今年の"楽曲"いろいろ語り(「楽曲オタク Advent Calendar 2021」参加記事)
はじめに
こちらは「楽曲オタク Advent Calendar 2021」参加記事となります。
誘っていただいたなまおじさん、いつもありがとうございます!
ほかの記事も勉強になって面白いです。「あ、こういう曲あるんだな」「こういう考えがあるのか!」と勉強になります。ぜひ読んでみてくださいね!
企画自体の開催は知っていたのですが、どうしてもスケジュール的にどうかなぁ、熱量のこもった記事を出せるかなぁと思い悩んでいたところを、なまおじさんから背中を押され、やるしかないと思い書かせていただきます。
技術的なお話というのがなかなかできないので、どうしてもフィーリングに頼っちゃうお話になってしまうと思うのですが、約12000文字の濃厚note、皆さんに楽しく読んでいただけるよう精一杯頑張らせていただきます。
内容としては
「2021年の生活について」
「自分の曲を堀江晶太さんの楽曲に携わっている方に弾いてもらったらめちゃくちゃ凄いことになった件」
「今年よかった曲」
の3本構成です。真ん中が一番のトピックです。7割楽曲、3割関係ない話で進みますがかいつまみながら読んでいただければ幸いです。
プロローグ:2021年の生活について
楽曲に関する話を織り交ぜながら、せっかくですので1年の締めくくり行事でもありますので、2021年を軽く振り返ってスタートさせていただきます。
去年の末ごろからなんだかんだ忙しくなりつつある怪しめの兆候を感じつつも、本格的に忙しくなったのは2月の終わりごろ。
「パンケーキを食べに淡路島に行くんだけどお金がない」という問題にぶち当たり、某フリーランスの仕事請負サイトココ〇ラを経由して映像制作の仕事を集めだしたら想像以上に軌道に乗り、無事パンケーキを食べに行くことができました。
そこからも制作を続け、2021年に提供させていただいた映像数は100超、3日に1本ペースで提供することができとても嬉しいです。
というわけで、映像制作でMVを作る中で色々な素敵な楽曲に出会うことができたのですが、その中から数曲セレクトさせていただきます。
Catch You Catch Me / グミ
こちらのもちみかんさんの歌ってみたMVを制作する際に知ったこの曲。名前は聞いたことあるんですが「カードキャプターさくら」というアニメのOPテーマとのことです。
恥ずかしながら聴いたことがなくて、明るいアニメの明るい曲ではあるんですけど、どこか表裏一体に切ない感情があってとても深く感じます。
曲中に「運命だって お似合いだって」という歌詞があり、ドキッとしました。というのも、2021年5月にリリースさせていただいた拙作「ハツコイ=醒めない魔法?」にこのような歌詞があります。
拙作の「お似合いだって 釣り合いそうで」というのは「Catch You Catch Me」と比べると意味合いがけっこう違うんですけど、作詞をされている広瀬香美さんと失礼ながらフィーリングを感じてしまいました。
アレンジの本間昭光さん、J-POP界のレジェンドといえば、今も精力的に活動されていますし、本間昭光さんアレンジの今年の好きな曲でいうと「ハルガレ/MARiA」を挙げたいと思います。
じんさんの圧倒的なメロディーラインも素晴らしいですが、青春のどこか切ない残り香が味わえる繊細な旋律、アコギのさわやかなバッキングが新鮮でホッとする感覚を楽しめました。
「Catch You Catch Me」もそうですし、昔から愛されている曲っていうのは、こういう「ホッとする感覚」があるから今も変わらず愛されているんじゃないでしょうか?
