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counterclockwise

曇りのち雨

小雨だった筈が一気に振り出して来た
ワイパーがゆっくり水滴を払いのける

スカイツリーが霧がかって
ライトアップが紫がかってたり赤くなってたり
より幻想的に、綺麗に見えた

助手席に乗る自分の口から出る言葉が遠く感じる
けれど、確かに話が進んでいる

どうして車の中だと
金額の話が生々しく感じないんだろう
お互い前を向きながら話をする事が出来るからだろうか
自分の価値が上がったのを発される数字で感じながら
努めて平坦に返答する

一通りの空白のあと
少しの演出を混ぜて淡々と
したことのない話をした

10年以上一緒に仕事をしている仲だけど
こちらにもあちらにも、しない話もそれなりにある
何でも話してほしいなと思う割、
そういったラインが不思議な距離感で保たれている

そういう距離感がきっと
長く一緒に働けるコツなのかもしれない
9割の本当、1割の淀みを知らない振りする事もする

今回の演出はしない方が良かったかとも少し思った
事実の純度が高く混じりすぎている

事なきを経て
金を稼いだ先に何を見るか、みたいな話をしながら
距離は上手に保たれているだろうかを考えながら
笑顔で何か相槌を打った

晴れ

気温が落ちて来た夜道を歩く
暖かな恰好で家を出たから寒さは大丈夫
shing02聞きながら仕事に向かう
luvがとてもいい、郷愁というか秋を感じる

道路を渡る時、遠くから来る車のヘッドライトの光が
近づくにつれてどんどん強くなってきて吸い寄せられそうな、
そこには変な救いみたいなものがあるような
なんだかふわっとした気持ちになって足が止まる
ぼんやりそれを見てた

今、シカの気持ちだったんだろうか
奴らはカーブの終わりに割と散らばっていて
見つけたこちらはブレーキを細かく踏みながら
車が滑らない様にギアを落として減速する

ハイビームは逆効果で、ぽかんとした目で立ち止まるだけ
なんかそんな感じだったのかも
そのまま轢かれた個体もたまに見た

別に元気である、メンタル云々もない
でも急な眩しさはなんだか不思議な暖かさを感じて

鹿が轢かれるまでの時間を考えても仕方がない
目的地に着くころにはすっかりそんな気持ちは消えていた
ただ、本当ならこういう時はきっと家にいた方がいい

暖かいものが必要なのかも
摂取はしてる筈なんだけどさ

天気知れず

合間の待ち時間、古い携帯に電源を入れてみた
暫くの沈黙のち携帯は息を吹き返す
こんなんだったか、みたいなノスタルジーさが湧く

止まったままのキャリアメールを少しスクロールすると
まるで自分が別の人間みたいな会話をしていた
顔文字、絵文字も変えていて
論調も人に合わせて変わる

人は変わる、根本は結局変わらないみたいな事を言うけれど
ロングスパンで見れば割と簡単に変わってるのかもしれない
実際のところはわからない、随分と素直になったものだけど
前に戻りたいとは思わない

変わらないと思っていた事が、実は自分の都合よく記憶が改ざんされていて
苦しかった筈の記憶が実はそうでもなかったり
そんな事言ったか?みたいな事も当時を知る人たちから口にされると
感覚がよくわからなくなる、だって当人は覚えていないんだから

古いiphoneをドラレコ代わりに使ってた事もあって
音声を上げていくと音が出た
マイクの質が今と違うのか
自分の声すらなんだか違う人みたいだ

よく喋る他人
でもよく聞けば自分の声
どういう気持ちでこの時いたんだろうね

思い出にもならなかった断片は綺麗に初期化した
綺麗に忘れてね、という言葉だけ記憶にぶら下がっている
多分それもいつか溶ける、それでいいと思う

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