editorial note
ちょっと無粋な様な気もするけど
あんまりそういうことする機会も無いので
ぼんやりミキサー側の思考を思い出してみようかなと思う
と思ったら過去に書いてたみたい
その時と今との対比もできるのかも
oqoqのYou a(e)nd meというアルバムの
悩みの種という楽曲のミキシングをした話
聞きながらどうぞ
https://lnk.to/DbgOfX
大元はデモ版の制作工程をふんわり聞いていた所から
歌詞がついて一気に好きだったくじらを越えた
個人的に気持ちの振れ動きがとてもある時期だったりもして
余計に好きになった記憶がある
歌詞をよりちゃんと聞くきっかけにもなった
しれっと染みる事を言う奴だなと思う
アルバムの制作をする時あたりだったか
悩みの種がアルバムに入る事を聞いて
こっちから触らせてほしいなーみたいな事を言ったら
すんなりOKが出た、ちょっと笑った
そんな訳でやる事になった
油絵は全く出来ない
やったところで恐らく大変な事になる訳だけど
見るのはとても好きだ
音を混ぜる時にもそんな要素があると思っている
どうやって色彩感を出すか、混じった色はどうなのか
陰影のつけ方、ふくらみ、筆の流れ、そこに残る感情線
絵具の剥がれ落ち方、割れ方
どう色を見せるかをとても強く考える
歌詞から、楽器から色んなケースを連想して
繋ぐ、話のつじつまが音と結びつかないようなら組み直す
幸い今回はデモがあるから
予めの色合いやテーマを膨らませて大きくする事にした
制作者が見ているであろう景色、色合いに対して
ある時はフォーカスして
マクロの視点だとこうなりますね
ある時は別の視点から見たらこうなりますよね?を提示して
見えるように音を配置していく
見えている景色が同じとは限らない
だから面白くもある
楽曲によって、音像を横に長い四角の箱にするのか
立方体にするのか、それとも球体にするのか
その辺りも考える
今回はモルワイデ図法みたいな膨らませ方をした音像にして
瞼が閉じるように圧縮される瞬間や弾ける瞬間
ゆっくり瞼が開いて光が入る感じだったよ、にしたかった
入れモノが決まればそれに合わせて音を削り出す
ダイナミクスがあるものに対して制約をつけるパートと
揺らすパート、響かせる帯域を作る為に削る
光を当てるために影を作るやり口が割と好きだ
依り代になるであろうパーツを探してアタリをつける
全部に意味があるはず、それがノイズでもそう
厳選してクローズアップする
シェイプするのか、ワイズするのか
大きく出すのか、ゆっくり来るのか、とか
残響で時間軸の世界を作る
それがどういう世界なのかが自分なりに見えてくると
いい感じな気がしてる
ここでも適切な広がりと狭め方を考える
見えている景色がここも同じとは限らない
ここはひたすら寄り添う
なにが本当は言いたいのかの裏を思考する
残響の付け方はそれ位色んなものが変わる
ちゃんと思考に対しての結末がクロスするとにっこりする
すれ違うのは話が変わる
一番クローズアップしたいところで
双方の解釈が違ったところが面白かった
そういう場合は製作者の見え方に対してズームアップする
原案ありきで話が進むものに対して我の押しつけはしない
こういう振れ動きがあると
良いものになる事をより確信する
沢山数値のあれこれを扱う事になるけど
そんなものより手触りや温度感を大事にしたい
ミックスはアートなんて風にも言われるのは
きっとそういう所なような気もするけど、大仰だとも思う
アーティストとやるなら、アートで受けるのが普通では
そういうグラデーションは作れたと思う
たかが音量調整、されど音量調整
扱う結果ひとつで全部が生きるし、全部が死ぬ
送り出した後は聞く人でひとつひとつ物語が変わる
折角なら出来る限りの大音量で聞いてほしいなと思う気持ち
制作室でトラックダウンした時の感覚が
少しでも伝わると嬉しい
マスタリングの視点はまたいつか
こっちはまた全然別の感度の話
CD側を是非拝聴下さいな
そっちもそっちで結構あれこれやってます
改めて
You a(e)nd meリリースおめでとう
ダブルミーニングを考えながら悩みの種を混ぜてたから
ちょっと感動しましたわ
少しでも華を添えられたようなら何より
またどこかで接点がつくといいね
こちらもそれ迄により精進します