最近のホームスクーリング映画について(作品編)
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ホームスクーリングとは
今回は『ブリグズビー・ベア』Fan×Zine 発売記念ということで、「ホームスクーリング映画」を取り上げます。
「ホームスクーリング(Homeschooling)」とは、ざっくりというと「学校に通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行うこと」です。
2016年には全米で約230万人の10代がホームスクーリングを受けたと言われます。エマ・ストーン、ライアン・ゴズリングの2人もそういう時期があったそうです。
「ホームスクーリング映画」というと2つのことが考えられます。
1つ目は映画自体がホームスクーリングの役割を果たすもの。
例えば、歴史、科学などをテーマにした作品を鑑賞することで、勉学と同等の効果を発揮できる映画というものです。
2つ目はホームスクーリングそれ自体を扱った映画です。
2018年公開の『ブリグズビー・ベア』は上記2つを満たしている希有な作品の一つだったと思います。
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今回は2010年代の北米が舞台となったホームスクーリング映画を超ざっくりと振り返ります。
1.自宅学習がテーマの2作品
最初にホームスクーリングが主題として扱われた2作品を紹介します。
1本目は2013年公開の『ムービー43』です。
この映画は最低映画に与えられるラジー賞で作品賞を受賞しました。他に監督した13人と脚本を書いた21人も受賞しています。何故こんなに数が多いのか?複数の監督が撮った短いコントが合わさった形式だからです。
この中に『自宅学習(Homeschooled)』というまんまのタイトルのコントがあります。ある夫婦が自分の子を学校で教育せず、家で学習させていると話します。それを聞いた他の夫婦が学校でしか学べないものもあるのよ、と言います。すると、それらのことも家で学ばせるんだと返します。
彼らは自分の子に家で恋愛やイジメなども経験させていたのです。こんな風に育てられた子が2階から降りて来ます。どんな子になったのか?というのがオチとなっています。
2本目は2019年公開の『リアム16歳、はじめての学校』です。舞台はカナダです。アメリカと同様にホームスクーリングがあるんですね。ちなみに原題は「Adventures in Public School」です。
16歳のリアムは母親から家で教育を受けており、学校に行ったことありませんが、高卒認定資格を取得するためのテストを受けに地元の高校に行きます。そこで会った美少女に一目惚れしてしまい、「彼女と同じ学校に通いたい」という思いからわざと試験に落ちて、学校に通うことになります。…といった内容です。
1本目との共通点は親が自宅で学校で経験することを教え込もうとするところがありました。
2.自宅学習から学校へ
次の2本は自宅で学習していた子を学校に通わせるという内容です。
1本目は2018年公開の『ワンダー 君は太陽』です。主人公の男の子は顔の形が変形した病気にかかってしまっており、両親は自宅で勉強させていましたが、学校に通わせることを決める。そこで様々なことを経験する…といった内容です。
もう1つは『gifted/ギフテッド』です。2017年に公開されました。こちらは数学に関して、天才すぎて、普通の学校は合わないと考えられていて、家で勉強していた女の子が通学することになる。…といった内容です。
両方に共通してるのは家族の映画ということです。「ワンダー」は主人公の子だけでなく、家族を含めた周囲の人たちも描く群像劇風のスタイルになっています。「ギフテッド」も子どもだけでなく、周囲の大人の秘密が次第に明らかになっていきます。
どちらも単純な感動作になっていないかと思います。
3.母親と子ども
次の2本は母親と子の関係性を強く描いた作品です。
1つはグザヴィエ・ドラン監督『Mommy/マミー』です。2015年公開でした。ADHDを抱えた息子とその母親の物語です。学校に通うのは難しいと判断されます。教育に関しては休職中の近所に住む教師に任せたりします。そんな彼らの人生を追う…。といった内容です。
もう1つはリメイク版『キャリー』です。2013年に公開されてます。家で母親から偏った教育を受けていた子が学校に行って、酷い目にあったりする…といった内容です。
ホームスクーリングとなると家族と向き合う時間がどうしても長くなってしまいます。それがホームスクーリングの特徴です。その特徴は完全にホームスクーリングやがな!って話です。
4.父親と子ども
この2本は父親が特徴的な作品です。
1つ目はCaptain Fantasticという原題で日本語では『はじまりへの旅』でした。2017年に公開されています。
内容はヴィゴ・モーテンセン演じる父親が子どもたちを学校に通わせず、RVに乗せて、旅をしながら、教育を施す…というものです。
もう1つは『ガラスの城の約束』です。去年、2019年に公開されています。
こちらはウディ・ハレルソン演じる父親が子どもたちを学校に通わせず、RVに乗せて、旅をしながら、教育を施す…というものです。
この2本は似ていますが、後者は実話で、この父親に育てられた子どもが書いた回顧録が原作となっています。
私も子供の時にテレビでこんな家族を見たことがあります。野生で暮らしている感じで、ドラえもんは知っているか?サザエさんは見たことあるか?などと質問されていたのを憶えています。
5.その他
2011年公開の『ウィンターズ・ボーン』はアメリカの山奥に住む少女が弟や妹に学校に通わせられず、代わりに勉強を教えざるを得ない状況になっていました。
日本未公開ですが、ドキュメンタリー映画も存在します。2015年の「Class Dismissed(受け入れられなかった授業)」は従来の学校制度に不満を抱いた、ある家族は2人の子供を学校から退学させ、教育を自分で行うことにした…。といった内容ですが、こちらには背景を説明する必要があります。
2019年には現在のホームスクーリングの状況を追った「Schoolhouse Rocked: The Homeschool Revolution」も制作されているようです。
6.ブリグズビー・ベア
ここで改めて『ブリグズビー・ベア』の特徴が際立ったかと思います。というのも、この映画の場合は教育番組を通して、学ぶ作品だったからです。他は主に家族に教えられていました。ブリグズビーでも「家族」との会話はありましたが、主はビデオです。
最新のドキュメンタリー「Schoolhouse Rocked: The Homeschool Revolution」にもビデオ映像で学習するというブリグズビー式教育が採用されているかもしれません。ビデオで教育なんて昔からあっただろうと思われるかもしれませんが、あり得ません。断言します。このクマのキャラクターは唯一無二だからです。
『ブリグズビー・ベア』をご覧になった方もそうでない方も、
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ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。
次回はこれらの作品のパンフレットをレビューするパンフ編です。