日本曲のアレンジ数曲はホセ・リベルテーラの死後に発売された未発表曲集に収録されていました。失礼しました。)

José Libertella「タンゴ・ミーツ・ジャパン」(東芝)

 6.東京のバラ(ロサ・デ・トキオ)
(Orlando Calauti-Florindo Sassone-Lorenzo Spanu)
/オルケスタ・シンボロ・オスマル・マデルナ、
 エクトル・デ・ロサス歌(1968年)
...フォーエバーというマイナー・レーベルの17センチ盤でアルゼンチンでしか出ていない珍盤からの紹介。曲自体は1966年に日本公演を行ったフロリンド・サッソーネが、来日公演の印象を基にメンバーのバンドネオン奏者オルランド・カラウティと作曲、ロレンソ・スパヌが作詞したもの、サッソーネの自作自演(オスカル・マクリ歌)も1センチ盤でしか出なかったレア音源だが、このオルケスタ・シンボロ・オスマル・マデルナ(マデルナの死後にアキレス・ロジェーロをリーダーとしてマデルナ未亡人のためにマデルナの名を残したまま活動した楽団、この1968年の盤は特別に再結成した時のもの)で歌手エクトル・デ・ロサス(きしくもこの年にアストル・ピアソラ=オラシオ・フェレール作「マリア・デ・ブエノスアイレス」に参加する)が歌ったものはさらなるレア音源。 

Orquesta Símbolo Osmar Maderna "Rosa de Tokio" (Forever Argentina)

7.フジヤマ Fujiyama (Aníbal Troilo-Cátulo Castillo)(1975年発表)
/ジャクリーン・シゴー歌、フランコ・ポリメニ編曲・指揮(2012年録音)
...偉大なバンドネオン奏者・楽団リーダーのアニバル・トロイロは来日することはなかった(計画だけはあったようだ)が、没する少し前にこの「フジヤマ」を作曲、カトゥロ・カスティージョが詞をつけている。ただトロイロ本人は録音することなく、他の楽団や歌手も取りあげないままになっていたが、女性歌手のジャクリーン・シゴーの2012年のアルバムに収録された。

Jacqueline Sagaut "Homenaje a Troilo"

3月5日分放送については次稿で!
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貴重なアルゼンチンタンゴのラジオ番組、応援のほどなにとぞよろしくお願いします!

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