なかなか往年のアニソンに明るくないので、来年は色々掘り下げてみたいです。
Sing Up! / ふじそば feat.妃苺
音楽事務所MONACAのクリエイターさんを愛する集団「MOタク」のコーラス部長的なイメージの強いふじそばさんのオリジナル曲です。
こちらの楽曲、そのMOタクの皆様がこぞって参加されたコンピアルバム「Why don't you eat MONACA? Vol.3」に収録されたこの楽曲。視聴動画を聴いた段階で「強スギィ!」と心の中の楽曲オタクの野獣先輩が叫んでしまいました。
メロディーがめちゃくちゃ良いっていうのと、楽曲の世界観にしっかり寄り添ったコーラス部隊が本当に美しい。「Sing up! 特設合唱団」どういう方法でディレクションされたのかはわかりませんが、合唱に明るいふじそばさんだからこそここまで纏め上げられたと感じます。
そして面白いのが曲の展開がめちゃくちゃ多いこと!これ、MV制作側としてはシーンの再利用が出来なくて困った困ったって感じです(笑)
映像制作者を困らせる曲を作りたいぞ!と思ったらいっぱい曲中で展開してください。Aメロ、Bメロ、サビ、Dメロが1番・2番・ラストですべて違ったりしたら死にます。
同じくMOタクのHappiyaさんという方のこれまた名曲「Awakening Star feat.月乃」のMVも制作させていただきましたが、こちらも展開がめちゃくちゃ多い!MOタクのルーツに展開が多い音楽があるんですかね?
ちょっと脱線させてください、改めてこの曲を聴いていると「歌詞凄いな」と思うわけです。こちらの歌詞は後述する拙作「#ファインダー越しの夢のセカイ」の歌詞でもアドバイスを頂いて、今回のアドベントカレンダー企画でも参加されてるめがねこさんという方が歌詞を書かれているんですが、ひとつ次元を超えている印象があります。
1番サビ「とろけだした光」という表現、何を食べていたら出てくるのでしょうか?歌いやすくて、印象に残って、フックがある歌詞という面でこの曲の歌詞にはひれ伏すしかありません。素晴らしいのひとことですし、身近に非凡な才能を持った存在がたくさんいることに刺激を感じます。
話を戻しまして、展開が多いというところですが、アウトロで段々リズム上がってくるのを思いつくのが凄いなと。高揚感がワーッて上がったあとにバーンっと終わるので、まるで自分も合唱団の一員になったのではないかといった感覚になります。
曲の展開が多ければ多いほど、効果的であればあるほど、「サウンドいいなぁ」「歌上手いなぁ」ってだけではなく、1本の映画を見ているかのような感覚が楽しめる、まさにこの曲は「1聴きで2度おいしい」的な曲です。
個人的な話になるのですが、中学では合唱部、高校ではオペラ部で活動していたので、胸に来るものがあります。青春時代、部活で音楽をされていた方にはぜひ聞いていただきたい、そんな曲です。
ゆるして!スーパースター☆/芽唯
こちらの楽曲、芽唯さんに頭が上がらないくらいお世話になっているとかそういうの抜きに、純粋に超いい曲だなと思い選出させていただきました。
近代のバンドサウンドよりルーツに近い感じ、奥田民生さんとかそのあたりを感じるブルース的な味わいを感じる曲で、誰が聴いてもいいな、と思える王道(オーセンティック)な一曲です。
(オーセンティックって表現は、この曲について語り合ってるときに青田圭さんが出していた表現を丸パクリしました。ごめん。)
所々に入るシンセ、ピアノの音色がめちゃくちゃいいですね。この2つの楽器のおかげで2021年の楽曲として違和感なく楽しめるんじゃないかなと思います。間奏もエモく作りこまれています。
自分自身VTuber楽曲は聴いてもVTuberの配信は見ないんですけど、仕事柄芽唯さんの配信はときどき拝見させていただくのですが、文脈を感じます。これが巷でよく聞く文脈なのか、といった感じです。これも歌詞を本人が書いてるからなのかなと思います。これが初めての作詞なのかは分からないんですが、口ずさみやすくていいですよね。
なかなか最近味わうことができない往年の青春系アニメのキャラソンみたいな安心感、王道感を味わいたい方、ぜひ聴いてみてください。
自作曲 #ファインダー越しの夢のセカイ について
さて、前座はこれくらいにして、この記事の本題に入っていきましょうか。
「自作曲もOKです」ということですので、今回は、この夏にリリースさせていただいた自作曲「#ファインダー越しの夢のセカイ」を軸にいろいろお話させていただこうと思います。
この楽曲では、今までお世話になってきた方々だけでなく、メジャーリリースされている楽曲に数多く携わっている西川ノブユキさん、ナツメ ユウキさんというお二方に参加いただきました。
このお二方に共通する点として、もちろん演奏がめっちゃ上手い、大好きっていうのもございますが、堀江晶太さんという作曲家の楽曲に数多く携わっているという点が非常に大きいかと思います。
