ぱれっと通信#18
1990年9月22日の会報です。
ついにきましたね。
『だれも知らない小さな国』
佐藤さとる 著 村上勉 絵 講談社
やはり日本人の書くファンタジーとあって、たくさんの子ども達に受け入れられやすい作品のように感じます。
私も子ども時代に読んで、三角地帯のような場所をこっそりさがしていたな。コロボックルが本当にいると思ってたよ~。無邪気だったな。
後半は社会問題が顔を出しますが、子ども向けの本だからこそ、それは必要な気がします。小さいうちから社会の違和感に気づくことは、自分たちの未来がどうあるべきかを考えることにつながるから。
この本が最初に書かれたのは1959年。
60年以上が経過していますが、恥ずべき社会になっていないでしょうか?
さて、会報ではいぬいとみこさんの
『木かげの家の小人たち』 福音館書店
も紹介されています。こちらは「反戦思想が貫かれている」とあります。
さらに会報#17で取り上げた『床下の小人たち』メアリー・ノートン作と比較した文章が、次のように記載されています。
「日本に生まれた小人たちはノートンの小人とは違って、人間の側から書かれています。小人たちとは 我々が苦難や困難にめげずにしんぼう強く持ち続けるべき価値のシンボルなのかもしれません」
わたしたちの中に、小人たちの存在がある ということでしょうか。
最近の朝倉かすみ著『よむよむかたる』文藝春秋 では、高齢者の読書会が舞台です。作中の読書会では『だれも知らない小さな国』が題材になっています。その年齢にならなければ出てこないような解釈が展開されていて、読んだときの年齢で味が変わる1冊で何度もおいしい本なのかなと感じました。面白いね。