NiziU/Make you happy が、小説のなかで流れたら
テンポとリズムパターン、空白をいかしたアレンジ、さらにその歌声から、映画『SING/シング』を思いだす。踊りながら歌っていた母豚ロジータ。デュエットをしていた相手の声は、トレンディエンジェルの斎藤司だった(ロジータの声は坂本真綾だ)。かれらの歌と同じワクワク感。
《Nothing》と《Something》の耳なれない「th」。ネイティブの発音なのかどうか、生まれも育ちも九州の僕にはわからない。《どんなのがいい?》と舌たらずなファニーボイスは、またべつのメンバーの声だろう。
ビートが消えたBメロで、シンセサイザーが4分音符のコードをきざむ。《幸せ?》の尻尾が切りあげられて、「s」の子音がのこる。リズムはシンセの縦のラインに、薄くかさなっていく。
《Ooh I just wanna》につづき、タイトルを歌うサビがはじまる。すかさず《ooh happy, happy》(ウーハピハピ)と入るコーラスが、父の聴いていた昔の音楽のテイストに聴こえる。
それでいながら、全体としてはちゃんと2020年のアイドルソング。《What do you want?》「Want!」、《What do you need?》「Need!」のかけ声が気持ちいい。長年培われてきたアイドル・カルチャーの結晶だ。
2番はゆったりとしたビートから。イントロにも顔をだしていたオモチャ箱のような効果音が、さらに散りばめられる。
シンプルにくり返されるサビは、《Anything》《Everything》と、何度めかの「th」から間奏へ。シンセベースをのこし、ドラムマシンは小節のつなぎを担当する。そのうえに乗る英語のラップがさっぱり聴きとれない――かろうじて「グッバイ」がわかった、直後、《キミがくれる安心》と、ハキハキした日本語で飛びこんでくるマシンガンラップ。
MCが入れかわっても、滑舌のよい早口がつづく。《メロディー》と《セオリー》で韻をふむと、聴きとりやすい《You're my favorite song!》の決めフレーズでラストのサビへ。曲(song)が擬人化されている――?
これまでと同じサビかと思いきや、さっきまで裏声だった《笑顔》のトーンがつよい地声に。そして《What do you want?》で一瞬みせる高音へのフェイク。
アウトロなしにさっぱりとむかえた曲終わり、ささやく男性の声が「ジャワティ」と聴こえたのは僕だけだろうか。
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