最近は映像制作ばっかりしているので知らない方も多いかもしれませんが、僕は堀江晶太さんという作曲家がとても好きすぎて、堀江晶太・kemu速報というサイトを5年以上前から運営しています。もちろん非公式です。
もちろん僕だけでなく、いつも楽曲に携わってくださるみんなも大好きで、今までリリースしてきた楽曲はすべて影響を盛大に受けていますし、それを隠すつもりすらありません。
楽曲に携わってくださるイツメンのブロブさん、しょてんくん、青田圭さんと出会ったのも”堀江晶太”という存在があってのことで、この曲のデモを作ってる際に「ギターとベースを堀江曲に携わってる方に弾いてもらおう」と決意しました。
というのも、この楽曲というのは「夢」をテーマにした楽曲。僕らの夢もしっかり詰め込んだほうが絶対面白いよね、夢のような布陣で挑んで、数年前に色々あって落ち込んでいた自分に「生きていればこんな面白いことも起こるよ」っていうのを教えたかった、というのがあります。
というわけで、お二方について軽く説明させていただきます。
ギターの西川ノブユキさんは、バンド「アノアタリ」のギタリストとして活動されているほか、アイドル「=LOVE」など、数々のアーティストのバックバンドで活躍されています。
「アノアタリ」で一番好きなのは「ハコモノビジョン」という曲になります。激アツのギターソロと中毒性の高いメロとリフに注目です。
そして、一番語るべきは、伝説のアイドル「ベイビーレイズJAPAN」の楽曲レコーディング、バックバンドで参加されているというところです。
夜明け Brand New Days/ベイビーレイズJAPAN
伝説の楽曲「夜明け Brand New Days」のギターを演奏された西川さんに依頼させていただける日が来るとは思いもよりませんでした。
歌唱のリファレンスに提示した楽曲もこの楽曲(ほかには「ストーリーテラー(作詞・作曲・編曲:堀江晶太)」ですし、デモ音源ではアレンジ担当のブロブさんがギターソロの部分をギターソロを丸写しで提出されたりと、楽曲制作面にも多大な影響を受けている一曲となっております。
そのあたりも説明したうえで、西川さんの粋な計らいで譜割りなどを最大限「夜明け」にリスペクトいただいた、まさに「本家による本家リファレンスギターソロ」が実現しました。
また、技術的にそのあたりの話を詳しく知りたい方はブロブさんのnoteをご参照ください。
そんなギターソロ丸写しも含まれたデモはこちらからダウンロードできます(ツイッターのフォローが必要です)
演奏、メロディー、アレンジ、歌詞、歌唱… どれをとっても非の打ち所がない完璧な曲といえば「夜明け」が当てはまると思います。
そんな西川ノブユキさんのギターサウンドが届いたとき、皆で一斉に聴いてみたのですが、感動が止まりませんでした。これは「僕らの夜明け Brand New Daysだ!」と叫ばんとするくらいです、
西川さんサイドも恐らく僕らの好きな音楽を理解してくださったのでしょうか、ひとつひとつのフレーズが大好きなそれでした。個人的には各所各所のオブリが大好きです。
そして、ベースのナツメ ユウキさんは今年から本格的に様々な楽曲に携わられている新進気鋭のベーシスト。
果てしない空 / FAM
今年の頭にリリースされたこちらの楽曲でベースを演奏されたナツメさん。「誰なんだ一体」というのと、めちゃくちゃベースのゴリゴリ感がいいなと思いつつ速報でツイートしたらまさかの反応していただきました。
その後にナツメさんがベースで参加されたこの曲で、僕らは度肝を抜かれました。
ダフネ/Appare!
「なんだこのベース」
全然落ち着かない、終始歌うようなベースライン、しかもアウトロで大暴れ。こんなに気持ちのいいベースサウンドは初めての体感でした。
「#ファインダー」のアウトロは完全にダフネをリファレンスにしています。その中に、もうひとつ要素を詰め込んでいただきたいとオーダーさせていただきました。
イスカノサイ/ARAKI
脈を打つかのような深いスラップのサウンドがたまりません。カロリーが高いベース大好きです。
アニソンロックサウンドの貴公子とも名高いebaさんの強烈なアレンジを引き立たせるバリバリのベースサウンドと「#ファインダー」の曲調が合うのかは全く未知数でしたが、ナツメさんとの打ち合わせで「イスカノサイみたいなスラップが大好き」ということをお伝えしたら、アウトロ後半で入れていただきました。
打ち合わせで出た話なんですが、今年に入ってナツメさんはメジャーリリース以外の音源に参加するのが初めてとのことで、実際にナツメさんが参加された楽曲のspotifyプレイリストを見ても、拙作が緒方恵美さんとA3!に挟まれるという本当に恐縮な状態になりました。
そして、これはレコーディングが終わった後になるのですが、その後にナツメさんがベースで参加されたこの曲を紹介させてください。今年一番好きな曲かもしれません。
スカイラインファンファーレ!/Appare!
