ショートショートバトルVol.3〜「夜明けの月に」西軍(木下昌輝、水沢秋生)
(お題:謝罪)
第1章(木下昌輝)
「誠に申し訳ありません」
俺は、月に向かって叫んだ。そして、深々と頭をさげる。
マニュアル通りの斜め四十五度。前髪が夜風にゆれる。すぐそばにあるどぶ川の香りが鼻をつく。そして、心の中で十秒数えてからゆっくりと上体をおこす。深呼吸をひとつして、ゆっくりと家の倉庫から出してきたパイプ製の折りたたみ椅子に座る。
これでいいのだろうか。この謝り方でいいのか。これで許してくれるのか。わからない。もし、許してくれなければどうなるのだろうか。