フェルメール17世紀オランダ絵画展 【展覧会report】
以前も、同じ大阪市立美術館にて、フェルメール展が開催されたことは記憶に新しい。
その時は確か、「牛乳を注ぐ女」がメイン展示だったのではないだろうか。
フェルメールは、日本では「光の画家」とか言われて、その作風にファンも多い。
しかし今回の展示は一風変わっていた。
完成された作品に、
実は修正された跡があって、
その修正前の姿が修復された…
というのだから。
しかも、修正したのはフェルメール本人ではなく、その後の持ち主だったということまでわかったのだと言うからびっくりだ。
そして、修復された絵画には、
修復前ただの壁だったところに、
キューピットが描かれていたのだ。
主役だったはずの手紙を読む女性より大きいサイズのキューピッドが、どん!と現れたその作品には、何やら不気味さと言うか、不穏さが漂っているように見えた。
解説によると、仮面を踏みつけているキューピットは、偽善や不義に打ち勝った真実の愛、を表しているらしい。
すなわち、この絵は、今なら漫画の吹き出しに「私たちの愛はホンモノよ」という女性の心の声が表されているようなものだろうか。
修復前の、静かな佇まいとは全く違った印象に、度肝を抜かれた気分だった。
今回は、フェルメール以外の17世紀オランダの画家達の作品群がたくさん展示されているのだが、ほとんどすべてに、モチーフが何を象徴しているか、という解説がある。
この時代、それまで主流だった宗教画が影をひそめ、静物画や風景画、人物画が多く売れたとのこと。
人々は、その絵の技巧や雰囲気を楽しむだけでなく、描かれたモチーフに秘められたメッセージを読み解くことを知的な遊びとして楽しんでいたらしい。
楽器=愛
鶏=娼婦
着飾った女性=不貞
リンゴ=贖罪
手をつないだ夫婦=貞節
折れた大木=万物には終わりがあること
etc…
そういった象徴を読み解いて
いったいどのような会話がなされていたのか
想像すると、何だか面白かったし(夫によれば、こういう絵は当時一種のポルノだったらしい)、絵の楽しみ方の幅が広がったと感じた。
絵画の展覧会って、大抵「こういう技法を用いている」「この構図がすばらしい」といった技術的な部分だったり、
「何か伝わってくるものがある」といった、自分の心を揺さぶられているかどうかという印象みたいなものを鑑賞する場所だと思っていた。
「上手だな~」というだけで終わったらいけない、という変なプレッシャーもあって、若干苦手感もあった。
でも、人類にとって絵は、大昔から、メッセージを伝える手段なのだ。
歴史画は、その国(権力者)が国民をまとめ、後世に自分の功績を伝えるためのものだったのだろうし、
宗教画は、伝道や説教に用いられたのだろう。
そして、このような風景画は静物画は、
市民(貴族?)にとって一種の娯楽のような
ものだったのかもしれない。
その絵が、当時の人々にとって、どういう存在、どういう役割を持っていたのか…という視点で見るのも、面白いなぁ、というのが今回の、一番の収穫であった。