ナツメ節あふれるとんでもなく暴れるベースも素晴らしいんですが、曲全体、特にサビの「こういうのでいいんだよ」感わかりませんかね?
この曲の感想を勝手に引用しちゃうんですが、こういうのがあります。
玉置浩二さんの「田園」という曲は皆さんご存じかと思います。色あせない往年の名曲です。
流石にリファレンスで「田園」を提示しているとは思わないんですが、いい曲を追及し続けていくと往年の名曲の構成にたどり着くんじゃないかなと。
去年、アニソン作家の草野華余子さんのツイキャスで音楽に関する質問(エロい感じの曲はどうやって作れるか的な)をさせていただいたときに、好きな作家が好きな曲を掘り下げて聴くことが大事というのを教えていただきました。
「スカイラインファンファーレ!」が「田園」をルーツに感じるというのにつながるのかなと思いました。往々にして、いい曲を作ろうとすると参考に最近のヒット曲を聴きあさったりするものですが、案外往年の名曲、オーセンティックなものが教えてくれるのかなと最近感じています。
話が脱線したりしましたが、そんなこんなで、「#ファインダー越しの夢のセカイ」では、僕らの憧れのプレイヤーさんに演奏していただき、僕らの夢がぎっちり詰まった圧倒的な曲に仕上がりました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
「自分の好きな曲に携わっているプレイヤーに演奏していただく」ことほど、楽曲オタク冥利に尽きることはありません。こんなこと今後一生出来ないと思います。それを覚悟で今回行った、というのがあります。
ということで、結構楽曲とは離れる話ですが、この曲の文脈について軽くお話させていただければと思います。
というのも、この曲は初めて自分のことを題材に描いた曲で、今後の決意表明に値する曲だからです。勿論ラブ要素とか各種設定とかは歌詞を成り立たせるために後付けしたものですが、数年前に学校のサークルみたいなところで一緒に映像を作っていた人がいて、編集技術とかそういうのじゃなくて「制作に対する心構え」的な側面ですごく影響を受けたことがあります。
活動していた時期は1年半ちょいくらいで、あまりにも影響が大きすぎてそれから積極的に動画を作ろうという気は全然なかったです。自分の曲のMVも予算がないので自分で作ってただけです。
ただ、先述のパンケーキ代捻出のために映像制作を始めたことで、改めて前向きに取り組むことができたときに、ふと昔のことを思い出して作り出したのがこの曲になります。
昔活動してたときに掲げた目標に「動画で感動を」というのがあります。この曲のMVでも、提供させていただいた映像でも、「感動しました」という感想をいただくたびに「あのときに見た夢はずっと続いてるんだな」「あの曲書いてよかったな」と思います。
ラストの歌詞です。「君と見た夢も 叶うように」
これを死ぬまで追及するために、今日も明日も、人生は続いていきます。
おまけ:今年よかった曲
かなり毛色の違うことを書き連ねちゃったので、それっぽい企画もやっておきます。所謂「今年のXX選」みたいな感じ
ちなみに、こちらのコーナーで紹介させていただいている楽曲のほとんどは、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんがオーガナイザーを務める「アニソン派!project」で紹介された楽曲となります。そのため、クレジットなどもそちらで紹介されたものより拝借させていただいています。
アニソン派!ホームページ
アニソン派!Twitter
アニソン派!ラジオprojectホームページ
アニソン派!projectでは、毎年数回開催されている「クリエイタートークセッション アニソン派!」のほかにも、毎クール展開されている「アニソン派!おすすめプレイリスト」、さらには最近開始され、先述の堀江晶太さんもゲスト出演された、Spotify Music+Talkで公開中「アニソン派!ラジオproject」など、アニソン大量消費時代のこのご時世に、「良いアニソン」をシーンに深く広げていくためにマルチに展開されています。
