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おとーちゃんのチャリ

新卒のビンボー時代に
近所の自転車屋さんで買った
安い自転車がボロボロになってきた。

ブレーキをかけると変な音がするし
かごはサビで少し外れかけていて
ぶつけまくって後輪の泥除けはボロボロだ。

次の自転車を買おうかなぁと模索中、
ふと父が乗っていた自転車を思い出した。

いや、正しくは
自転車を自慢する父が可愛かったなぁ
という記憶を思い出した。

7ヶ月前に、
久しぶりに地元に寄るタイミングがあったので
両親とランチだけでもしようか、
という話になった。

滅多に会えない娘のために
父は仕事の合間を縫って出てきてくれて、
母は嬉しそうにおすすめのお店へ案内してくれた。

顔を出すだけで喜んでくれるのは
やっぱりすごく嬉しい。
そして、そんな人たちを目の前にすると
頑張っている自分を知ってもらって
もっと喜んで、褒めて欲しくなる。

仕事で何が大変で、これが嬉しくて、
ランチ中に沢山話した。

まるでちっちゃい子の
「こんなことできるんだよー!みてー!」
っていう褒めて褒めて攻撃の
大人バージョンだ(笑)

思い返すと自慢多めの
鼻につく話をしてたと思う。
でも両親は「頑張ってるんだねぇ。良かった。良かった。」とひとしきり話を聞いてくれた。

別れ際、父が自転車で来たというので
駐輪場まで着いて行った。
昔に使っていた自転車を買い替えて
おっちゃんサラリーマンが乗るわりには
小ぶりな緑の自転車に乗っていた。
「自転車替えたんだね。」と言うと、
「綿半(※ホームセンター)で安かったんだよ。でも職場の子にかわいいってなぜか好評なんだよ。」と嬉しそうに話す父。

私の仕事自慢に対抗してかは分からないが、父も自転車自慢をしてきた。

緑の自転車に乗って職場に戻る父の後ろ姿を見送ってサヨナラをしたが、その後ろ姿が何とも可愛かった。

安く手に入れて、職場の若い子に褒められて、そんな自転車を愛用している父。
いいお買い物だったねぇ。
良かった。良かった。

全然鼻につかない、可愛い自慢だったなぁ。


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