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彷徨えるライオン Prolog #01

 「神話の外典」

 天界で知恵の実を齧った者の末裔とされる人間と、その理とは異なる多様な種族が地上に入り混じる様相を呈してから四千年以上が経過していた。

 ある時、「光をもたらす者」が自分より高位の玉座を欲して侵奪しようとした。争いに敗北した彼はその罪を問われ天界から堕ちた後、      冥界の最下層、その中心部まで落とされ腰まで凍りづけにされた。    彼は天界への復讐の機会を伺っていたが、身動きが取れずにいたため思案を巡らせる。

 やがて自らの血肉を使い、分身であり血縁たる存在の魂を不完全ながらも生み出すことに成功した彼は、復讐の足がかりとするべく地上へ進出することを計画し、生み出した魂を身動きの取れない自分に代わり地上へと送った。冥界から送られた魂は、無垢なる人間の胎児を依代とするよう定められていた。神々を欺きつつ、事が起こせるようになるまで人間に育てさせて成長を待ち、いずれは地上と冥界双方に通じる巨大な穴を空ける。その手伝いをさせようとしたのである。

  16年後。神聖歴1307年。冥界から空けられるようになった小規模かつ不安定な穴から這い出てきた魔物たちの存在により、地上は混乱に陥っていた。時折空く中規模の穴からは高い知性を備え組織的な集団戦闘が可能な者たちやそれらの指揮を取る上位の悪魔までもが姿を現すようになる。

 あらゆる種族の中には、互いにいがみ合うことを止め、冥界から現れる存在に対し、結束を図ろうと呼びかける者たちも現れ始めた。しかしこのような事態に陥ってもなお、地上に割拠するあらゆる存在は、互いを認め合うことすらままならない状態であった。

 終わりのない戦いの中で、いつ何時襲ってくるかもわからない闇の勢力に人びとは恐怖し、世界は疲弊していく。

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