僕はれっきとした「アニソン派!大好き人間」です。第1回から先日開催の第5回まですべて参加させていただいています。
この1年、映像制作の依頼でなかなか曲を深堀りできない時期が続きましたが、移動時に先述のプレイリストをちょいと流してみたり、イベントで「これ良いな」と思ったのを深く聴いてみたりと、アニソン派!の各種コンテンツに触れることによって、あまり知られていない良いアニソンをサクッと知ることができました。
別にアニソン派!の回し者ではございませんが、ぜひ皆さんも「アニソン派!project」を覗いてみて、よいアニソンを知るきっかけを作ってみてくださいね。
というわけで、1曲づつ聴いていきましょう。
お注射しちゃいます/ハコニワリリィ(Hanon)
自分自身の音楽活動のリファレンスに「HoneyWorks」が常々あります。ハニワといえば青春さわやかロック、甘酸っぱい恋愛!そんなイメージを覆してきたのがこの楽曲。
今風のアコースティックだけどどことなく無機質なサウンドのなかに、中毒性の高いメロディーが相まってリピートが止まりません。
ボーカルもめちゃくちゃいいです。繊細な少女的な声と、狂気のある迫力のある声の使い分けにビックリするんですけど、その後も各パートごとに歌質を変えています。表現力がズバ抜けてすごいですね。
今年初めて人間ボーカルの曲を作ってみて思ったのが、ボカロと人間の決定的な違いというのが「エゴ」じゃないかなと。もちろんボカロでも人間顔負けの表現というのは可能ですが、それは良くも悪くもこちらのプログラミングの範囲内であって、どうしてもエゴはないわけです。
人間ボーカルですと、そこにはボーカルディレクションを行う制作側のオーダーが最優先される中にも「私、こう歌っちゃおうかしら」みたいな歌い手側のエゴが出てくるわけです。こういうエゴが出てくることで、プログラミングできない化学反応が発生し、とんでもない作品が出来上がる。
この曲、テンポ感、メロの動き的にボカロに歌わせて展開しても超いい感じで人気が出るであろう曲であるんですが、敢えて人間ボーカルにすることによって、先述のとおり「各パートごとに歌質が変わっている」というのが感覚的に分かってきます。それも、1番、2番、ラストとすべて微妙に異なっていることが。
ボカロにはボカロの、人間ボーカルには人間ボーカルのいいところがあるんだな、といったことが間接的によくわかった一曲でありました。
Galaxy Anthem/ディーヴァ(Vo.八木海莉)
自分はストレートな曲が大好きなので、なんとなく「最近の神前暁さんの曲ってアカデミックで複雑なんだろうなぁ」と優先的に手が伸びませんでした。
全然それは思い違いでした。もちろんアカデミックで複雑な部分はありますが、純粋にストレートにいい曲です。こんなに美しくキレイな曲、久しぶりに聴きました。
透明度の高いピュアなボーカルをまとうかのように純度100%で紡がれるストリングス。宇宙を感じる壮大なサウンドのなかにドンと鎮座する王道のメロディーを感じて安心します。
現代アニソンの母ともいえる神前暁さん、母なる王道のメロディーにひれ伏すばかりです。あと3:10のギターソロの「ウヴンッ ウヴンッ」ってところ好き。
ミス・コンダクタ/キィ(CV:峯田茉優) or リグレット(CV:香里有佐)
カリギュラ2といえば、お馴染み堀江晶太さんの楽曲も収録されているということで、CDが同梱されているゲームの限定版(16000円)を購入して開封したらクレジット全然載ってなくて悲しくなった思い出があります。次はクレジット書いてください…
というわけで紹介するのは「ミス・コンダクタ」という曲です。ボカロPのツミキさんが送るこの曲は、全然人間ボーカルに寄り添ってないけど圧倒的表現力&歌唱力でとんでもないケミストリーを生み出した一曲です。
ボカロ曲を声優が歌うことでとんでもない化学反応を生み出す例として往々に挙げられるのが「ニセモノ注意報/東山奈央」ですが、それの令和版が現れたぞ、という感じです。
「ニセモノ注意報」より全然歌いやすい気はしますが、難易度は明らかに高い「ミス・コンダクタ」を二人のボーカリストが歌いあげていますが、おすすめはキィ(CV:峯田茉優)バージョン。
ある「一点」を超越したことで初めて現れる、想像もつかない狂気的な歌声がラスサビで味わえます。最初から最後までノンストップで駆け巡る「中毒性のナイアガラ」を感じられる名曲です。
パラレルモーション/ORESAMA
マジでどうでもいい話にはなるんですけど、個人的にORESAMAのぽんさんの顔がタイプということもあって選出させていただきました。
ORESAMAは全曲ブレてなくて、唯一無二のアーティストかつ大衆向けのキャッチーな音楽で本当に素晴らしいんですが、この「パラレルモーション」はその集大成を感じました。
ワクワク感あるサビに向かうために全力で抑えるAメロ、Bメロ。まさにパラレルな二つの世界を行き来するような感覚が味わえる、まさに宇宙旅行のような一曲です。ファンクな雰囲気もいいですね。
ぽんさんがかわいいのでMVも見てください。
熾火/楠木ともり
「声優アーティスト」の方が作詞作曲されることは往々にしてあるのですが、ここまでゴリゴリに世界観作り上げて専業作家みたいな曲を怒涛の勢いでリリースしていくのがあり得ないです。
色眼鏡を完全に捨ててしまいたくなる、どうせなら「声優アーティスト」ということを知らないままでいたかったというくらいに圧倒的な曲になります。
楠木ともりさんのバックグラウンドを良く知らないのですが、もともと音楽に造詣が深いのでしょうか?こういう曲は、メロディーだけと言ってもある程度楽器を演奏できないと作れない気がします。
アレンジも凄まじいです。全力で凝りに凝ったフレーズ、仕掛けどころ、圧巻のひとことです。2番終わりのスリリングなストリングスから突如ピアノソロに入る部分、緊張と緩和をうまく使い分けていて毎回鳥肌が立ちます。
阿修羅ちゃん/Ado
最後に、国民的ヒットシンガーのAdoさんが贈る、言わずもがなの名曲「阿修羅ちゃん」を紹介させていただきます。
人生で初めて買ったアルバムが「世界征服/Neru」ってくらい、この曲のコンポーザーのNeruさんの曲はもともと大好きで、その中でも好きなタイプの曲で攻めてきてうれしかったです。
この曲の最大のポイントは「ブラス隊の音が良すぎる」ところです。ブラスって打ち込みが多いです。例えば同じくNeruさん提供曲でブラス中心の「人生は吠える」という曲は恐らく打ち込みだと推測されます。
打ち込みでも全然良いんですが、生になった瞬間煌めきというか、アタックのキレの良さに圧倒されます。
この曲は夜、バイトから帰るときによくリピートしていました。生きていれば少なからず苛立ちや怒りがあるもの。自分の場合、特に夜にその波が訪れるので、人目のない帰り道に口パクで身振り素振りで歌うふりをしながら闊歩することが最大のストレス解消法になっていました。
そして、これ書くか相当迷ったんですけど、ここじゃ大きな声では言えないようなお店に行ったとき、部屋の中のBGMで3回くらい「阿修羅ちゃん」が流れてめちゃくちゃ気が散りました。
いい感じの雰囲気になっても、最高のブラスイントロが流れるたびに「やっぱブラス生音いいなぁ」という気持ちになるし、全然脳内でクレジットが暗唱されるし、しまいには「骨の髄までしゃぶって」ってこのタイミングで聴かされるのかよ!と一生忘れられない思い出ができました。
阿修羅ちゃんは本当にいい曲ですが、BGMを設定した方、「ねえ、あんたわかっちゃいない」とだけ言わせてもらいますか。
さいごに
自分の中でひそかに「楽曲を語る」ということに懐疑心を抱いていました。それは「曲を知るなら曲を聴いたほうが一番早いんじゃないか」と思っていたからです。
ですが、いざ書いてみたり、参考にほかの方の記事を拝読していると「ここいいな」と思う点や、曲に関する思い出を活字で遺すことで改めて感情が整理されてさらに上の段階で曲を聴くことができるかなと感じました。
そんな貴重なことを感じとるきっかけを作ってくださった、主催者のなまおじさん、そしていつもお世話になっている皆さんに感謝の意を表して、記事を〆させていただきます。
2022年もよろしくお願いします!